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2026年2月24日
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キャンパスを飛び出し、知見を広げる/宮川 壽夫教授(商学部)の専門ゼミナール紹介
商学部の専門ゼミナールは、2年間かけて専門分野を深く掘り下げ、その集大成として卒業論文をまとめる授業です。
宮川 壽夫教授のゼミでは、コーポレートファイナンス理論をもとに、資本市場に潜む謎を解明しようとしています。資本市場には、事業を起こす経営者とそのために必要な資金を提供する投資家がいて、両者が出会うことで事業が行われ、世の中に価値が生まれます。この価値を企業価値と呼び、経営者も投資家も企業価値の拡大を目指します。しかし、資本市場には企業価値の拡大を阻む要因が多くあります。本ゼミナールでは、企業がどこから資金を調達し、いかなる事業に投資して、得られた成果をどう配分するのか、といったファイナンスの原則的な問題に焦点を当て、それを起点に幅広く研究を行います。実際に起きている現象に着目して、仮説を設定し、定量的なデータを用いて実証。実証結果によって仮説を再検討するという「科学的思考」を繰り返して市場の本質へと迫ります。
また、学生が企業を訪問し企業の方々と直接議論を交わす拡大ゼミや、企業の方を外部講師としてお招きするゲスト訪問、宮川先生が主催している企業の方々の研究会への参加など、学生が実社会で活躍している方々の話を直接聞く機会が豊富である点も、宮川ゼミの特徴です。
お話を聞いたゼミメンバー
- 木村 和慶さん(商学部4年)
- 小島 理功さん(商学部4年)
- 佐久間 優歩さん(商学部4年)
- 丹羽 眞優さん(商学部4年)
- 山本 花怜さん(商学部4年/ゼミ長)
宮川 壽夫教授のプロフィール
- 専門はコーポレートファイナンス理論。野村證券株式会社勤務、米国トムソンファイナンシャル・コンサルティンググループでのシニアディレクターを経て、筑波大学で博士(経営学)を取得。2010年に大阪市立大学(現・大阪公立大学)に着任し、企業価値、資本コスト、株主構成、ESG投資など多岐にわたって研究。『ファイナンス学者の思考法 どこまで理屈で仕事ができるか?』(2025年、ダイヤモンド社)、『新解釈 コーポレートファイナンス理論 企業価値を拡大すべきって本当ですか?』(2022年、ダイヤモンド社)など、著書多数。
※所属・学年は取材当時
皆さんは大阪公立大学の一期生になりますが、本学を選んだ理由を教えてください
- 木村 和慶さん(以下、木村)
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期待感です。私が入学したのは、大阪市立大学と大阪府立大学が統合し、大阪公立大学が誕生した2022年でした。新たな変革に伴い、今までにない新しい経験を積めるのではないかという期待が胸にあふれていました。
- 小島 理功さん(以下、小島)
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私は大学で商学や経営学を学ぼうと決めていました。大阪公立大学(大阪市立大学)は、三商大といわれるように商学の歴史の古い大学であり、より深い学びができると思い選びました。また新大学の一期生になるということも魅力の一つでした。
宮川ゼミを選んだ理由は何でしょうか
- 山本 花怜さん(以下、山本)
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ゼミ紹介資料にあった“『日本一のゼミ』を作ります”という言葉に心を掴まれたことが宮川ゼミに興味をもった最初のきっかけでした。ゼミ見学に訪問した時に、ここならすごいことができそうだと直感して宮川先生の弟子になることを決意しました。 この直感を与えてくれたのは、活動内容だけでなく、なんといってもやはり宮川先生の熱意と先輩方の雰囲気でした。ディベート大会や、企業研究がゼミ活動として紹介されており、実践的な学びとアグレッシブな内容に強く惹かれました。当時の私は、ゼミと聞いて座学がメインであると想像していたので、他ではできない貴重な体験ができるに違いないと確信しました。
- 丹羽 眞優さん(以下、丹羽)
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他の先生とは一線を画す宮川先生の雰囲気に惹かれたことがきっかけです。ゼミ説明会やオープンゼミに参加した際、専門用語はまだよく分からなかったものの、内容がとても面白そうだと感じました。また、そこで議論している先輩方の姿を見て、このゼミで学びたいと思うようになりました。
宮川ゼミの特徴でもある拡大ゼミやゲスト訪問などで印象に残っていることはありますか
- 小島 理功さん(以下、小島)
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4月に堺化学工業の方々と拡大ゼミを行った際に、自分の卒論の研究内容を発表したのですが、当時は理論をもとに書き進めている状況で、机上での議論に留まっていました。しかし拡大ゼミで、実際に企業で働いている実務家の方々の考え方を知ることができました。また、自分の研究内容への意見をいただくことができ、理論だけでは見えてこない企業経営の難しさなどを感じることができました。
- 丹羽
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拡大ゼミや企業の方との研究会で、実際に株主対応をされている方とお話しして、自社のことを真剣に考えて意見をくれる方もいれば、立場や関心の異なる意見を持つ方もいるなど、株主一人ひとりの考え方や価値観の違いがあることを知りました。その中で、すべてを満足させることの難しさや株主対応の大変さを実感できました。
- 山本
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2025年7月にサカイ引越センターで行われた拡大ゼミでは、私の卒業論文のテーマ「ダイバーシティ・マネジメントに関するサーベイ研究」でディスカッションを行いました。当時は、女性の活躍に重きを置いて卒業論文に取り組んでいました。サカイ引越センターの専務をはじめとする経営企画の方々から、執筆に関するアドバイスをいただいただけでなく、実務における女性活躍推進のリアルな現状についても伺うことができました。立ちはだかる困難に向き合いながらも、ダイバーシティ推進に取り組む熱い気持ちが強く印象に残っています。拡大ゼミを通して、女性活躍推進がなぜ必要なのか、女性活躍推進の目指すところを改めて考える機会になりました。
2025年7月29日の拡大ゼミ 株式会社サカイ引越センター
企業の資本収益性は本当に株主価値を拡大するのか、ダイバーシティは本当に経済的価値を生むのか、をテーマに活発に意見を交わしました。企業の社会貢献活動、女性の指導的地位の向上や外国人労働者の雇用に関する実際の成果や課題が取り上げられ、ダイバーシティ推進の重要性が強調されました。経営の最前線の取り組みに触れる貴重な機会となりました。


2025年12月9日の拡大ゼミ 堺化学工業株式会社
問答や議論を重ねることにより、思考を深め、考えを整理し、気づきを引き出す、宮川教授が考案した「ソクラテスゲーム」を通して、“堺化学工業の持つ競合優位性とは何か”をテーマに、議論を交わしました。化学メーカーとして100年以上にわたり事業を継続してきた背景にどのような要因があるのか、その本質に迫るべく、堺化学工業の方々が考える「強み」に対して学生が「なぜ」という問いを繰り返しました。教科書上の理論だけでは得られない学びの場となりました。


卒論について教えてください
- 丹羽
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「日本企業の資本効率と株主価値に関する実証研究」を卒論のテーマとしました。東京証券取引所に上場する企業を対象に、PBR・PERの水準(高低)によって企業を分類し、それぞれの企業の状況次第で、PBRに対するROEの感応度がどのように異なるのかを分析しました。先行研究の英語論文を読み解き、その内容を正確に理解したうえで、自分の研究の考察部分に落とし込むところが最も苦労しました。
- 小島
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卒論は「包括利益導入による資本効率指標への影響について〜ROEとPBRの関係性に着目して〜」です。円安株高局面が進行する中で、企業の海外資産や有価証券の評価益(その他の包括利益)により、日本企業の資本は大きく拡大しています。そうした状況下では、資本を分母とするROE指標が計算上低くなってしまう構造的な問題が生じます。この包括利益の導入が資本効率指標へ与える影響を、ROEと PBRの関係性に着目して統計的に分析しました。膨大な企業の財務データや株式データをもとに、統計的に分析を行うため、そのデータ処理に苦労しました。Excelでのデータ処理には限界があり、Rというソフトを新しく勉強する必要がありました。Rを用いて分析を行い、包括利益という専門的な会計用語をテーマに扱っているため、読者にとって分かりやすい文章を作成することを意識しました。
このゼミで得たことと今後の抱負について教えてください
- 佐久間 優歩さん(以下、佐久間)
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宮川先生に出会えたこと。背中で語るというよりも真正面から向き合ってくださる恩師です。幾度となくハッとさせられ、間違いなく自分の人生を正しい道に導いてくださいました。「その方がかっこいいじゃん?」という先生の言葉が好きです。かっこいい選択をできる大人になりたいと思います。
- 木村
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コーポレートファイナンス理論についてだけでなく、人としての考え方や姿勢を多く学びました。特に、正直に生きることの大切さはこの2年間で一番学びました。正直でありのままの自分の姿を見せることを心がけていきたいと思います。先生には2年間、愛あるご指導をたくさんしていただき、心から感謝しています。現在、公認会計士を目指して勉学に励んでいて、まずは公認会計士に合格することを目標としています。ゼミで学んだことを活かして、少しでも成長できるよう精進します。
- 丹羽
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企業を訪問し、企業の方々と議論を行う出張ゼミというとても貴重な機会をいただきました。また、「過程から学べ」という先生の言葉を胸に取り組んだ卒論の執筆は、読み手に伝わる文章構成力や論理的な説明能力、批判的思考力を養う、得難い学びの機会となりました。ゼミで過ごした時間は非常に濃密なもので、企業価値算定や社会人の方々との関わりなど、なかなか経験できないような有意義な時間を持つことができました。宮川ゼミでの経験を自分の自信として、社会人生活に挑んでいきたいと思います。
最後に後輩へのメッセージをお願いします
- 木村
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大学生の間に、自分が興味・関心を持つ分野に一度全力で熱中してみてください。私は、宮川ゼミで新たなチャレンジをして、本当に多くのことを学びました。正直失敗して辛いと感じる瞬間や自分が情けなくて泣きなくなることもありましたが、その分得られた経験はとても大きかったです。失敗することが怖くて躊躇するかもしれませんが、勇気を振り絞って一歩を踏み出し新たなチャレンジをしてみてください。きっと得られるものは想像できないほど大きなものとなるでしょう。応援しています。
宮川先生のコメント
ゼミ生諸君は宮川ゼミで多くの学びを得て、多くの経験ができたと思っているかもしれません。でも、これが将来どのような形で具体的に報われるかについては、実は無限の可能性を秘めています。「あれ?これってゼミで学んだことじゃないか?」「おや?自分はいつの間にかこんなことが普通にできるようになっているぞ」なんてことに気づくマジックモーメントが将来訪れます。3年後、あるいは20年後かもしれません。ゼミ生各自の可能性が将来にわたって無限に広がっているのと同じです。それが大学という高等教育がなせることだと思います。学びの効果はずっと続くはずです。
