サイト内検索
2026年6月30日
【テーマ】大学におけるヤングケアラーの実態と必要な支援―当事者の語りとイギリスの取組例から学ぶ― 講 師 : 濱島 淑恵 先生 (大阪公立大学大学院 現代システム科学研究科 教授)司 会 :中谷 英治(人権問題委員会事務局 コンプライアンス推進室) 日 時 : 2026年5月22日(金)10:45~12:15会 場 : Zoom(オンライン講演)
2026年度春の人権問題講演会は、本学大学院現代システム科学研究科教授の濱島淑恵先生を講師にお招きし、オンラインにて開催されました。濱島先生は家族介護者の生活困難と支援に関する研究の第一人者であり、2016年には日本初となる高校生を対象とした実態調査を実施されたほか、ヤングケアラー支援を行う「ふうせんの会」の立ち上げや、国のアドバイザーなど幅広く活動されています。
(講演要旨)
ヤングケアラーの定義と日本の実態
講演の前半では、ヤングケアラーの定義と日本における現状について解説が行われました。ヤングケアラーとは、本来大人が担うようなケア責任を引き受け、家事や家族の世話、感情面のサポートなどを行っている18歳未満の子どもを指します。2024年6月の法改正により、現在は若者ケアラーも支援対象に含まれています。
実態調査によると、小中高大学生の約4~6%がヤングケアラーである可能性が示されています。ケアの対象は、中高生では「きょうだい」が最も多いのに対し、大学生や若者世代では「母親」や「祖母」の割合が高くなる傾向にあります。ケアの内容は家事や見守り、話し相手といった日常的なものが多く、周囲からは単なる「お手伝い」と見過ごされがちですが、実際には本人の生活を縛り、精神力や体力を奪う重い負荷となっていることが指摘されました。
大学生が抱える困難と「当事者の語り」
続いて、大学生や若者世代特有の困難について、元大学生ケアラーである三島俊輔氏(NPO法人ふうせんの会)による体験談が紹介されました。三島氏は大学2年生の時に母親ががんを患い、自身の腰痛(ヘルニア)を抱えながらも家事や病院への付き添い、家族間の調整役を担ってきました。しかし、母親の死後に「介護ロス」から心身の不調をきたし、最終的に大学中退を余儀なくされました。三島氏は当時の心境を、周囲に負担をかけたくないという思いから自分の苦しみを「我慢」し、孤立を深めていったと振り返りました。
この語りを通じ、ケアが一段落した後の「元ケアラー」への支援や、早期にSOSを出せる環境づくりの重要性が浮き彫りとなりました。
イギリスの取組例と大学に求められる支援
講演の後半では、ヤングケアラー支援の先進国であるイギリスの事例が紹介されました。ウィンチェスター大学では、社会的不利を抱える学生を支える専門の組織があり、入学前からアウトリーチを行ったり、受験時の成績優遇措置を設けたりしています。入学後も支援チームが結成され、実習日程の調整や、緊急時のレポート提出期限の延長などの代弁(アドボカシー)、返済不要の奨学金給付といった包括的なサポート体制が整っていることが紹介されました。
濱島先生は、日本においても大学が「サボっているわけではない」という本人の状況を正しく理解し、カウンセリングや外部の専門窓口(ふうせんの会など)へ繋ぐことが不可欠であると強調されました。また、就職支援においても、本人の希望を尊重した人生設計を共に考える姿勢が求められます。
質疑応答とまとめ
質疑応答では、学生の不調に気づいた場合のアプローチについて質問があり、濱島先生は「断定せずにヒントを与え、学生向けカウンセリングルームの存在を紹介することなどにより自ら気づくきっかけを作ることが有効である」と回答されました。また、病気や障がいに対する社会全体の理解を広め、スティグマ(偏見)を解消していくことの重要性についても議論が交わされました。
最後に、家庭の事情のために若者が学びや夢を諦めることなく、自分の人生を歩める社会を実現するために、大学として何ができるかを改めて問い直す機会となり、講演は終了しました。
当サイトではサイトの利用状況を把握するためにGoogle Analyticsを利用しています。Google Analyticsは、クッキーを利用して利用者の情報を収集します。クッキーポリシーを確認