教授 藤田 憲一

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研究テーマ:真菌の薬剤耐性機構およびそれを打ち破る生理活性物質
高齢、臓器移植後の免疫抑制剤の投与、AIDSなどによって免疫力が低下する場合、酵母やカビなどの真菌による日和見感染が起きること(真菌症)があります。真菌はヒトと同じ真核生物に属しているため、薬のターゲットが限られています。そのため、抗真菌性抗生物質の開発は困難を極めており、現在、治療に使える抗真菌性抗生物質の数は限定されています。また、新たなターゲットを持つ抗真菌剤の探索も日夜続けられています。
21世紀に入り、上市される新薬が減ってきており、加えて、真菌に関しても薬剤耐性菌の頻出が問題となってきています。薬剤耐性機構をターゲットとする薬を開発することができれば、薬剤耐性のために効力が失われた既承認の薬剤を活用できると期待されます。本研究室では、真菌の薬剤耐性機構の一つである多剤耐性薬剤排出ポンプの亢進機構を解析するとともに、薬剤排出ポンプの活性を直接抑制、あるいはその亢進を抑制する生理活性物質の探索を試みています。現在、精油アニスオイルの主成分であるトランス・アネトールにそのような活性を見いだしており、逆に本物質を用いて薬剤耐性がおこる仕組みも解析しています。

スターアニス精油の主成分アネトールには薬剤排出を抑制する作用があります。

 

研究テーマ:ポリ-γ-グルタミン酸の分子構造・生合成機構・生理活性に関する研究

近年、バイオプラスチックとしてポリ乳酸に注目がおよんでいます。乳酸は光合成の産物であるでんぷんやその他の糖質原料から乳酸発酵によって得ることができますが、乳酸をポリ乳酸に変換するには化学反応が必要となります。一方、PGAは植物や微生物が作るグルタミン酸をさらに微生物が自分自身の酵素を使って重合したものであり、それゆえ完全な脱石油型ポリマーと言えます。PGAには高い粘性、吸水性や保湿性があり、このような性質を利用してこれまでにもさまざまな製品が開発されてきました。これまでの研究でPGAのこのような性質にはD-グルタミン酸とL-グルタミン酸の両光学異性体が同一分子中に共重合する独特の分子構造が重要な役割を果たしていることを明らかになりました。一方、本学のキャンパス土壌から分離されたPGA高生産菌 Bacillus sp. F-2-01のおかげでPGAの工業生産が可能になったことから、ますますその用途開発の機運が高まっています。人畜無害の超ポリマーPGAの機能性をさらに高め、プラスチック、繊維、食品、医療材料などとして利用するには、その構造を目的の機能に合わせて種々変換することが重要です。本研究室では、PGAの分子構造、生合成機構を明らかにするための基礎研究をはじめとして、遺伝子操作や変異処理によってPGA生産菌を育種・改良するとともに、PGAの分子構造を修飾する酵素の生産菌を探索するなど、PGAに多機能性を賦与するための技術開発にも力を入れています。