お知らせ
2025年8月19日
2025夏の国際会議での発表
- LT30(低温物理最大の国際会議・スペイン(ビルバオ))にて口頭発表を行いました:小原 "Superfluid Suction Vortex Generated by Fountain Effect"
- 噴水効果を用いて超流動の巨大渦を生成する実験の報告です.
吸込渦は世の中に沢山存在する渦の一形態で,風呂桶の栓を抜いたときに発生する渦として知られています.一般には,渦は粘性によって消滅する運命にありますが,渦度が吸込流に流されるという性質を使うと,渦を安定化できるとされています.では,粘性がない超流動で渦は安定化するのだろうか? という問題は長い間謎でした.我々はこれまで,低温で回転するタービンを作り,粘性のない超流動でも渦が安定化するということを証明してきました.それには量子渦が超流動流によって流されるという性質が重要でした.今回はさらに,噴水効果という超流動特有の現象を使って吸込渦の作成に成功しました.タービンを使わないので,振動が発生せず,きれいな渦が発生し,また,流量を精密に制御できる特徴があります.この研究は前田君の卒業研究と修士論文の研究の途中経過です.
- 噴水効果を用いて超流動の巨大渦を生成する実験の報告です.
- LT30 にてポスター発表を行いました:小原 "Quantum Turbulence Triggered by Counterflow in a Connecting Tube"
同じ内容を.QTM2025(量子乱流に関する国際会議・スペイン(マドリッド))にて30分講演をおこないました.- 「熱対向流」という現象は超流動の教科書には必ず書いてあるほどに有名な現象です.いわく,2つの容器(A槽とB槽)を管でつないで超流動を閉じ込め,A槽にヒーターを炊くと,管の中で,A槽からB槽に向かって常流動流がながれ,B槽からA槽に向かって超流動流が戻って来る,という現象です.この流れは運動量を持ちません.さらにヒーターを強くすると,管の中に量子乱流が発生します.これを熱対向乱流といいます.この熱対向乱流は 1950年代から知られている有名な現象ですが,この乱流が管の中のどちら向きに進むか?という問題は「超流動流の向きB→Aに向かうに決まっている! だから,A槽の方に乱流が濃く発生するはずだ」と,確かめてもいないのに信じられてきました.70年の時を経て,我々は「実は乱流は常流動流側のB槽のほうに乱流が発生しやすい」という事実を見出しました.これは熱対向流の噴流が運動量を持つ並流に転換した,というモデルで説明できます.まさに,「常識を疑え」を体現した実験です.この研究は,2名(桑平君・吉阪君)2年間の4年生の卒業研究を小原が再構築して論文にまとめたものです.