先生と本棚

2026年1月23日

リファレンスの積み重ねと建築デザイン|小林祐貴(講師/建築情報学研究室)

この連載では、建築学科の先生方におすすめの本をインタビューしていきます。
第2回は、建築情報学研究室の小林祐貴先生です。小林先生には、学生時代に購入し、建築を根本的に考える基礎となった恩師の著書を紹介していただきました。

DSCF3857

                                                 高松 伸『建築設計のための教科書』(京都大学学術出版会)

――今回選んだ本の概要を教えてください。

この本は、2回生くらいのときに購入しました。著者の高松伸先生は、私が学生の頃に設計演習を取りまとめていた先生です。この本では、世界中のさまざまな名建築が、高松先生独自の目線で分類・紹介されています。建築を見る機会があるごとに、高松先生はこの建築をどのように捉えたのだろうと、この本を見返すことがあります。


DSC08056

                                                            研究室でのインタビューの様子 

――この本や、高松先生との思い出を教えてください。

この本でたくさんの建築を覚えたし、設計者はこのような考え方でこの建築をつくったんだ、と知ることは設計演習のときにも参考になりました。どのようなリファレンス(参照先)のもとで、ご自身の建築をつくっていったのか、高松先生の視点を垣間見ることができるような本だと思います。

       

まだ学生だった私にとって、建築家の高松先生は道の存在でした。先生の自作の解説を読んでも、当時は何も分かりませんでした。高松先生の設計意図を理解するために、実際の作品を見に行ったり、会うことができる際にはお会いしたりしてきましたが、今になってようやくあのとき先生がおっしゃっていたことが、少しは分かるようになってきたように思います。

      

また、高松先生はエスキースで、建築に関する本だけではなく、さまざまな映画や小説を紹介されていました。それらに触れたことも、建築を考えるための大きなヒントになったと想います。


IMG_7277

                                                 他にもたくさんの高松先生の本を紹介していただきました 

――本を通して学んだこと、現在の研究と関係していることを教えてください。

高松先生は、この本のように、名作建築を参照し、そこから見出したエッセンスを蓄積し、自分の作品に取り入れながら設計をされてきたと思います。 私が研究しているのは、そのような設計思考や手法を、AIでどのように再現できるのか、ということです。逆説的ですが、それは同時に、AIにも参照のないかのような建築デザインを生み出すことができるのか、という問いを考えているとも言えるかもしれません。

      

最近は特に、AIと上手く付き合っていくことが大切だと感じます。私の研究室に来た学生には、そういう人になっていってほしいと思いますね。今後、君たちが建築の世界で働いていく中では、AIを拒絶し続けることは難しいでしょう。だからこそ、AIでできることを知り、まだ人間にしかできないことは何かを考えながら、何事にも取り組んでいくことが大切だと感じます。

0616_2

小林祐貴 こばやし・ゆうき

1987年愛知県生まれ。京都大学において高松伸教授のもと、建築デザインを学ぶ。同大学大学院において加藤直樹教授のもと、理論計算機科学を学ぶ。国際会議CAADRIAにおいてYoung CAADRIA Award 2014を受賞。2015年より、東京工業大学にて藤井晴行教授のもとで、助教を務め、現職。
ホームページ : https://www.omu.ac.jp/eng/arch/graphics/index.html

建築デザインに”AI"の可能性を探る研究

小林先生は、AIなどの情報技術を建築デザインにどのように生かせるか、ということに注目して、研究を行っています。20247月には、小林先生が主査を務めたデザイン科学小委員会においてシンポジウム「情報と建築のあいだ」を開催しました。また、研究室では、情報技術を用いた建築デザインや都市分析などについて研究しています。

2025年03月26日 C428教室にて
取材/伊藤舞織(学部3年)、吉原涼花(学部3年)
まとめ/吉原涼花、三昌珠海(学部3年)
写真/伊藤舞織、吉原涼花、井上卓哉(修士1年)