センター設置の経緯

センター設置の経緯注1

大久保 敦(大阪公立アドミッションセンター副センター長)

 

1.はじめに

入学者選抜に関する研究、調査、企画等の業務を行うとともに、大阪公立大学に置く各学部・学域及び大学院で実施する入学者選抜を専門的立場から支援し、本学の教育研究の充実発展に寄与することを目的として、20224月本学にアドミッションセンター(以下「センター」と表記)が設置され、まもなく1年が経過しようとしています。しかしながら、センターの設置が大阪公立大学の開学と重なり、当初計画された大学組織内での位置づけや、いわゆるヒト・モノ・カネなどの基本要件を整えることよりも設置することを優先したため、組織としての機能を持続的、効果的に発揮できない状況下での出発となりました。今後、本学の教育研究の充実発展に寄与できる組織とするために、早急に整備していくことが求められるところです。

 

一方、組織(企業)30年説という言葉があるように、「なぜこの組織を設置したのか」、「何をこの組織に求めるのか」などと問われる時がいつか来るものと予想しています。中期計画や年度計画に従って本センターが整備され、その機能を発揮していくにしても、コロナ禍やウクライナでの戦争が良い例ですが、予測できない突然の状況の変化に応じてフレキシブルに対応していくことが新しい組織だけに求められます。その際に「なぜこの組織を設置したのか」、「何をこの組織に求めるのか」という問いかけはセンターにとっても忘れてはならない作業であると考えます。しかし510年、時間の経過とともに、本センター設置の経緯を知る人も少なくなっていくと思います。そこで、以下に本センターの原点となる、設置の経緯と発足1年目の活動および体制整備状況の概要を記録として残すこととします。

 

2.センター設置の経緯

1)背景 

日本におけるアドミッションオフィスは1997年に中央教育審議会より出された「21世紀を展望した我が国の教育の在り方について(第2次答申)(中央教育審議会,1997)」の中で「初等中等教育の改善の方向を尊重した入学者選抜の改善を進めるためには、実施体制の整備が必要である2」として、アドミッションオフィスの整備が示されたことに始まります。その答申を受けて、1999年には東北大学をはじめとする3国立大学と1公立大学において,アドミッションオフィスが設置され、2022年現在、60の国立大学においてアドミッションオフィス機能を持つ組織が確認されています(2023,倉元)。

 

その後、2014年の「新しい時代にふさわしい高大接続の実現に向けた高等学校教育、大学教育、大学入学者選抜の一体的改革について(答申)(中央教育審議会,2014)」では、大学におけるアドミッションオフィスの強化や、評価の専門的人材の育成、教職員の評価力向上に対する支援を行うことが急務とされ、2016年度概算要求では予算措置がなされました。一方、大阪府立大学および大阪市立大学においては、新たな教員枠を確保することは極めて困難であり、その必要性は認識されながらも専門の入試担当者(アドミッションオフィサー)を配置したアドミッションオフィスの設置には至りませんでした。従って、両大学では全学的に入試を検証する活動は研究科所属教員などが主担当業務と兼務しながら委員会組織などの形でかろうじて継続してきたというのがこれまでの経過です。

 

2)センター設置計画

 ここでは公立大学法人大阪が設立された201941日以降に絞って記述します。大阪公立大学においてアドミッションオフィスの機能をもつ組織、つまりセンター設置の動きは2020年に公表された新大学基本構想(令和21月)に始まります。その中で「(国際)基幹教育機構には全学の高大接続改革・入試改善のためにアドミッションセンター設置を検討する」と記載されています(大阪府・大阪市・公立大学法人大阪,2020)。

 

続いて、同年9月には公立大学法人大阪第1期中期計画(20194月~20253月)2020930日変更認可(公立大学法人大阪,2020)において「アドミッションセンター機能を充実し、選抜方法の改善を図る」と位置付けられました。これを受け、同年12月には入試WGにおいてまとめられた「アドミッションセンター」の設置について(案)が新大学推進委員会にて提案されています(新大学推進委員会,2020)。同案では「国際基幹教育機構の中に入試改革(新学習指導要領含む)を踏まえた入試の企画・調査研究や、入試にかかる内部質保証の点検・改善のためには、新大学規模からもセンターの設置が必要である」として、専門性を備えた専従教職員3名を配置し、入試企画・立案、入試調査・分析、入試広報の機能を持つセンター組織が提案されました。

 

このような経過を経て、2021年に文部科学省へ提出された設置認可・届出の申請等 4.設置の趣旨等を記載した書類 18.学生の確保の見通しを記載した書類(公立大学法人大阪,2021)では「新大学においては、新たな入試実施の企画及びこれらの部局に対するサポート、入試結果分析及び分析結果の提供、アドミッション広報活動、他大学における入試戦略の分析と情報提供などを実施するための、アドミッションセンターの設置を計画している」と記されています。

 

これら構想や計画のなかで特に注目に値するのは、センターを国際基幹教育機構に位置づけて設置することです。この位置づけはアドミッションポリシーがカリキュラムポリシーやディプロマポリシーに密接に関連すること、つまり入学者の質保証が入学後の教育、とりわけ基幹教育や専門の導入教育など、初年次に行われる教育の質保証に大きく影響を与えることからも、新大学の教学マネジメント上、極めて重要なポイントとなっています。

 

3)センターの設置

 2021年度後半に入ると、公立大学法人大阪2022年度計画(公立大学法人大阪,2022)が策定され、その中で「新大学にアドミッションセンターを設置すること」が明記されました。またそれと同時並行して設置の準備が進められました。しかしながら、冒頭でも述べましたように新大学の開学時期と重なったこともあり、体制の整備よりもセンターを設置することが優先されました。つまり、センターの組織上の位置づけについては事務組織である入試課の下に暫定的に位置付け、また専従教職員の配置については、初年度は有期雇用の特任教員1名のみの予算措置とされました。従って、センター長(入試担当副学長)を始めとして、有期の特任教員1名に研究科や国際基幹教育研究院などに所属する教員4名が兼任センター所員として加わり、またセンターに関する事務は事務局学務部入試課が担当する体制でスタートしました。

 

3.センターの活動と体制整備

1)センターの活動 

以上のような経緯でセンターが先行国公立大学に遅れること22年、202241日に本学に設置され、組織の目的、事業内容、組織構成および担当事務などについては大阪公立大学アドミッションセンター規程(大阪公立大学,2022a)に、またその具体的運営については大阪公立大学アドミッションセンター運営委員会要項(大阪公立大学,2022b)に定め、活動を開始しました。なお、センターのミッションを全学の入試ガバナンスの中でみると、本学のセンターが入試推進本部の下に入試ガバナンスのPDCAサイクルの中でPCAを担う組織であることがわかります。

 

2)センターの体制整備(事務組織から教育研究組織への位置づけ変更)

 以上述べてきましたように、限られた条件の中で暫定的な措置を講じながらセンターを立ち上げたため、発足時には多くの問題を抱えていました。とりわけ組織が当初計画にある教育研究組織の国際基幹教育機構ではなく事務組織の入試課に位置づけられていること、またセンターの教員も事務組織の所属となっていることがあげられます。

 

このような状況を踏まえて、第一期中期計画および入学者選抜に関するロードマップに従って、センター立ち上げ初年度の体制整備については、センターの位置づけを入試課から当初計画の通り、国際基幹教育機構に変更することから始められました。幸い各方面のご尽力により、202341日よりセンターを国際基幹教育機構に、またそれに伴い同センターの教員は国際基幹教育研究院に位置づけられることになりました。

 

発足2年目の体制整備としては教育研究組織への位置づけ変更を受けて、専任教員人事を進めることがあげられます。本センターは現在、企画・立案部門、調査・分析部門、および広報部門の3部門体制を取っていますが、2023年度には調査・分析部門の専任教員人事を行うべく準備を進めているところです。

 

4.おわりに

 以上、センターの設置の経緯、発足1年目の活動および体制整備状況の概要を述べてきました。1999年に4大学で始まり、これまで文部科学省の施策によって国立大学を中心に設置されてきたアドミッションオフィスですが、その名称、目的、組織形態、機能、規模などは実に多様です。そしてその理由は、それぞれ母体となる大学の事情や状況に応じて設置されてきたからと考えられます。

 

一方、2000年代初頭に高卒者の半数が大学・短大へ進学する時代を迎え、選ばなければ希望者は大学等への入学が可能となり、その結果、大学が普遍化し、学生が多様化したと言われています。また少子化が進行し、かつて200万人を超えていた18歳人口が、そう遠くない将来に80万人を切ると予測されています。従って、大学教育はこれまでに経験したことない時代へ突入することとなります。そのような時代に如何にして入学者選抜の選抜性を維持し、入学者受け入れの質保証を実現していくかは本学の重要課題の一つであり、本センターも体制の整備を進め、その機能を発揮し、その課題の解決に寄与していかなければなりませんが、本センター(組織の目的、事業内容、組織構成等々)は未来永劫、決して固定的ではなく、今後の状況に応じて進化していくことが望ましいと考えます。その検討の際に本稿が参考になれば幸いです。

 

注1:本稿は「大阪公立大学アドミッションセンター年報」第12022年度, p.61p.66に掲載された「大阪公立大学アドミッションセンター設置の経緯」を一部編集して転載しています。

 

注2:同答申[1]アドミッション・オフィスの整備の中で「選抜方法の多様化や評価尺度の多元化、特に、総合的かつ多面的な評価を重視するなどの丁寧な入学者選抜を行ったり、調査書の重視など初等中等教育の改善の方向を尊重した入学者選抜の改善を進めるためには、実施体制の整備が必要である。しかしながら、こうした観点から、我が国の大学入学者選抜の在り方を見てみると、その実施体制は十分とは言えない。アメリカの一部の大学では、相当数の専門の職員からなるアドミッション・オフィスが、学生の募集から選抜までの実質的な業務を遂行している。その際、アドミッション・オフィスは、ハイスクールでの成績、SAT(論理テスト及び教科別テスト)の成績、文化・スポーツ活動やボランティア活動の実績などの入学希望者に関する多面的な情報を収集・検討し、多面的な選抜を行っている。我が国においても、こうした例を参考としつつ、我が国の大学の特性を踏まえた日本型のアドミッション・オフィスの在り方を検討し、その格段の整備を図っていくことが望まれる。その際、日本型のアドミッション・オフィスが有効に機能するため、どのような役割や権能をこれに付与するか、どのようにこれを担う人材を確保していくかといった課題について、従来の大学の組織運営の在り方などにとらわれない柔軟な発想で検討が進められることを期待したい。またアドミッション・オフィスの整備に当たっては、例えば特別の選抜方法を採るなど選抜方法の多様化や評価尺度の多元化に積極的に取り組む大学から、順次これを進めていくことが望まれる。」とある。

 

引用文献

中央教育審議会(1997),「21世紀を展望した我が国の教育の在り方について(第二次答申)」. https://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/chuuou/toushin/970606.htm#01

中央教育審議会(2014),「新しい時代にふさわしい高大接続の実現に向けた高等学校教育、大学教育、大学入学者選抜の一体的改革について~ すべての若者が夢や目標を芽吹かせ、未来に花開かせるために ~(答申)」. https://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/chukyo/chukyo0/toushin/__icsFiles/afieldfile/2015/01/14/1354191.pdf

倉元直樹(2023),「国立大学アドミッションセンター連絡会議20年の歩みと今後の展望」,第38回東北大学高等教育フォーラム(新時代に大学教育を考える[20]/国立大学アドミッションセンター連絡会議20周年記念企画シンポジウム.

公立大学法人大阪(2021),「18.学生の確保の見通し等を記載した書類」, 大阪公立大学設置認可申請 4.設置の趣旨等を記載した書類. 

https://www.omu.ac.jp/about/edu-data/application/undergraduate/file/osakakouritu_2108nsecchi_gakusei1.pdf

公立大学法人大阪(2021),「公立大学法人大阪第1期中期計画(20194月~20253月)2020930日変更認可」.

 https://www.upc-osaka.ac.jp/assets/upco_1stmidterm_obejctmodified2020.pdf

公立大学法人大阪(2022),「公立大学法人大阪2022年度計画」.

 https://www.upc-osaka.ac.jp/assets/upco_2022annualplan.pdf

大阪府・大阪市・公立大学法人大阪(2020),「新大学基本構想(令和21月)」.

https://www.pref.osaka.lg.jp/attach/35704/00346634/shindaigakukihonkousou.pdf

大阪公立大学(2022a),「大阪公立大学アドミッションセンター規程」.

 https://www1.g-reiki.net/upc-osaka/reiki_honbun/u325RG00200568.html

大阪公立大学(2022b),「大阪公立大学アドミッションセンター運営委員会要項」.

 https://www.omu.ac.jp/omuac/assets/OMU_AdmissionCenter_CG.pdf

新大学推進委員会(2020),「アドミッションセンターの設置について(案)」, 新大学推進委員会 会議資料.

※オンライン文献のURL最終閲覧日は全て2023331日である。