研究内容

2025年8月1日

  • 原形質連絡

原形質連絡の形成制御

二次原形質連絡はいかにしてできるか

 ネナシカズラは寄生相手である「宿主植物」に寄生する時、細胞レベルでのつながりを作ります。宿主植物から栄養や水を得るために、それらのパイプラインである師管や道管、さらには隣り合った細胞と細胞の間で、細胞同士が物理的につながりあった状態を作ります。

 この時に、まず細胞と細胞をへだてる細胞壁を貫通したトンネル状構造がつくられます。これが原形質連絡と呼ばれるものです。原形質連絡は一つの植物個体の中でもあらゆる細胞と細胞の間に存在するものです。普通は細胞分裂が起こる時に、細胞板に小胞体が貫入することによって作られ、この細胞分裂時にできるものを一次原形質連絡と呼びます。これに対し、細胞分裂と無関係に隣り合った細胞同士をつなぐようにできる原形質連絡もあり、こちらを二次原形質連絡と呼んでいます。

 寄生植物と宿主植物との間にできる原形質連絡は、この定義から必然的に二次原形質連絡です。では、この異種植物の細胞同士が隣接した時に、二次原形質連絡はどうやって形成されるのでしょうか?

私達は、原形質連絡を構成しているタンパク質群の遺伝子が転写レベルで発現の促進を受けているのではないかと考えました。そこで、東北大の加賀らによって寄生進行中の吸器部分だけをレーザーマイクロダイセクション法で単離したものからRNA-seq解析を行なったデータ(Kaga et al., 2020, Front. Plant Sci., 11:193) を再解析し、ネナシカズラ側の原形質連絡構成タンパク質遺伝子の多くのものが寄生と共に発現が上昇することを見出しました。そこで、これらの中から代表的な構成タンパク質遺伝子を選び、それらのプロモーター領域に結合する転写制御因子を探索しました。

PD genes upregulated

 ネナシカズラ寄生進行に伴い原形質連絡構成タンパク質遺伝子群の多くが発現が増加している。

 現在、ネナシカズラ (Cuscuta campestris, Cc)のPLASMODESMATA GERMIN-LIKE PROTEIN 2 (PDGLP2)PLASMODEMATA LOCALIZED PROTEIN 3 PDLP3)のプロモーターに結合する転写調節因子遺伝子の候補化がおわり、機能解析を進めております。興味深いことに、宿主植物側からCcPDGLP2結合性を示すncRNAも候補化されてきており、知られざる宿主-寄生相互作用の一環ではないかと考えています。

 これらの候補転写制御因子の発現調節を更に解析し、寄生境界面に二次原形質連絡の形成を誘起する要因の本質に迫っていきたいと思います。

PD形成要因は何か?

寄生境界面における二次原形質連絡の誘導要因は何か?