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2025年6月30日
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- 在学生
大阪・関西万博パビリオン「飯田グループ×大阪公立大学共同出展館」出展記念・「未来の住宅」学生コンテストグランプリ受賞/工学研究科 水野 翔太さん
2025年4月13日(日)に開幕した大阪・関西万博。大阪公立大学は飯田グループホールディングスと共同で、パビリオン「飯田グループ×大阪公立大学共同出展館」を出展しています。それを記念して、若者ならではの自由な切り口で幸せのベースとなる「未来の住宅」デザインを募集し、本学工学部・工学研究科などから27作品(参加者45名)の応募がありました。2025年1月に行われた審査会で、工学研究科博士前期課程2年の水野 翔太さんがグランプリに決定。受賞作品は、大阪・関西万博の会期中、「飯田グループ×大阪公立大学共同出展館」で展示されています。受賞した水野さんに、作品に込めた想いや苦労した点、将来のビジョンなどをお聞きしました。

PROFILE
水野 翔太(みずの しょうた)
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大阪公立大学大学院工学研究科 都市系専攻 建築学分野 博士前期課程2年
※所属・学年は取材当時
Q 今回のコンテストに応募した経緯を教えてください。また、グランプリと聞いたときはいかがでしたか。
私は工学研究科で「建築デザイン・建築史」の研究室に所属しています。毎年7~9人の学生が所属しているのですが、今回のコンテストにはその中から同期のうち私を含めて5人が参加することに。それぞれが作品を制作し、応募前に5人で事前審査を行うなど、2ヶ月ほどかけて準備しました。建築関係のコンテストは賞金が出たり、海外のワークショップに招待されたりするのですが、今回は万博会場で展示されることもモチベーションにつながりました。万博の入場券をいただけることも嬉しいポイントでした。
学部時代の卒業設計でさまざまな賞(*)をいただき、なんとしてもこのコンテストにも勝ちたいと思っていました。グランプリが決定したとき、嬉しい思いもありましたが、ほっとしたというのが正直な感想です。
*水野さんの卒業設計「Blind Urbanism ~触常者の三原則~」は、目に見えるものが中心の“視覚主義”になりがちな現代において、“触覚”をテーマに制作された作品。Diploma×KYOTO’24 ・day1一位/day2二位、せんだいデザインリーグ2024・特別賞など、多数の賞を受賞した。
https://www.omu.ac.jp/eng/arch-net/info/news/entry-52819.html
Q 作品のコンセプトについて教えてください。
コンセプトは「漂う家と地繋の塔」で、『地繋(ちけい)』は造語です。海面上昇が進んだ世界で、唯一地面に接触しているのが、この塔です。潮の満ち引きの影響を受けて海面は上下しますが、それをポジティブにとらえて住み続ける人の住宅を描きました。
海面上昇は世界的な問題です。世界中の方が来場される万博で展示するには良いトピックスだと思っています。このような環境になっても、そこに住む意味は何か、住む人はどのような想いで住んでいるのかを見た人に考えてもらいたい、そんなメッセージを込めています。
これだけを見ると、「変わった家だな」と思われるかもしれませんが、作品の本質は「住み続ける人」です。誰もがどこかに住んでいるんです。そういう目線で見て欲しいです。

※時期によって設置場所が多少異なります
Q このコンセプトに至ったきっかけは何かあったのでしょうか。
私が学部3年のとき、宮城県女川町など東北地方を訪問しました。当初の目的は、せんだいデザインリーグを見に行くためだったのですが、建築を学ぶ学生として、やはり東日本大震災関連の遺構や建築物も見ておかないといけないなと。私は生まれも育ちも兵庫県ですが、阪神淡路大震災は経験していません。大きな災害があっても、環境が悪化してもそこに住み続ける人がいて、そういった人たちを主役にしたものを考えたかった。それが今回のコンセプトに至ったきっかけです。
Q 苦労した点や作品のポイントは。
一番苦労したのはメインのパースです。ボリュームも大きく、一番時間がかかりました。一般的に、作品の半分がパースという構成はあまりなく、友人から「半分をパースにするなんて、攻めたな」と言われたくらいです。また当初は、塔に家が紐などで繋がっているようなものも考えていましたが、塔と家の接続が難しく、海面が上昇して大地が沈み、上に住宅増築して塔が形成される、という最終的なデザインにたどり着く過程も苦労した点です。
また、工学ならではの技術面も意識しています。例えば、さまざまな揺れに対応できるよう、船の構造を応用した貯水槽と基礎を設計しました。揺れを減少させるため、タンク内を水などの液体が移動する「アンチローリングタンク」を採用したり、「ビルジキール」という、船底と船の側面の境目に魚の腹びれのような細長い板状のものを取り付けたりしています。

Q 実際に万博会場での展示を見ていかがですか。
万博には建築の専門家以外の方も多く来場されます。そのような会場に展示されるのは、幅広い方に見てもらえるので良いですね。友人・知人からも、「万博で見たよ」とか、「ここの解説文が良かった」と具体的に言われることもあり、励みになります。また、プロの建築家の作品と一緒に並んで展示されているのも嬉しいです。

Q 最後に、将来取り組みたいことやビジョンなどを教えてください。
将来は建築家になりたいと思っていますが、どのような建物を建てたいとか、具体的なイメージはまだありません。3年ほど前に旅行でスペインに行ったのですが、持続可能を目指す「脱成長」のような考え方をもつ人たちに触れ、幸せを追い求める姿がとても印象的でした。今後は、スペインの設計事務所でのインターンにもチャレンジしてみたいです。
関連情報
受賞作品の詳細はこちら 学生作品を大阪・関西万博「飯田グループ×大阪公立大学共同出展館」に展示!大阪公立大学パビリオン出展記念学生コンテスト受賞作品が決定