本ゲームの設定について
できるだけ現場の治療に近づけるために、スペクトルや副作用などを考慮した設定にしました。ただし、ゲームとしての限界や技術的な限界から、厳密に現場の治療に合わせることは困難です。広くご意見をいただいて、可能な限り改善する予定ではありますが、「学び」という観点から支障なければ、修正しない場合もございます。あらかじめご容赦ください。
今回のゲーム化に際して、現場の治療に合わせるためにこだわった部分がありますので、重要な点を説明しておきます。限界についても説明(言い訳)をしておきます。
- 菌血症という設定のため、原因菌として頻度の高い大腸菌と黄色ブドウ球菌を選びました。ESBLやMRSAの出現頻度も、実際の分離頻度を参考に設定しています。
- 経験的治療、標的治療、デエスカレーションが体験できるように、初期治療時にはグラム染色のみ分かっている設定にしました。
- 特定抗菌薬は、脚注に明示しています。また、使用回数も途中でもわかるように表示し、最後には、治療経過を振り返ることを目的として、サマリーを設けました。治療の成否は、ゲーム性を持たせるため、運・不運も影響しますが、抗菌薬の使用量を意識してもらうことが抗菌薬適正使用につながると考えていますので、治療の成否だけではなく、サマリーを最後にしっかりと確認してもらえればと思います。
- バンコマイシンとアルベカシンでは腎毒性が、リネゾリドでは血小板減少が起こるように設定しました。ただし、学びという観点から、実際の治療に比べて、腎毒性や血小板減少が起こりやすい設定となっている可能性があります。
- 広域抗菌薬では、カンジダ血症やCDIのリスクが高くなるように設定しました。狭域も使いすぎればカンジダ血症やCDIのリスクが上がりますが、TAZ/PIPCやMEPMなどは、狭域抗菌薬よりも数倍以上リスクが高くなるよう設定しました。ただし、実際のリスク上昇を厳密に再現したものにはなっていません。尚、学びの観点から、かなり早期からリスクが上がる設定になっています。
- 使用している抗菌薬の性質を理解するため、広域抗菌薬を使った場合や、カンジダ血症、CDI、腎毒性、血小板減少などのリスクが上がった場合に、それぞれに対応したアラートが表示されます。
- リネゾリドは静菌的な作用であるため、白血球減少時にはバンコマイシンやアルベカシンに比べて、効果が弱くなるように設定しました。
- qSOFAが計算できるよう、必要な項目を表示するようにしました。初期に表示されるパラメーターは以下の通りです。
- 重症度:ゲーム内独自のスコアです
- 腎機能:GFRで示しています。
- 白血球数、血小板数
- 身体所見:体温、血圧、脈拍、呼吸数、意識レベル(GCS)
- qSOFA:血圧、呼吸数、意識レベルから自動的に計算しています。
- 重症度:ゲーム内独自のスコアです。
- 治療の成功・失敗を重症度の改善や悪化という観点で設定したため、重症度は独自のスコアになっており、症状などを総合的に評価した実際の重症度とはやや解離があります。また、黄色ブドウ球菌の菌血症では、初期治療でCEZとVCMをしばしば併用しますが、ゲームでは併用ができない設定になっています。他の抗MRSA薬であるダプトマイシンやテジゾリドは、ゲームにすると使い勝手が良すぎて多用されると考えたため、採用しませんでした。
開始時の条件は、ランダムに設定されるため、重症度が高く、腎機能が悪く、血小板も低いという場合には、どの方法であっても不成功になることがあります。
お願い
ゲームの冒頭にもあるように、本ゲームは無料で使用いただけます。教室のホームページ上に掲載しているため、ホームページ更新時にURLが変更になる場合があります。必要なファイルをダウンロードして、自身のPCで活用することも可能です。一方で、セキュリティや内容の完全性などについての補償はありません。ご自身の責任でお使いいただくことになります。ぜひ、自己研鑽だけではなく、研修などにご利用いただければと思いますが、ご利用いただいた場合には、できれば情報を共有していただければと幸いです。特に、研究目的でご利用いただく場合には、お声がけください。今後の改善のモチベーションにもつながります。よろしくお願い申し上げます。
今後の改善の方向性について
まだ、明確な方向性は定めていませんが、肺炎球菌やクレブシエラなどを追加したり、グラム染色所見を言葉ではなく写真で示したり、感受性を感受性パターンで示すなど、アドバンスな内容も含められるようにしたいと考えています。また、現在は、1症例が終了した時点でデータが消えてしまうため、症例を蓄積できるような改善を検討しています。ビジュアル的にも、文字だらけではなく、経過がわかりやすいように表現できたらと妄想しています。
最後までお付き合いいただきありがとうございました。