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2025年7月22日

  • 学生

森之宮で描く「Well-being」!

リハビリテーション学科の学び、地域と共創するWell-being共創センターとは。

羽曳野キャンパスから森之宮キャンパスへ移転する医学部リハビリテーション学科。変化の先にある未来を探るため、MORINOMIYA Journal 学生編集室が医学部リハビリテーション学科長・リハビリテーション学研究科長の横井 賀津志教授にお話を伺いました!

※本取材は2025年5月に行いました。

横井 賀津志教授

横井 賀津志教授

Q1 リハビリテーション学科とは

MORINOMIYA Jornal 学生編集室(以下、学生編集室):

まず、リハビリテーション学科とはどのようなことが学べる学科なのでしょうか。

横井 賀津志教授(以下、横井教授) 

リハビリテーションには主に3つの専門的な領域があります。一つ目は理学療法。これは、人間が動くための“土台”となる身体の基本的な機能を回復させることを目的としています。例えば、歩く、立つといった基本的な動作の回復を支援します。

二つ目が作業療法。日常生活に必要な応用動作、つまり「生活する」ための訓練を行います。たとえば、食事をする、字を書く、家事をするなどの活動動作ですね。

三つ目は、言語聴覚療法です。「話す、聞く、食べる」を支援する領域ですが、本学では現在この分野の専門課程は設けていません。

学生編集室:

なるほど、それぞれの役割がはっきり分かれているのですね。

横井教授:

ええ。人間はサルやチンパンジーから進化する中で、効率の良い二足歩行を獲得しました。両手が自由になり、道具を使って遠くまで移動できるようになったのです。この「移動する」という動作の回復が理学療法の大きな役割のひとつです。

そしてもう一つ、進化の中で得た大きな能力が道具を使うことです。これが作業療法の中核になります。

つまり、理学療法は“動くための基礎をつくる作る”こと、作業療法は“その上で生活するための応用動作を取り戻す”ことと言えます。

この二つが両輪となって、人の生活を支えているのです。近年は予防領域にも力を入れており、リハビリテーション学科・リハビリテーション学研究科では、健康維持・増進、疾病や障がいの予防から治療、回復、社会復帰・参加に至る新しいリハビリテーション学の確立を目的としています。

学生編集室:

進化の視点から見るととても分かりやすいですね。では、リハビリテーション学科の学生さんはどのようなことを学んでいるのでしょうか。

横井教授:

本学では、1年生のうちから解剖学などの専門的な知識を学び、さらに実習にも取り組みます。実際の臨床現場に出ることで、知識と実践の両方を積み重ねていきます。

多くの学生は、病院や介護施設などの医療・福祉の臨床に就職します。そして、最終学年である4年生の2月には国家試験を受験します。この試験に合格することで、理学療法士・作業療法士としての資格を取得できます。

Q2 「Well-being共創研究センター」の設立の経緯と展望について

学生編集室:

UR森之宮ビル2階に「Well-being共創研究センター」を開設されたとお聞きしましたが、どのように設立に至ったのか、また今後の目指す姿について教えてください。

横井教授:

森之宮キャンパスやUR森之宮ビルに移転する前から、URの団地や城東区の地域に住む高齢者の方々を対象に、健康に関する講座やスマホ教室を開いてきました。これらは教職員や学生が地域の集会所などで行っていた活動です。私自身も、実はスマートフォンをあまり使わず、1週間に1回くらいしか充電しないような生活なのですが、市民の皆さんの生活に寄り添った支援をしてきました。

さらに、ここ数年は「心と体と脳の健康チェック」を年に2回程度実施しています。特にコロナ禍以降は外出の機会が減り、身体機能の低下や体の痛みも問題になっているため、外出を促す体力づくりにも力を入れています。最近では、住民主体の健康づくりにも取り組みを始めました。

こうした地域での地道な取り組みを土台として、「Well-being共創研究センター」を立ち上げました。子どもから高齢者まで、すべてのライフステージの人が心も体も脳も健やかでいられる仕組みづくりを目指しています。私たちが大切にしているのは、“住民が主語となるまちづくり”です。

医療やリハビリの専門職が支えるだけでなく、地域の皆さん自身が主役となって、健康で自分らしく暮らせるまちを一緒に創っていきたいと考えています。

学生編集室:

子どもたちに向けた取り組みもあるのでしょうか?

横井教授:

そうですね。たとえば、発達障害の子どもたちが、それぞれの個性を活かしながら学べる環境づくりに取り組んでいます。これまでに教員向けの研修会を2回実施し、教育現場での支援体制の整備にも力を入れています。

学生編集室:

“Well-being”という言葉には幅広い意味があると思いますが、先生はどのように捉えていますか?

横井教授:

Well-beingは「個人が主観的に良い状態であること」です。単に病気がないというだけでなく、その人が「この地域で暮らせて幸せだ」「満足している」と思えること。しかもこれは、賃金、労働環境、教育の受けやすさ、移動のしやすさなど、社会的な側面も含まれます。すなわち、個人にも社会にも関連しています。

現在、日本は平均寿命こそ長いですが、健康寿命との差が大きいのが課題です。高齢の方にとっては、この差を埋めることがこそ、Well-beingを実現する第一歩鍵になると考えています。

学生編集室:

この取り組みは、今後どのように広がっていくのでしょうか?

横井教授:

将来的には、ここ森之宮から始まった個人のWell-beingの取り組みを、大阪市や大阪府、さらには海外へと発信していきたいと考えています。

学生編集室:

今後、学生もこのセンターの活動に参加する予定はありますか?

横井教授:

学生の参加も積極的に取り入れていきたいと考えています。

身体的な支援だけでなく、リハビリテーション学には“心”へのアプローチも含まれています。精神疾患を抱える方が社会復帰できるよう支援し、行動変容を促すような「心のリハビリテーション」にも、より一層取り組んでいきたいです。

学生編集室:

リハビリテーションというと身体的なイメージが強かったのですが、もっと広い意味があるのですね。

横井教授:

そうですね。「社会的リハビリテーション」という言葉もあるように、身体だけでなく、社会とのつながりや心の回復も重要な領域です。教育や福祉分野とも連携しながら、包括的な支援を目指しています。

学生編集室メンバー

学生編集室メンバー

 Q3 森之宮キャンパス移転に向けた準備と今後の構想について

学生編集室:

森之宮キャンパスへの移転について、すでに準備は始まっているのでしょうか?

横井教授:

はい、移転に向けては事務職員の方々が本当に頑張って調整してくれています。

私たち教員も、研究室の資料など少しずつ整理を進めているところですが、今のところは大変さよりも新キャンパスへの期待の方が大きいですね。

学生編集室:

施設面では、何か新しい取り組みなどありますか?

横井教授:

各研究室や実験室にも新しい設備が整う予定で、先生方もいろいろと準備されています。森之宮キャンパスは「地域に開かれたキャンパス」と位置づけられていて、私個人としては学生だけでなく地域の子どもから高齢者までが参加できる健康講座を定期的に開催したいと考えています。

たとえば、アルツハイマー病の予防をテーマにした脳の健康プロジェクトなど。

今は私たちが地域に出向いて教室を開いていますが、将来的にはキャンパス内で、2週に1回、半年単位のプログラムとして講座を開けたらと夢見ています。そして、ぜひ学生と一緒に運営していきたいです。

学生編集室:

地域の方に講義に参加してもらうことも考えられているのですね。

横井教授:

はい。大学で「高齢者とは」というような講義をする際に、地域の方にも登壇してもらうと、学びにリアリティが出ると思います。

学生編集室:

ちなみに、リハビリテーション学科の教室はどこに配置されるのでしょうか?

横井教授:

8階と9階の半分に割り当てられています。上下の移動は少し大変かもしれませんが、エスカレーターやエレベーターもあるのでそこまで心配はしていません。

Q4 森之宮キャンパスで楽しみな施設や設備について

横井教授:

私は「ハード(設備)」も重要ですが、「ソフト(人やつながり)」の方に期待しています。いろんな人が集まって交流できる、開かれたキャンパスになるというのが、一番楽しみにしている点です。

また、ライブラリーは本当にきれいで、登録すれば地域の方も利用できるようになっています。さらに12階からはガラス張りの窓越しに大阪城が見えました。とても眺めが良くて、まるでちょっとした観光地のようです。

学生編集室:

それはぜひ一度行ってみたいですね!

横井教授:

あと、学食も楽しみにしているという声をよく聞きます。

学生編集室:

どんなメニューが並ぶのか、とても気になります。中百舌鳥キャンパスの学食もいつも混んでいますし、森之宮も人気になりそうですね。

Q5 森之宮キャンパスで学生が期待できることは?

横井教授:

リハビリテーション学科は羽曳野にキャンパスがあり、これまではキャンパス内で他学部の学生と交流する機会が少なく、学部、学域を越えた学生同士の関わりはサークル活動など限られた場でしかありませんでした。

森之宮キャンパスへ移転することにより、これからは日常的に他学部の学生と交流できるようになります。異なる分野に興味、関心のある学生とともに勉強することで、多様な価値観に触れることができます。それは、将来、働く上でもきっと大きな財産になると思うのでとても期待しています。

学生編集室:

確かに、学部を越えた関わりができるのは貴重な機会ですね。森之宮キャンパスの様子も、ぜひ開設後に見に行きたいです。

横井教授:

そうですね。さらに、森之宮キャンパスでは海外との交流にも取り組む予定です。

リハビリテーション学科は国家資格の取得が関わってくるため長期留学は難しいのですが、台湾や韓国などアジアの国からの短期留学生の受け入れを、昨年から少しずつ始めています。3日〜5日間といった短い滞在ですが、韓国語が話せる学生も多くて、楽しそうにコミュニケーションをとっていました。

学生編集室:

それは素敵ですね!国際交流の輪が広がっていきそうです。

横井教授:

はい、将来的には交換留学のような形も視野に入れたいですね。

そして、新キャンパスの立地を活かして、地域の方々とももっと関わっていきたいと思っています。たとえば、学生自身が考えた健康づくりのプログラムを、森之宮キャンパス周辺にお住まいの方々に実際に試していただくといった取り組みもできると思います。

学生編集室:

学生、教職員のさまざまな取り組みにより、大学と地域のつながりを深めながら、実践的な学びができるキャンパスにしていきたいですね。

記念撮影

〈2025年5月 インタビュアー:ゆい、miz、nikki〉