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2026年7月8日

大規模データ解析により、ボルナウイルス科の多様性とユニークなゲノム構造を明らかにした論文が公開されました! Our paper about the diversity and unexpected genomic architectures of bornavirids has been published!

大規模データ解析により、ボルナウイルス科の多様性とユニークなゲノム構造を明らかにした論文が公開されました!
Our paper about the diversity and unexpected genomic architectures of bornavirids has been published!

Continuous in silico screening of fish, amphibians, reptiles, and birds expands the diversity of bornavirids and reveals unexpected genomic architectures
Mirette I. Y. Eshak, Sakiho Imai, Junna Kawasaki, Mai Kishimoto, Miguel Vences, Andolalao Rakotoarison, Martin Beer, Dennis Rubbenstroth, Masayuki Horie, Florian Pfaff
Virus Evolution, Volume 12, Issue 1, 2026, veag033
https://doi.org/10.1093/ve/veag033

ボルナウイルス科は、モノネガウイルス目に属するマイナス鎖一本鎖RNAウイルスの一群であり、オルソボルナウイルス属、カルボウイルス属、カルターウイルス属、カルティロウイルス属の4属が存在します。また、ボルナウイルスは魚類から哺乳類まで多様な脊椎動物に感染し、代表的なウイルスであるボルナ病ウイルスは動物やヒトに重篤な神経疾患を引き起こすことが知られています。一方で、未だ未発見のボルナウイルスが多数存在すると考えられており、どのようなボルナウイルスが存在しているのか、またその宿主域やゲノムの多様性、進化については、まだ十分に明らかになっていませんでした。

本研究では、公共データベースに登録されている魚類、両生類、爬虫類、鳥類由来のRNA-seqデータ、およびマダガスカル産のカエルから新たに取得したRNA-seqデータを対象として、網羅的なボルナウイルス探索を行いました。その結果、これまで知られていなかった多様なボルナウイルスを発見しました。

本研究のインパクトとしては、大きく三点が挙げられます。ひとつめが新属に相当すると考えられるボルナウイルスがゴールドストライプサラマンダーから検出されたことです。ふたつめはこれまで主に魚類に関連すると考えられていたカルターウイルス属のウイルスが、爬虫類や両生類からも検出され、このグループの宿主域が従来考えられていたよりも広い可能性が示されたことです。最後に(これが特に一押し)、スズメ目鳥類から新規カルボウイルスを発見し、これらのウイルスが通常のボルナウイルスが持つG遺伝子、さらに一部ではM遺伝子やX遺伝子も欠いていたことです。G遺伝子やM遺伝子は、ウイルス粒子の形成や細胞への侵入に関わる重要な遺伝子であるため、これらの遺伝子を欠くボルナウイルスは自信のみでは感染伝播ができないと考えられます。しかし、このような遺伝子を欠く鳥類カルボウイルスが、他のウイルスと同時に検出される例があることも示されました。特に、カナリアカルボウイルスは、同科オルソボルナウイルス属のカナリアボルナウイルスと高率に共感染していることが示されました。これらのことから、上記の遺伝子を欠く新規カルボウイルスが他のウイルスの相同遺伝子を利用している可能性を示唆するものです。つまり、これらのウイルスは進化の過程において他のウイルスの相同遺伝子に依存することで、自身の遺伝子を失った可能性が考えられます。ただし、現時点ではあくまでも共検出が確認できたのみであり、実際にこれらのウイルスが他のウイルスの相同遺伝子を利用できるかどうか、今後の実験的検証が必要です。

本研究により、ボルナウイルスはこれまで想定されていた以上に宿主域が広く、さらに従来のウイルスゲノム構造から大きく外れたユニークなゲノム構成を取りうることが明らかになりました。一方で、今回発見されたウイルスの病原性、実際の宿主域、伝播様式などについては、まだ不明な点が多く残されています。今後は、実際の動物サンプルを用いた疫学調査や、培養細胞を用いた実験的解析によって、これらのウイルスの生物学的性状を明らかにしていく必要があります。

なお、本論文は当研究室の大学院生の今井咲帆さんが共同筆頭著者、堀江が共同責任著者となっており、ドイツのフリードリヒ・レフラー研究所(FLI)のFlorian Pfaff博士らとの国際共同研究です。上記のG遺伝子等を欠損したカナリアカルボウイルスを発見した際に、堀江のフライブルク大学でのポスドク時代の同僚であるFLIのDennis Rubbenstroth博士に連絡したところ、同様に大規模ボルナウイルス探索を行っているFlorian博士へとつないでくれ、共同研究へとつながりました。昔の仲間を介して研究を広げ、成果を発展できたという点もうれしいです。とりあえず、上記の鳥のカルボウイルスに関する仮説を実験で早く証明したいですね。