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2026年3月5日

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トップマーケターから学ぶ「観光マーケティング」が導く未来/マネジメント実践(USJ式実践マーケティング学・応用編)レポート(担当:商学部 小林 哲教授)

ユニバーサル・スタジオ・ジャパン(USJ)を運営する合同会社ユー・エス・ジェイは、大阪府と包括連携協定を結んでおり、その一環として2022年4月から「ユー・エス・ジェイ式 観光マーケティング学」という講義を大阪公立大学で開始し、毎年200人以上が受講する人気の授業となっています。 2025年度は、前期に『マネジメント実践1(USJ式実践マーケティング学・基礎編)』、後期に『マネジメント実践2(USJ式実践マーケティング学・応用編)』として、ユニバーサル・スタジオ・ジャパンを好調に導いたマーケターが毎回登壇し、USJでの実例を交え、社会を動かすマーケティング戦略および戦略マーケティングを理解することを目的とした講義が行われました。また講義では、講師自身のこれまでのキャリアをご紹介いただく時間も設けており、学生らにとってキャリアデザインを考える上でも非常に有益な内容となっています。

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2026年1月23日(金)に行われた最終授業では、1年間を総括する「『観光マーケティング』が導く未来」をテーマとし、前半は学びの総括と今後の展望についての講義、後半は今回の講師である森戸 英俊さんのキャリア紹介が行われました。

講師

合同会社ユー・エス・ジェイ
マーケティング本部 ストラテジー&ビジネス・ディベロップメント部
マーケット・フォーサイト マネージャー

森戸 英俊さん

「観光マーケティング」が導く未来

観光業とは

世界経済フォーラム(WEF)が発表した2021年の旅行・観光競争力ランキングで、日本の観光競争力は世界1位となりましたが、2024年には世界3位に後退しました。評価項目の中で総合力では上位にもかかわらず、マーケティング力は26位、ブランド戦略は51位と、マーケティング戦略の面で課題が残っているといえます。

日本の観光業はホスピタリティやおもてなしに強みがある一方、マーケティングの基本であるターゲット設定や便益(商品やサービスを利用することで得られる「具体的な恩恵」や「価値」)の明確化が不十分ではないでしょうか。Who(誰に)、What(何を)、How(どのように)は、この順番で考える必要がありますが、日本の観光業は、Who(誰に)やWhat(何を)が明確でなく、How(どのように)が先行しているところに課題があるのかもしれません。観光客の多様性に対応したマーケティングが求められており、国や地域ごとの文化的背景やニーズを理解する必要があるのです。その際注意しなければならない重要なことが「思い込み」です。思い込みによる誤認識を避け、データに基づいた客観的な分析が重要なのです。

大阪観光のポテンシャル

USJは大阪府と包括連携協定を結んでいて、より多くの人に大阪に来てもらうにはどうすればよいのかということを一緒に考えています。大阪はUSJだけでなく、食文化やお笑い文化など多様な魅力を持ち、これらを統一的なコンセプトで発信することが重要です。競合都市との比較分析を行い、勝てるポイント(Point of Difference)と勝てないポイント(Point of Failure)を明確にし、ブランドポジショニングを確立する必要があるのです。

「非日常感、解放感」を求める人達に大阪が提供できるものは何か。大阪は、商人の街としての独自性や多様性を生かしたエンターテイメント性が特徴です。
大阪は、大阪・関西万博2025で観光都市としてのポテンシャルを示しました。2026年にはUSJは開業25周年を迎えます。今後もIRなどを通じて観光都市としての進化を続け、観光でアジアNo.1を目指したい。これからの大阪・日本を担う若い世代の皆さんが観光業の発展に貢献してくれることを期待します。

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キャリアインタビュー:森戸 英俊さん

新卒で通信キャリアに入り、その後関東のテーマパーク運営会社に2年間出向、それからUSJに転職して現在に至ります。関東と関西、両方のテーマパーク運営会社で働くというのは珍しいキャリアだと思います。今は、戦略立案、需要予測、来場者分析などをしています。加えて、今回のように講師として講義を行うこともあります。

キャリアについては、初めから軸があったわけではなく、経験を積む中で自分の進みたい道が見えてきたという表現がしっくりきます。ただし、軸がなかったとしても、節目ではめちゃくちゃ考えて決断する。そして決断したらその目標に向かって2年はがんばる。それを繰り返す形で進んできました。
これまで、ありがたいことにプライベートは順調で満足度の高い状況が続いていますが、仕事は、いい時もあれば落ち込む時もありました。いわゆる「壁にぶつかる」という状況です。その時、私がどのように乗り越えたかを紹介します。

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1.登ってみる

このメリットは、自己成長。でも登って登って、がんばりすぎて倒れてしまっては意味がありません。時には下りる勇気も必要だと思います。

2.ぶち壊そうと試みる

登れないなら壊してしまう。これは、今まで誰もやったことがないことですから、図抜けた効果が得られます。ただし、今まで誰もやれなかったのには理由があります。例えば壊すと誰かが不利益を被るかもしれません。自己中心的な考え方でぶち壊すのではなく、周りと協力して実行することが大切です。

3.迂回する・逃げる

壁があったら、登ったり壊したりするのではなく、迂回したり逃げたりしてみる。そうすると違った自分に出会えます。立ち止まって、壁があって無理やなぁ、登れないなぁ、ぶち壊せないなぁ、俺の人生終わったなぁ、と歩みを止めてはいけません。迂回してみて違ったな、と思ったら戻ればいいんです。立ち止まらず進み続けることが重要です。

これらは、壁にぶつかっている最中に「どのパターンでいこうか」と考えていたわけではなく、後から振り返ったらこういうやり方をしていたなと、導き出した考え方です。皆さんの参考になればと思い紹介しました。

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たくさんの学生さんから「今後のキャリアについて具体的にどう考えたらいいですか」という質問をいただきます。私からお伝えできるのは「その時の自分の気持ちに正直になりましょう」ということ。その時々の気持ちに正直になればいいのだと思います。その時やりたいことがあって、それが変わってもいいんです。ただし、さきほどお伝えしたとおり、めちゃくちゃ考えましょう。10年20年後、こうしたいなというのがあるなら考えましょう。それが結果的に変わっていていいんですよ。自分がやりたいことが何か?なければないなりに、いろいろ行動を起こしてみると新しい景色が広がってくるのだと思います。
就職活動中、ちょっとこの道じゃないなと思ったら、切り替えましょう。マーケティング職に絞って活動を進めてきたとしても、他にも面白そうだなと思える会社に出会ったら、そっちに向かってみたらいい。

皆さんはこの講義で、マーケティングのフレームワークについて学んできました。それは、就活や部活、バイトなどあらゆる分野に応用が利きます。また、この講義では、最前線でマーケティングをしているマーケターたちがどのようなキャリアを積んできたかという、他ではめったに聞けない話が聞けたかと思います。皆さんが少しでも「マーケティングって面白いな」「観光業に少しでも興味が湧いた、理解が深まった」と感じていただければよかったなと思いますし、自分のキャリアを考える上で少しでも役立ったならうれしいです。

西畠 帆香さん(1年生)、正木 美織さん(1年生)

入学前のオープンキャンパスで、この授業のことを知りました。USJは年パスを持っていたので気になり、マーケティングにも興味があったので受講しました。マーケティング戦略についてのワークショップなどが特におもしろくて勉強になりました。今日のキャリアの話を聞いて、何事も2年間はがんばってやってみようと思うことができました。

中村 優斗さん(2年生)

ここでしか聞けないUSJについての深い話が聞ける授業でした。それに、いろんな講師のキャリアを聞くことができて、自分が何をしたらいいかヒントをもらいました。気になっているならやってみるべきだという話を聞いて、公認会計士の勉強を始めましたし、海外留学にも行く予定です。この授業がきっかけになって自分の人生が動き出したように感じます。

畠山 唯花さん(2年生)

小さい時から行っているUSJのマーケティング実務の話はとても興味深かったです。活躍しているマーケターの方々のキャリアの話を聞いて、自分の意識が変わりました。英語を勉強したいと強く思って、マレーシアに留学しました。今度イギリス留学も計画しています。

大湾 康平さん(4年生)

2022年前期の「ユー・エス・ジェイ式 観光マーケティング学」を受講して、マーケティングに興味を持ちました。その後、留学のため後半を受講できなかったのですが、応用編も学びたいと思って今回受講しました。卒業後は外資系企業の営業に内定していますが、グローバルなマーケティング部門での勤務を目指したいと思います。