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2026年7月13日

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  • 医学

既成概念にとらわれない認知症医療へ。 二人のリーダーが描く、次世代のケアのかたち

2027年5月、健康長寿医療・介護の新たな拠点となる「大阪健康長寿医科学センター」が誕生します。同センターは、大阪公立大学医学部附属健康長寿医科学センター病院、大阪公立大学医学部附属健康長寿医科学センター研究所、大阪市立介護老人保健施設を兼ね備えており、認知症研究やケアの高度化に注力していきます。この開設に先駆け、病院長予定者の柴田 利彦先生と、研究所長予定者の樋口 真人先生による対談を実施。医療と研究の融合が生み出すシナジーと、新たな未来を切り開くお二人のビジョンに迫ります。

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Profile

柴田 利彦

大阪公立大学医学部附属健康長寿医科学センター病院 病院長(予定者)
大阪公立大学医学研究科健康長寿医科学講座病因診断科学特任教授

1985年大阪市立大学医学部卒業。大阪市立総合医療センター副院長、大阪市立大学大学院医学研究科外科学講座 心臓血管外科学教授(2022年より大阪公立大学)などを務め、特に低侵襲心臓手術や心臓弁膜症におけるロボット支援手術を推進する。現在は大阪公立大学大学院医学研究科健康長寿医科学講座病因診断科学特任教授。2027年4月より大阪公立大学医学部附属健康長寿医科学センター病院長に就任予定。

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樋口 真人

大阪公立大学大学院医学部附属健康長寿医科学センター研究所 研究所長(予定者)
大阪公立大学医学研究科健康長寿医科学講座病因診断科学教授

博士(医学)。1997年東北大学医学部大学院修了。量子科学技術研究開発機構などで脳画像研究を牽引。2023年より大阪公立大学大学院医学研究科健康長寿医科学講座病因診断科学教授に着任。認知症をはじめとする神経変性疾患の病態解明や、早期診断・治療戦略を専門とする脳科学・医学研究に取り組んでいる。20274月より大阪公立大学医学部附属健康長寿医科学センター研究所長就任予定。

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  • ※所属は掲載当時

シームレスな連携で支える、新しい認知症アプローチ

――まず始めに、センターの強みや、病院と研究所が併設されることのメリットを教えてください。

柴田 利彦特任教授(大阪公立大学医学部附属健康長寿医科学センター病院長(予定者))※以下、柴田

「大阪健康長寿医科学センター(以下、大阪長寿)」の一番の特色は「研究所」「病院」「介護老人保健施設(老健)」が三位一体となり、認知症の問題に取り組むという点にあります。
認知症は、症状が一定の段階まで進行してしまうと、現代の医学では進行を止めたり巻き戻したりすることは不可能です。いかに早く適切な時期に、治療薬などの新しい手段を患者さんに講じることで発症を遅らせるか、これが今できる唯一の認知症の治療です。そのために早期発見、早期治療が重要になります。
だからこそ、認知症の脳イメージング(画像診断)の日本の第一人者である樋口先生たちが、研究所において画像・血液バイオマーカーなどの技術を用い、その兆候を捉えてアプローチしていくわけです。私たち病院と研究所はしっかりとタッグを組み、伴走しながら進めていきたいと考えています。

樋口 真人教授(大阪公立大学医学部附属健康長寿医科学センター研究所長(予定者))※以下、樋口

病院と研究所が密接な関係だからこそ、研究所の特色を出せると思います。病院からのニーズを汲み取った上で、研究結果をいち早く病院で活用していただけるような関係性の構築を目指します。
研究所に設ける「研究コホート(長期的な調査・研究を行う場)」では、デジタル機器を用いた生体・健康データの測定や、血液検査、身体機能の検査などを受けることができます。これらを通じて、認知症のリスクをしっかり判断できるように取り組みます。もしリスクが高いと分かった場合は、何が原因なのかを詳しく分析します。その上で、まだ研究段階の予防法や治療法を、研究所と病院が連携して、いち早くその方に導入し、サポートしていくことを目指します。
また、いわゆる“認知症ドック(検診)”や、すでに認知症・MCI(軽度認知障害)と診断されて、通常の保険医療の対象になるような方の診療は、病院が担当しますが、これらのコホート研究、認知症ドック、診療は、決してバラバラなものではありません。例えばコホート研究で長期的に診ていく中で、さまざまな予防策を講じたものの認知障害が目立ってきたという場合は、病院の診療に移行していただきます。
まだ治療を始める段階ではない場合は、研究所のコホートに入っていただき、経過を追いながら予防法などの研究に参加していただく。このように双方が連携していくわけですが、やはり、いかに早期の段階をいち早く捉えて、そこに介入できるかという点が最大のポイントになると思っています。

柴田

大阪長寿の強みは、診療と研究がバラバラではなくシームレスになっている点です。もし研究に参加している方の症状が進んでも、すぐに精神科や神経内科などの専門医たちが連携して精密検査や適切なアプローチができます。つまり「検診を受けて陽性でした」で終わりではなく、その後のフォローまで病院の中でしっかりと完結できるのが大きな強みですね。

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樋口

同感です。検診自体は他の施設でも行っていますが、ここまで長期にわたって認知症患者に寄り添い続ける施設は他にありません。陽性と診断された後も、これからの治療を一緒に考えて深く寄り添っていきたい。「あの病院なら信頼できるし、将来も安心だ」と思ってもらえることが大切です。そのためにも、研究所と病院が手を取り合って連携していくことが非常に重要です。

家族の不安に寄り添い、共に予防の手立てを考える拠点へ

――認知症の早期段階における介入について、病院や研究所としての展望をお聞かせください。

樋口

現在、日本には認知症とその予備軍の方が約1000万人おられます。10人に1人が当事者という深刻な状況ですが、これまではどこで相談できるのかが分かりにくく、相談を受ける施設も十分ではありませんでした。まずは私たちがその拠り所となることが第一歩です。
特に、すでに親御さんなどの介護をされている方は、目の前の大変さに直面しつつも「将来、自分も子どもに同じ負担をかけるのでは」という強い不安を抱えています。だからこそ、そうした方などに対して、認知症の早期発見や予防の手がかりを発信し、研究や受診のきっかけにしていただく。私たちはただ待つのではなく、「一緒に予防の手立てを考えましょう」と広くアピールしていくことが重要だと考えています。

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柴田

重ねてになりますが、大阪長寿の強みは、病院と研究所が一つになって認知症医療に取り組んでいる点です。大阪市内のみならず、ここまで一丸となっている病院は他にないと自負していますし、皆さんにとって頼りになる存在になるだろうと思っています。また大学病院というと敷居が高く感じるかもしれませんが、単に病気を治すだけでなく、些細な悩みも気軽に相談できる、社会の役に立つ場所にしたいですね。
病院は、大阪市における「拠点型」の認知症疾患医療センターの役割を期待されており、地域社会への啓発・教育にも力を入れていく方針です。もちろん設置者である大阪市とも全面的にタイアップし、福祉・認知症施策を強力に進めていきます。

樋口

行政が抱える地域の課題と、私たちが医療や研究で解決したい課題をすり合わせ、お互いに手を取り合って一緒に考えていく姿勢が大切です。自治体との強い「絆」を活かして、地域に貢献していきたいですね。

互いの信頼と強みを生かし、名実ともに「突き抜けた組織」を目指す

柴田

大変ありがたいことに、大阪長寿には「ここで新しい医療に挑戦したい」「共に研究を行いたい」という意欲的な職員が数多く集まっています。樋口先生をはじめとする優秀な先生方の力をお借りしながら、名実ともに「突き抜けた組織」として社会に認められる病院を目指していきます。
樋口先生は研究者でありながら、医療現場にも深い理解を示してくださる素晴らしい先生です。お互いに本音で語り合える信頼関係のもと、最高のパートナーと仕事ができることに心から感謝しています。

樋口

恐縮です(笑)。柴田先生は地域の新型コロナウイルス対策などでも強力なリーダーシップを発揮してこられた実績をお持ちだとお聞きし、非常に心強く思っています。それに加え、柴田先生が「認知症に対する先入観のない状態」で、このセンターの立ち上げに臨まれている点も心強いですね。長年認知症の診療や研究に携わっていると、どうしても既成概念が生まれ、それが新しい挑戦の障壁になってしまうことがあります。しかし柴田先生とは「これから何をしていくか」をゼロから一緒に形にしていける。これは組織にとって非常に大きなアドバンテージです。

柴田

まさにその通りですね。私自身は認知症の専門家ではないからこそ、自身の家族の姿と重ね合わせながら、周囲に教えを請う姿勢で進めています。もし専門知識があれば、自分の考えを無理に通そうとしていたかもしれません。現在は一歩引いた視点から、病院長自身がまずは楽しむことを大切にし、さまざまなアイデアを周囲に投げかけながら進めています。

樋口

その柔軟な姿勢こそが、一番ありがたい部分です。硬直化した考え方からは、型にはまった研究や診療しか生まれません。これまでの「型を破る」ことこそが、私たちが目指す「突き抜ける」組織の姿そのものです。

柴田

今回、このような大きな役割を与えられたことを大変光栄に思っています。これが自身の最後のミッションであるという覚悟を持ち、楽しみながら全力を尽くしていきたいと思います。

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――それでは最後に地域の皆さまにメッセージをいただけますでしょうか。

柴田

冒頭でもお話ししましたが、大阪長寿は「研究所」「病院」「老健」の3つが三位一体となり、認知症の問題に取り組むという、これまでにない全く新しい試みを行います。まずはこの挑戦に注目していただきたいですね。
それと同時に、皆さんが日々感じていらっしゃる認知症にまつわるリアルな悩みを、私たちは広く集めたいと考えています。皆さんの困りごとを解決してこそ、この施設が存在する価値があるからです。些細なことでも、さまざまなご要望やリクエストを私たちにお寄せください。

樋口

皆さん、「将来、もし認知症になったらどうしよう」という不安を少なからず抱えていらっしゃると思います。あるいは最近物忘れが目立ってきて「人の名前が思い出せない」といった経験をし、「これは認知症の始まりなのか、それとも年齢によるものなのか」と、一人で不安な日々を過ごされている方もいるかもしれません。その不安を解消したい時、決してためらう必要はありません。研究所でも病院でもかまいません。まずは一度、足を運んでみてほしいです。
私たちは医療や研究に携わっていますが、年齢とともに認知症への不安が高まっているのは皆さんと同じです。だからこそ、私たちはその不安を共有し、住民の皆さんと同じ目線で一緒に解決していきたいと考えています。「同じ悩みを持つ仲間」だという意識で、気軽に私たちの研究や診療に加わっていただけると嬉しいです。

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参考

大阪公立大学医学部附属健康長寿医科学センター病院

大阪健康長寿医科学センター