研究紹介_03

OUR RESEARCH
ペプチド化学を基盤とした
細胞内薬物導入法と
疾患関連分子の認識技術
創薬生命化学研究室 中瀬 生彦 教授

がんを含む疾患にアプローチするタンパク質や核酸等の機能性分子が日々開発されています。しかし、それらの機能性分子は細胞内移行性が乏しい場合が多く、またエンドサイトーシスで取り込まれても細胞膜透過性が低いためにサイトゾルへ届かず、目的の活性が出ないことから薬にならないという問題が世界中に山積しています。私たちは、細胞内移行性の乏しい分子を高効率に細胞膜を通過させ、サイトゾルに確実に送り込むための膜透過性ペプチド(cell-penetrating peptides)の開発研究を行なっています。応用例として、頭頸部がん等への高い治療効果から、世界的に治療技術が注目されているホウ素中性子捕捉療法(BNCT)において、細胞内への移行性が低い治療用ホウ素化合物に、ミトコンドリアへの集積性が高い膜透過性ペプチドを薬物運搬体として利用することで、基礎研究での結果ですが、がんに対する高い殺細胞活性が認められる結果が得られています。

また個別化医療を指向した、細胞分泌小胞エクソソームを基盤とした薬物送達技術の構築研究も行っており、エクソソーム膜上に、化学的に膜透過性ペプチド等の機能性ペプチドを“カセット式”に混合するだけで結合させ、エクソソームの細胞内移行や、移行後にエクソソームの内包分子をサイトゾルに放出促進可能な先駆的な技術構築を進めています。私達の研究チームは、特に薬物送達における“マクロピノサイトーシス”経路誘導を重要とし、エクソソームも含め、機能性ペプチドを用いた生理活性分子の本経路を用いた細胞内導入法において世界をリードする技術開発を展開しています。さらに、疾患関連分子に選択的に結合できる機能性ペプチドの研究も展開し、独自性の高いスクリーニング技術で、目的分子に高効率で認識・制御可能なペプチド開発を進めています。従来法では困難な細胞内の疾患関連分子にアプローチできるペプチド技術を構築し、将来のバイオ医薬品候補となる創薬基盤研究を行なっています。