研究紹介
無線通信班
無線通信班では、次世代モバイル通信システムに関する研究を行っている。
モバイル通信において、電波は基地局から受信機まで複数の経路を経由して到達する。これらの伝搬経路では、ビルなどによる反射が生じるため、各経路において電波は減衰や遅延、さらにはドップラー効果による周波数シフトを受ける。現在広く用いられているOFDM方式では、これらのチャネル特性を一定時間内で時不変であると近似し、チャネルの固有関数に基づいて通信を行っている。しかし、新幹線のような高速移動環境では、この時不変近似が成立せず、チャネルの固有関数が時間とともに変化し続ける。その結果、固有関数に基づくOFDM方式による通信は困難となる。![]()
そこで、本研究室ではODDM(Orthogonal Delay-Doppler Division Multiplexing)変調方式を提案している。この通信方式は、高速移動環境においても遅延およびドップラー効果に対して高いロバスト性を有する。ODDMは、従来の「時間・周波数領域」ではなく、「遅延・ドップラー(Delay-Doppler)領域」に情報をマッピングして伝送する方式であり、その最大の特長は、遅延・ドップラー領域における直交パルスを採用している点にある。従来のOFDMが時間・周波数領域の直交性を利用するのに対し、ODDMでは遅延・ドップラー領域においてパルス同士が互いに重ならないように設計されている。これにより、遅延やドップラー効果による周波数シフトが生じても、遅延・ドップラー領域内での干渉を効果的にダイバーシティ利得として活用することが可能となる。
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ODDM変調に関する情報はここに公開しています。
Edge AI班
Edge AI班では、分散型機械学習の一分野である連合学習(Federated Learning)に関する研究に取り組んでいる。
従来の機械学習では、学習に用いるすべてのデータを中央サーバに集約して処理することが一般的であった。しかし、医療画像のようなセンシティブなデータにおいてはプライバシー保護が強く求められるほか、大量データの集約には通信コストの増大といった課題がある。
こうした課題を解決する手法として、近年注目されているのが連合学習である。連合学習では、各端末がローカル環境で学習を行い、その結果のみをサーバに送信することで、データを共有することなく、効率的かつプライバシーに配慮した学習を実現する。
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この手法では、1台のパラメータサーバと複数のエッジデバイスから構成されるネットワークにおいて、協調的に学習が進められる。各エッジデバイスはそれぞれ独自のデータセットを保有しており、これらのデータが他者と共有されることはない。各デバイスは自身のローカルデータを用いて学習を行い、得られたモデルのみをサーバに送信する。サーバ側では、収集されたモデルを集約・平均化することで、全体のモデルを更新する。
このように、連合学習を用いることで、生データを送信する場合と比較して、より高いセキュリティを確保できるとともに、通信コストの大幅な削減が可能となる。
現在、我々は連合学習のさらなる効率化および多様な応用展開に向けて研究を進めている。