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2025年6月30日

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記者として歩む卒業生のいま──卒業生が語る、伝える仕事/北島 美穂さん(新聞記者)

大阪市立大学文学部を2020年に卒業し、現在は読売新聞大阪本社の社会部で警察担当の記者として活躍する北島 美穂さん。大学での学びや地方の支局での記者経験を経て、どのように「伝える仕事」と向き合っているのか──学生時代を振り返りながら、現在のお仕事について伺いました。

記者という仕事に興味を持ったきっかけは?

昔から読書は好きでしたが、実は最初から書き手である「記者になろう」と決めていたわけではないんです。じっと机に向かって作業をする自分の姿が想像できなくて(笑)。人のお話を聞くのが好きだったので、現場に出て人に会える仕事が楽しいかも、と思っていて。そんな時に新聞記者という仕事を知りました。

学生時代に印象に残っている経験は?

文学部の社会学コースの授業の一環で福島県を訪れたフィールドワークが印象に残っています。実際に現地を訪れ、調査をするなかで、「人の話を聞く」経験をしました。卒論も文献を集めて一つ一つ丁寧に読み込みながら書いたのですが、その時に「資料に基づき事実を書く」という姿勢を学べたことやフィールドワークでの経験が、今の仕事にすごく生きています。
また、大学で初めて外国籍の友人と出会い、異なる文化や背景を知ろうとする中で、広い視野を持って人と接する大切さを実感しました。これも、大学生活で得た大切な経験・視点です。

新聞記者として働きはじめて、最初はどんな業務でしたか?

最初の赴任地は高知県の支局で、4年余り勤務しました。支局は本社より記者の人数が少ないため、警察・司法・経済・行政などあらゆる分野の取材を経験しました。警察取材を担当したときに、警察官の方を訪ねることもありましたが、自分自身が新人で不勉強ということもあり、なかなかお話を聞いてもらえず、「何のために仕事をしているのだろう」と悩んだ時期もありました。

それでも続けられた理由は?

ある警察官の方が「見ている人はちゃんと見ているよ」と声をかけてくれたことがあって。その言葉がすごく心に残っていて、「一歩踏み出していかないといけない時に分かってくれる人がいる」と思えるだけで、1回踏み込んでみようかな、という覚悟というか、気持ちの強さを持つことができて踏ん張れたんです。それから「諦めない」ということを意識するようになりました。

現在のお仕事についてお教えいただけますか?

警察担当として、事件や事故に関する取材を行っています。そのため、現場に足を運び直接話を聞きに行っていることも多いです。また、日々の取材を通して感じた問題意識も記事にしています。
名刺1枚でさまざまな方とお会いできる可能性があり、そしてお話を聞かせていただけるということは、大きな責任も伴いますが、記者という仕事ならではの大きな魅力だと感じています。

印象深かった仕事はありますか?

高知県で和菓子屋さんを取材したとき、自社製品が勝手に高額転売されているという話を記事にしました。記事を読んだお店側から「問題を広く知ってもらえて有り難かった」という声が届いたと聞いて、自分が書いた記事で問題を広く知ってもらえ、助かったと言っていただける人のありがたさを実感しました。新聞のちからというか、影響力を再認識しました。

気分転換はどうされていますか?

大阪に戻ってきたので、大学時代の友人やサークルの仲間、会社の同期らと集まって話をするのが良い気分転換になっています。お休みの日はしっかり休んで、また次の日から仕事を頑張ろうと気分を切り替えています。

今後、挑戦してみたいことは?

行政分野の取材にも挑戦してみたいと思っています。高知県にいた頃、福祉に関する取材をしたことがあり、行政が町を良くするための取り組みに興味を持ちました。そうした取り組みを取材して伝えられればと思っています。

最後に、就活を控える学生や高校生にメッセージをお願いします。

就活の準備ももちろん大事ですが、それ以上に「今しかできないこと」を楽しんでほしいです。友達との時間、サークル、旅行──今振り返るとどれも大切な経験です。あとは学生生活だけでなく、いろんな人に会って、たくさん話してみてください。例えば、自治体のボランティアセンターなど、アルバイトでもいいのですが、別のコミュニティに参加するなどの経験がのちのち生きてくると思います。また、大学での勉強以外にも自分の興味を持ったさまざまな分野での勉強もしておくといいと思います。

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【取材日:2025年6月5日】※所属は取材当時