研究内容

2025年9月23日

腫瘍免疫微小環境研究グループ(下部消化管):笠島裕明・内藤 信裕・王 梓洲

1.    炎症性腸疾患および炎症性腸疾患関連大腸癌
炎症性腸疾患(Inflammatory Bowel Disease)は, 潰瘍性大腸炎とクローン病がその代表的な疾患です. 近年IBDは治療薬の発展により長期罹患患者が増加しており, その影響から慢性炎症を背景にした炎症性腸疾患関連大腸癌(Colitic cancer)が増加していますが, その発癌メカニズムについては未だ十分には解明されていません.

2.    炎症性腸疾患におけるPGD2とPPARγの役割
以前の我々の研究で, PGD2が炎症とがんを抑制する働きを持つことを特定しました. このPGD2がIBDの炎症を抑える可能性が示唆されていることから, 私たちは特にその受容体であるPPARγに注目しています. このPPARγが, IBDやColitic Cancerの発症・進行にどのように関わっているのかを解明するため, 日々研究を進めています.

3.    今後の研究課題
炎症が長期化することで発生するこのがんは, 通常の検査では診断が難しく, 発見が遅れてしまうケースが少なくありません. そのため、私たちはColitic Cancerの発がんメカニズムを徹底的に解明し, その知識を活かして, 発がんそのものを抑制する新たな治療法や, 早期発見を可能にするバイオマーカーの確立を目指しています. この研究が、IBD患者さんの未来をより明るくする一歩となることを願っています.