単胎児、多胎児における不適切な養育に関する疫学研究

単胎児、多胎児における不適切な養育に関する疫学研究:出生人口に基づいた研究

 1.Child Maltreatment among singletons and multiple births in Japan:A population-based study

         Yokoyama Y,Oda T,Nagai N,Sugimoto M,Mizukami K

         Twin research and human genetics,18(6),806-811,2015

【研究目的】

 1980年代に実施された研究報告から、双子はこれまで児童虐待のハイリスクグループに位置づけられてきた。しかしながら、双子が   ハイリスク要因であるということを裏付ける出生人口に基づいた研究は全く見られない。そこで、本研究では、出生人口に基づいたデータ分析から、単胎児と多胎児における児童虐待の発生状況を明らかにし、さらにそれらに関連する要因の分析をすることを目的とした。

【方法】

 本研究では、2007年4月から2011年3月において、A市保健所および保健福祉センターで保健師が支援した児童虐待(疑いを含む)対象児を管理する台帳および1歳6か月児健康診査のデータから個人情報をすべて除外したデータファイルを用いた。分析に用いたデータは、虐待の有無、虐待の種類、多胎児の種別、性別、出生体重、1歳6か月時点の母乳育児の状況等である。統計学的分析については、t検定、χ²検定およびロジスティック回帰分析を行った。なお、本研究は所属大学大学院倫理審査委員会の承認を得て実施した。

【結果】

 1歳6か月児健康診査を受診した児18,247名のうち、単胎児が17,755名(97.30%)、双子が486名(2.66%)、三つ子が6名(0.03%)であった。児の出生体重は、単胎児が平均3032.9±404.2g、双子が2235.6±402.8g、三つ子が1398.3±281.5gで有意(p<0.001)に双子、三つ子が低体重であった。小児科診察の結果、神経系の異常を指摘された単胎児は153名(0.9%)、双子が11名(2.3%)、三つ子が0名(0.0%)で、双子で神経系の異常を指摘された児が有意(p=0.005)に多かった。1歳6か月時点で母乳育児を実施している者は、単胎児で22.4%、双子で7.8%、三つ子で0.0%で、単胎児で有意(p<0.001)に多かった。

 これらの対象者のうち、児童虐待を受けたあるいは疑われた児は、単胎児で59名(0.33%)、双子が8名(1.65%)、三つ子が0名(0.00%)で、双子で有意(p<0.001)に多かった。虐待者は、単胎児では実母が71.2%、実父が15.3%、義理の父等が3.4%、実母と実父の両方が10.2%であり、双子では実母が75.0%、実父が25.0%であった。虐待の種別は、単胎児では心理的虐待が39.0%、身体的虐待が39.0%、ネグレクトが44.8%であり、双子では心理的虐待が12.5%、身体的虐待が100.0%であった(複数回答あり)。児童虐待の有無を従属変数とし、多胎児の種別などの関連要因を独立変数としてロジスティック回帰分析を実施した結果、児童虐待は多胎児の種別では関連は認められず、児の神経系異常、出生体重と有意な関連が認められた。

【結論】

 本研究結果から、児童虐待を受けた児は、単胎児に比べ双子で有意に多くなっていた。しかしながら、ロジスティック回帰分析を実施し、他の要因を調整した後は、児童虐待と双子自身の要因は関連が認められないことが判明した。双子では、低出生体重児や神経系の異常を指摘される児が有意に多く、これらの要因が双子において児童虐待の発生を高めていると考えられた。

 本研究は、科学研究費補助金基盤研究B(2)の助成を受けて実施した。