Research | 量子線エネルギー反応科学研究室

当グループの研究ベースは物質科学材料科学です。様々な高密度エネルギー(光、荷電粒子、音波)を液体や固体に照射した際の原子レベルの挙動解明のための実験及び理論計算、結果として生じる変化(腐食などの劣化)解明、それら現象を応用した新材料開発、また新しい装置や手法開発など幅広く行っています。

対象物 金属、セラミクス 酸化物 半導体
照射 電子 軽、重イオン ガンマ線、X線 陽電子 超音波
反応現象 弾出し損傷、結晶欠陥 電子励起 アモルファス化 還元反応 対生成 腐食
物性 光学特性 強度 触媒 電気物性 磁性 水素吸放出

研究室の装置

具体的な研究例 

・ イオン照射注入法によるガラス固体内ナノ構造体合成と制御による光学、触媒、磁気機能性材料の開発

Developmento of new functional materials for light absorption, Catalyst and Magnetic properties by synthesis of nanocomposites in glassy solids by using ion implantation method

高エネルギー粒子をガラス固体への照射注入することによって生じるイオンの堆積拡散エネルギー分散現象を利用したナノ粒子合成とそれらの粒子の特性や微細構造評価を行なっています。これらの方法で非平衡反応により通常の方法で生成しにくい状態の粒子合成により光学デバイスや触媒の機能性とその構造との相関の解明と応用を試みています。

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・ 照射励起還元を利用したグリーンケミストリー反応による機能性ナノ微粒子合成制御と機能性解明

Synthesis of new functional metal nanoparticles under high energy irradiation reduction fields in water solution

高エネルギー量子を水に照射することで生じる水分子の分解による水の反応性を利用した金属ナノ粒子のクリーンな反応場での合成とそれらの特性や微細構造評価を行なっています。これらの方法で非平衡反応により通常の方法で生成しにくい状態の粒子合成で新規触媒合成などを試みています。

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・ 高エネルギー粒子線照射による新機能性材料改質(高強度化、磁性制御)

Surface modification of metallic alloys by the Irradiation of swift heavy ions 特定の金属に、制御した電子やイオンなどの高エネルギー粒子線を照射すると、原子の並びが変化して従来にない特性が発現する場合があり、それらを探索して高強度、靭性制御、磁性制御による新材料や高機能化に挑戦しています。これまでにこの方法で超超ジュラルミンを超える高強度のアルミニウム合金の作成方法として特許を取得しています。

Topics3

・ アモルファス金属の原子レベル微細構造解明と粒子照射誘起非晶質化による超耐摩耗性、耐食性の研究

Study of Local structure of Amorphous alloys, and their Property control by High energetic particles Irradiation 金属は基本的に規則的な原子の並びをした結晶にしかなりません。しかし、特定の合金を液体からの急冷や極めて高いエネルギー粒子の照射により規則性のないアモルファス合金を作成することが可能です。アモルファスは実際には作成する条件に依存した原子配置の乱雑さにも違いがある可能性があり、それが特性にも影響する可能性を見出しており超微細な原子の配列の制御から構造、特性の関係性を調べています。特定の合金に高エネルギー粒子を照射すると表面付近の照射領域だけアモルファス化する現象を見つけました。これにより特定領域の表面の耐摩耗性や耐食性の向上が見込まれており、新しい材料の機能性改質方法として期待し研究しています。

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・ 金属合金中の原子サイズ空隙型欠陥制御と水素貯蔵に関する研究

Study of Hydrogen behavior in compound alloys with lattice defects introduced by high energetic particles irradiations 本研究では、特定の合金にのみ起こるナノ空間への複数個の水素原子の多重捕獲現象を解明し、応用として安価な金属資源を用いた水素閉じ込め放出による新しい水素貯蔵材料への応用の研究を行っています。

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・ 高エネルギーγビームを用いた簡易型高速陽電子システム開発と応用研究

Development of fast positron annihilation measurement system by using LCS-gamma beam, and its application

陽電子を用いると様々な材料中の原子レベルの穴の大きさ、電子状態、数密度、化学分析などに利用できます。しかし陽電子は通常放射性同位元素からしか得られないため、放射性物質を扱う特殊な実験になります。また同位元素から得られる陽電子はエネルギーが比較的低いため、物質研究では対象が表面近傍であることが多いです。我々の研究では近年放射光施設で得られる高エネルギーX線(ガンマ線)を利用し物質数mm以上の深さに注入できる高エネルギー陽電子のビーム装置や、X線を対象材料に直接入射する事で試料内で陽電子を発生させて評価する装置開発により、大きな材料を非破壊で原子レベルの検査を行う技術を開発しました。この方法に関して以下のような研究を行っています。

・ 固体内での陽電子消滅の理論計算、および陽電子輸送に関する計算機シミュレーション Computer simulation of Positron annihilation, Pear creation, Defects behaviour, Charged particles transport and Nanoparticles formation.

私たちのグループで用いる陽電子による物質評価法では、極めて小さい原子レベルの穴の状態やその周囲の電子状態をきちんと評価するために、量子力学をベースとした理論的な計算によって陽電子を物質中に注入した際にどうなるかを計算機シミュレーションして実験結果と対比させることで極めて詳細な現象の解明にあたっています。

・ 特殊環境下(放射線、疲労、腐食環境など)での金属中の原子挙動解明による材料寿命予測

Study of defect dynamics in metals under fatigue stress and corrosion environment by using positron annihilation techniques

金属は強度の強い物質ですが、繰り返し変形など行なっていくとやがて破断するなどして壊れます。一般的には目に見えないほどの亀裂が発生することで起こりますが、亀裂が発生する遥か前の段階で原子の配列などがどのように乱れていくか、またそれらの変化が温度やガスなど周囲の環境によってどのように影響を受けるのかを、原子の動きを直接観察しながらの挙動を評価した例はありません。陽電子という特殊な素粒子を用いてこれらを明らかにする研究を行っています。また、照射による改質の一方向性として耐摩耗性や耐食性向上を目指し、そのための表面改質構造評価に陽電子を応用します。

Topics6

Topics5

・ 酸化物に対する粒子線照によるナノ構造変化と特性

Property and nanostructure change of ceramics after irradiation

 酸化物(セラミクス)や金属などの物質中の原子レベルでの構造変化などによる材料特性との関連性について、粒子線照射により意図的に微細構造を変化させ、それらの放射光や各種放射線計測を用いて構造と特性の相関の解明を行っています。また、それらの実験結果の実証のため理論計算である第一原理計算手法を行っています。

・ 半導体における潜在欠陥評価および宇宙粒子線照射による欠陥挙動と電気特性(現在研究停止中)

Latent defects in semiconductor and interaction between irradiation damage and electronic features

半導体は宇宙では太陽電池や宇宙船制御のためのコンピュータ素子などに用いられていますが、宇宙には非常に複雑な高エネルギー放射線が飛び交っており、それらによる損傷で凄まじい劣化が起こります。その起源は結晶中の原子の弾き出しなど原子の乱れですが、半導体種や照射の条件などによって大きく異なります。それらの原因となる半導体結晶中原子の変化を陽電子を用いて解明しています。