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2026年2月18日
【テーマ】「日本人ファースト」の時代にレイシャルハラスメントを考える講 師 : 明戸 隆浩 先生(経済学研究科准教授)司 会 : 市村 陽亮(経営学研究科准教授)日 時 : 2025年12月5日(金)10:45~12:15会 場 : Zoomウェビナー(オンライン講演)報告者 : 勝間 亮(情報学研究科講師)
明戸氏はナショナリズム研究を出発点とし、多文化社会におけるマジョリティ-マイノリティ関係、特に「マイノリティ問題に対するマジョリティの立場」の研究に従事され、近年は日本のヘイトスピーチやレイシズム問題に関するテーマに取り組み、関連書籍が多く出版されている。 本講演は、レイシャルハラスメントをメインテーマに据えて話が進められた。前半ではハラスメントの歴史や概念、後半ではレイシズムおよびレイシャルハラスメントについて、事例も交えつつ説明が行われた。 まず、今年度夏の選挙において広く認知されたスローガン「日本人ファースト」を取り上げたのち、国籍についてのハラスメントに関するニュース記事を参照しつつ、直近の事例とともに、言葉に刺激された人達によるハラスメントが起きうる状況についての紹介がなされた。 続いて、ハラスメントの歴史と概念の説明が行われた。近年になって一般にも広く知られるようになったセクシュアル・ハラスメントやパワーハラスメントに関する歴史が紹介された。他にもマタニティ・ハラスメント、ケア・ハラスメント、アカデミックハラスメント、モラルハラスメントなどがあり、ハラスメントが氾濫してきている現状をもとに、身体的ハラスメントや精神的ハラスメントに大きく分けて全体像を掴むというのが有用であることが紹介された。身体的ハラスメントには性的な面では強制わいせつ、非性的な面では暴行があり、精神的ハラスメントには侮辱、排除、強要、プライバシー侵害などがあり、サイバーハラスメントについては、一度限りの事件ではなく、少しずつ行われたものが蓄積することで、相当程度の精神的苦痛となることが紹介された。このとき、個々の加害者にとっては加害認識がごく小さいが、被害者にとっては大きい被害になるという加害と被害の非対称性が生じている。このようにハラスメントの種類分けが増えている中、あるハラスメントに直面したときに「これは何ハラか」と考えるより、どういう権利を侵害するものかを考えることが重要であることが説明された。 また、日本、アメリカ、EUについてのハラスメントの概念が紹介された。ハラスメントの2つの概念として、差別を前提とするものと、尊厳に依拠するものがある。日本では後者が主に考えられがちであると紹介された。アメリカでのハラスメントの概念は「人種、皮膚の色、宗教、性、出身国、年齢、障害、遺伝情報に基づく望まれない行為」とされている。ただし「被害者が嫌だと言ったら何でもハラスメント」ではなく、「一般的に言って望まれないと考えられる」というニュアンスで定義される。 さらに、レイシズムについての言葉の説明がなされ、レイシャルハラスメントについての定義や事例について紹介が行われた。レイシズムとは、個人では変更困難な属性に対する不当な評価に基づく行為である。個人では変更困難な属性とは、例えば人種、民族、国籍、宗教が含まれる。ここで、褒めているケースであっても、属性のみによる評価では差別となりうると明戸氏は警鐘を鳴らす。法律で対象とされるレイシズムは、個人では変更困難な属性に基づく不利益な取り扱い(差別的取扱い)、暴行や殺人(ヘイトクライム)、侮辱や脅迫や扇動(ヘイトスピーチ)がある。ハラスメントはこれらの少し手前であり、レイシャルハラスメントは「人種や民族、国籍、宗教など個人では変更困難な属性に基づく、受け手が望まない言動」である。レイシャルハラスメントを明確に規定しているような大学は無い、もしくは非常に数少ないという状況であり、普及しているとは言えない状況である。そこで具体例として、ある会社の中で人種差別的な内容の文書が繰り返し配布されたという事例や、韓国籍の社員が直属上司に出身国に関連した一連の差別的言動を受けたという事例が紹介された。 レイシャルハラスメントについて、本講演が聴講者の考える機会になれば良いという明戸氏自身の思いを示して講演は終了となった。
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