就職・進学のリアル

2023年4月25日

どうして大阪公立大学院に? 他大出身の修士生座談会【後編】

ここにきて良かった! 公大での充実した研究の日々

他大学の建築学科出身の私たち目線で、大阪公立大学大学院(以下、公大院)の建築学分野【注1】を語り尽くすこの座談会(前編はこちら)。

後編では、具体的な学生生活について紹介します。

授業を受け、研究室のプロジェクトに参加し、研究に没頭していると、あっという間に時間は過ぎてしまいます。

修士課程の「2年」という限られた時間をどう密なものにしていくのか、その方法は人それぞれ。

ここにいるメンバーも、日々楽しみ、模索しながら院生生活を送っています。

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座談会中も、どんどん話が逸れて、関係ないことで盛り上がってしまうメンバー。

“学部生も修士生も、みんなで関わる” 研究室のプロジェクト紹介



菅原 この辺で、研究室の活動紹介もしましょう。

 

川上 私が所属する建築計画・構法研究室(以下、建計)では、大阪府守口市で「ato/tugi」というプロジェクトをしています。このプロジェクトは、モノに対する問題意識から始まっています。生産、消費、廃棄のサイクルが当たり前の今、そうじゃなくて、長く使えるモノだったり、リメイクして生まれ変わることでもう一度使えるようになるモノだったり、改めてモノについて考えてみようって。その中で、「小学校」という独特な空間で使われていた備品を、廃校になって処分してしまうのではなく、ストーリーを共有しながら新たな空間でも使ってもらえるようにリメイクしよう、という考えに至りました。

 

菅原 僕も遊びに行った! 普通に家でも使えるようにリメイクされていて面白かった。

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建計で取り組んだプロジェクト「ato/tugi」。「日々の活動」(2022年10月16日の記事)でも詳しく紹介しています。



菅原 建築デザイン研究室(以下、デ研)では、建築学科がある杉本キャンパス工学部棟の4階と5階に建築学科ギャラリーを設計施工し、ポスターやプレゼンシートを掲示できる什器を設置しました。これまでは、制作したポスターや模型を展示する場所がなかったから、「これはいかんぞ」ということで、現在のM2の学生と、デ研の山口陽登先生で始めたプロジェクトです。ただ機能的なだけじゃなく、もちろんデザイン研らしくディテールにもこだわりを持ってます。例えば、接合部の金物は見えないよう工夫してる。どうやって部材が接合されてるのか、ぜひ現物を見てもらいたい!

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デ研がデザインした、建築学科があるフロアのエレベーターホールのギャラリー空間。



伊賀 ついでにゼミの話をすると、特殊かもしれへんけど、学部(近畿大学)のときは、先生に卒業設計のエスキスをしてもらう4回生だけのゼミはあったけど、研究室の学部生と院生が一緒に参加するゼミはなかったんよね。だから、論文の講評やプロジェクトを、学年を超えて一緒にやるのは新鮮に感じた。

 

菅原 僕もそう。構造をやってた学部時代は論文一本やったから、ゼミすらもなくて、先生と2人でずっと研究の相談や実験の打ち合わせをやってた。それもすごく貴重な機会だけど、研究室の学生が集まって、お互いの発表を聞いたりアドバイスをしたりし合えるのも、すごくいいなって思う。

 

伊賀 これって自分の研究時間を割いてもいるわけだから、ちょっと面倒に感じたりもするやん? けど、めっちゃタメになるって思うわけ(笑)。そろそろ修士論文の構成を考えないといけないけど、勘がちゃんと鍛えられてるはずなんよ。直接自分がされた指導だけじゃなくて、他の人が受けてた指導を聞いて学習した経験もけっこう大事やなって思う。



“グループワークが多かった” 公大院の特徴的な授業スタイル



藤本 授業は大きく分けると「特論」と「演習」があって、特論は座学、演習は手を動かすグループワークみたいな感じ。でも特論も、前半は基礎知識の授業だけど、後半で課題に取り組む段階になるとグループワークに変わってる。前編でも話があったように、ほんとにグループワークが多いです(笑)。合同授業では、都市学分野のみんなとも仲良くなれるし、一人ではなかなかできない規模や内容の課題に取り組める。

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〈建築設計特別演習1〉で取り組んだ、都市スケールの設計作品。



川上 でもデ研の人からすると、課題のスケールが大きくて、個々の建築の平面や内部の空間、ファサードや具体的なディテールの設計が少ないから、物足りなく感じなかった?

 

伊賀 あー、なるなる(笑)。

 

菅原 たしかにM1の演習って、都市的な大きなスケールの設計がほとんどで、学部時代にやってきたような「ザ・ 建築設計」みたいな演習がないよな。

 

藤本 でも都市系の授業を受けられるのは、けっこう楽しい!

 

伊賀 いや、まじそうやで! それはいいところやと思う。

 

藤本 ちょっと話が戻るんですけど、私が公大院を選んだ一番大きな理由は、都市系の授業も受けたかったからなんです。

受験前の倉方俊輔先生とのオンライン面談でも、「都市系にも興味があって進路に迷っている」とお話ししたら、倉方先生が実行委員を務めている「生きた建築ミュージアムフェスティバル」(イケフェス)の紹介をしてくださいました。先生自身が、建築を通じて大阪のまちの魅力を発信するイベントに携わっていることや、他にも都市系の学生が建築意匠の授業を受けることもよくあるって教えてもらって、そういうところがすごくいいなって、受験前からワクワクしてました。

 

菅原 授業も、計画系、環境系、構造系の講義科目のうち、2つ以上からそれぞれ1科目以上を履修するって決まりやから、自動的に他の分野に触れられるよね。

 

川上 私は構造系の授業を受けました! 学部以来、もう勉強することはないだろうなって思ってたけど、授業の一環で現場見学にも行けて、すごく楽しかった。

 

藤本 都市系の授業でも〈生態環境都市論〉っていう珍しい内容も。まちでは、人工物と地形に沿った原生の生態系や、緑化の半人工的な生態系の関係やバランスがすごく大切ってことは想像しやすいけど、植物工場での取り組みを聞いたり、実際に虫を捕まえに行くフィールドワークに行ったり、農学部で習うようなお話まで聴くことができました。

 

菅原 「ザ・建築」っていう研究もあるし、都市計画もあるし。あと小林祐貴先生の建築情報学研究室では、情報技術を設計や空間に活かす方法を研究されていて、研究室には最先端のレーザーカッターや3Dプリンターが備わっていたり。そういうのに触れられる機会もある。

 

藤本 学生数からすると研究規模が小さい感じがするかもしれないけど、めっちゃいろんな分野の先生がいますよね。



密な時間、密なひと 私たちから見た公大院の良さ



菅原 そろそろまとめに向かいましょう。いろんな話をしてきたけど、この記事を読んで公大建築に行ってみたいと思ってくれた方に向けてメッセージを。 

まずは僕から。今ここにいるメンバーは建築計画と建築デザイン分野だけやから、設計とかの話をよくしたかもしれないけど、建築ってそれだけじゃない。一級建築士の試験はもちろん、仕事をする上でも、構造も施工も環境も計画も法規も、いろんな分野を知っていないといけない。僕は学部時代が構造の研究だったから、特にそう思う(笑)。公大院の建築学分野には幅広い研究や授業があって、いい環境だと思います。

 

川上 研究室っていう枠にもとらわれへんし、ほんとにオープンな環境です。だから自分のやりたいことができるし、入ってからやりたいことを見つけることもできるのかな。今、研究で和歌山県の南の地域へ調査に通っていますが、現地の方々に「もう地域に溶け込んでるやん」って言ってもらえて(笑)。大学院でこんな研究をすると思ってなかったけど、日々発見と学びの連続でほんとに楽しい。いい意味で「思っていたのと違った」ってなっても楽しめると思います。

そして最後に、とにかくすべての距離が近くてあったかいです(笑)。

 

藤本 あったかいですね、うん。いいところです(笑)。

菅原さんも言ってたけど、建築っていろんな分野に関われる学問かなって、最近特に思います。例えば図書館の設計なら、人の動線や書棚の配置計画、そもそもの図書館建築の歴史や、周囲のまちや環境、最近のデザインやコンセプトのトレンドなどを総合的に勉強しながら考えていく。公大院には多分野にわたって先生がいて、授業も幅広く受けられるので、いろんなことに興味がある人には、めっちゃおすすめです! 

建築や都市のすべてに興味があった私は、公大院に来たことで、特に建築と都市の自然との関係とか、人間との関係に興味が強いってわかってきて。それを生かす修士論文に取り組めそうやったり、就活もその軸で進めることができたりしていて、好奇心旺盛なのを削がずに進んでいけている気がしてます!

 

菅原 めっちゃいいこと言うね。じゃあ最後に、トリを(笑)。

 

伊賀 だいぶ言われてもうてるけどな(笑)。

まず、建築に行くかどうか悩んでる子に対して。学部においては特に思うけど、設計課題に取り組んだりレポートを書いたりするときに、建築を調べる。その目をもって、もう一度まちを歩くと、すごい楽しめるんよな。テーマパークに行くよりも、長屋の裏とかを歩いてるほうが僕は楽しい(笑)。身近なまちや暮らしている場所を、知識を持って楽しめるって、僕は建築学科に入って一番よかったって思うのが、そこやな。

 

菅原 なんか、どこ歩いてても建築的に見ることができるからね。

 

藤本 旅行に行くのも楽しい!

 

伊賀 それで、公大院に来てよかったなと思うのは、やっぱり大阪について詳しくなったこと。大阪という都市に住んで、大阪のまちや建築をフィールドに活躍されてるプロフェッショナルの先生たちに教えを受けられた経験は、貴重やった。

大阪が好きな人はぜひ! 「大阪で建築やまちづくりに携わって生きていく」ってときに、大阪のここ、公立大で学ぶのは、なんかしっくりくるっていうか。

 

菅原 うん、しっくりくるよな。

 

伊賀 大礼讃会になったな(笑)。うーん、ただ校舎は古いけど(笑)!

 

菅原 いいことだけ、いい話にしようと思ったけど(笑)。

 

藤本 最後に古いって(笑)。歴史もいっぱい詰まってます!

 

菅原 そうやね(笑)。じゃあこの辺で……

 

一同 ありがとうございました!

 

 

――最後はやはり「公大院に進学してよかった」の一言に尽きました。あったかく、建築やまちが好きな人たちが、ここには集まっています。もちろん、たくさんの知識と歴史も詰まっています。きっと、自分の好きなこと、やりたいことを見つけられるのでは。

 

この記事が、一人でも多くの方々の目に留まり、大阪公立大学に進学したいと思っていただけると幸いです。公立大でお待ちしています!

 

 

前編はこちら。

 

 

【注1】学部(大学)は「工学部建築学科」、修士・博士(大学院)は「工学研究科都市系専攻建築学分野」という名称になります。




2022年10月27日 大阪公立大学建築計画・構法研究室にて
座談/菅原淳史、伊賀正隼、藤本美月樹、川上未帆
まとめ/川上未帆
座談会風景撮影/西谷聡汰(建築計画・構法研究室修士1年)

編集協力/贄川 雪(外部)