記事

2025年10月2日

  • 工学
  • 在学生

対話を通して見えてきた、なりたい自分/工学研究科 下田 竜之介さん

仲間たちとの語らいや、就職活動を通して出会った社会人との対話。その一つひとつが自分を見つめなおすきっかけになったという下田さん。大学・大学院での学び、そして就職活動の中で得た気づきについて、お話を伺いました。

CareerDesign_Shimodasan_1

PROFILE

下田 竜之介(しもだ りゅうのすけ)さん

  • 工学研究科物質化学生命系専攻 博士前期課程2年生
    内定先 非鉄金属メーカー

    ※所属・学年は取材当時

Q 大学・大学院での専攻・研究分野について教えてください。その中で特に印象に残っている学びは何ですか?

大学から大学院まで、一貫してマテリアル工学(材料工学)を専攻しています。研究室では錯体化学を専門とし、金属イオンと有機物からなる「MOF(金属有機構造体)」という、新しい機能を持つ材料の創出に取り組んでいます。
この分野の学びの中で、特に印象に残っていることが二つあります。
一つは、学部時代の「材料プロセス」の授業です。高校までの学問とは違い、そこには唯一の正解がありませんでした。答えのない問いに対し、論理を積み重ねて最適解を探求していくプロセスに、学問の本当の面白さを感じ、夢中になりました。
もう一つは、研究活動そのものから得た学びです。「やってみないと、何ができるか分からない」。この言葉に尽きます。予測と違う結果が出た時こそ、それをポジティブに捉え、次の一手を考える。その試行錯誤の中にこそ、新たな発見の可能性があるという、研究の醍醐味を学びました。

Q 大学院進学を考え始めたタイミングやきっかけを教えてください。

私の場合、何か強い目的があったというよりは、「せっかく理系の学部に進学したのだから、もう少し専門的なことを勉強したいな」という思いを抱いていました。学部で学ぶ内容は、もちろん面白かったのですが、同時に「まだ表面的な部分しか知らないな」という感覚もあって。このままだと、何となく中途半端なまま社会に出てしまう気がしたんです。
それで、3回生になり、周りが就職か進学かを考え始めるタイミングで、自分自身がもう少し納得できるまで学びを深めてみようと思い、大学院への進学を選びました。

CareerDesign_Shimodasan_2
<気液界面法によりMOF薄膜を合成している様子>

Q 本学での学びや経験が、就職活動で活きたと感じる場面があれば教えてください。

一つは、キャリア支援室で過ごした時間です。職員の方との対話を通して、自分のキャリアとどう向き合うべきか、考え方の軸を学ぶことができました。このプロセスがあったからこそ、自分の将来についてここまで深く考えることができたと思いますし、この経験で得た考え方は、今後の人生でも大切にしていきたいと思っています。
そしてもう一つは、研究室で培ったスキルです。研究活動で身につけた探求心はもちろん、先生から厳しく指導いただいたパワーポイントの資料作成スキルは、就職活動で大きな自信になりました。ある面接官の方から「このパワーポイントが作れるなら、どこでもやっていけるよ」と言っていただけたことは、今でも忘れられない、自分の中でのちょっとした自慢です。
キャリアについて深く考える時間と、大学生活を通して身につけたスキル。この大学で得た知識と経験が、自信を持って就職活動を進める支えとなりました。

Q 就職活動を振り返って、「これはやっておいて良かった」と思うことはありますか?

まず、キャリア支援室に通ったことです。キャリア支援室は、単なる就活テクニックを学ぶ場ではなく、これからの人生をどう豊かにしていくか、その本質を考えるきっかけを与えてくれる場所でした。これがなければ、就職活動を通して得られた多くの出会いや学びも、ずっと少ないものになっていたと思います。
次に、積極的に会社の人に話しかけたことです。説明会や面接の場で、臆せず質問し対話することで、パンフレットだけでは分からないリアルな情報を得られました。また、この姿勢が多くの企業で評価されていたと感じています。お話する中で、そんなところまで見ていただいていたのか、と感じることもありました。
他には、移動時間や隙間時間を活用しオーディブルでビジネス書を聴いたことです。社会人としての基礎的な考え方や知識を効率的にインプットでき、大きな自信に繋がりました。さらに、ビジネス書を通じて、これまで自分が漠然と経験してきたことや考えてきたことが社会人として共通の言葉で表現できるようになり、面接の場で自分の考えを的確に伝えられた結果、企業の方から高い評価を受けることがありました。履歴書の趣味欄に「オーディブルでビジネス書を聴くこと」と書いたことで、人事の方との会話が弾むきっかけにもなり、面接の場を和ませる上でも非常に有効でした。

CareerDesign_Shimodasan_3.png
<保護者向け就職説明会登壇の様子>

Q インターンシップに参加してみて、どんな経験を積むことができましたか?

インターンシップは、まさに未知の土地や人との出会いの連続でした。それは単なる旅行とは全く違い、自分の人生観を見つめ直し、「なりたい自分」の輪郭を探る、刺激的な経験となりました。
中でも、自身の働く環境について深く考えるきっかけとなったのが、訪れた場所ごとに感じた雰囲気の違いでした。中国地方では、社員の方に毎日のように食事や海へ連れて行っていただき、温かな交流を通して、これまで知らなかった穏やかな地方暮らしを肌で感じました。一方で、東京・品川では約10日間を過ごし、大阪でも見たことがないほどの人が駅から絶え間なく出てくる光景に衝撃を受けました。業務後にシェアサイクルで巡った東京の街並みは、大都市ならではのエネルギーに満ちており、今でも良い思い出です。 こうした対照的な環境に身を置いたからこそ、「都会過ぎず、田舎過ぎない場所で暮らしたい」という、自分の働き方や生き方に対する具体的なビジョンが明確になりました。
そして、場所以上に刺激的だったのが「人との出会い」です。
特に印象深いのは、プロジェクトマネジメントのインターンで出会った学生です。多くの参加者が「マネージャー職に興味がある」というレベルに留まる中、彼は明確に「経営者」を志し、すでに専門資格「PMP」の勉強を進めていました。その高い視座と行動力は大きな刺激となり、自らも学び始めるきっかけになりました。

Q 就職活動で得た、これからの社会人生活でも大切にしたいと思っていることはありますか?

たくさんありますが、その中でも特に「4つの学び」を大切にしたいと思っています。
まずは、自己成長を続ける姿勢。第一線で活躍されている方は、例外なく仕事の時間以外でも自分の時間を見つけて勉強されていました。「与えられた仕事+α」で、常に自分なりの課題意識を持って取り組む姿勢こそが成長に繋がるのだと痛感しました。
2つ目は、チャンスを掴む準備と勇気。「チャンスがあれば、選り好みせず何でも経験してみること」、そして「そのチャンスに備えて、日頃から準備しておくこと」。自ら手を挙げて挑戦するためにも、日頃から自身の能力を磨き続ける必要があると感じました。
そして、3つ目はジェネラリストになるための意識。上司や部下だけでなく、全く違う職種や部門の方とも積極的にコミュニケーションをとり、自分が直接経験できない業務の知識を吸収することで、より広い視野を持つジェネラリストに近づけると考えています。
最後は、優れたリーダーの共通点になりますが、「リスペクトとパッション/ビジョンとロジック」といった、一見相反する要素のバランスを大切にするということです。
この姿勢は、今後の私の指針になると感じています。

CareerDesign_Shimodasan_4

Q これから就職活動を始める後輩たちに、アドバイスやメッセージをお願いします。

まず一番に伝えたいのは、今の就職活動は若さの価値がインフレしている時代なので、皆さんが思うほどガチガチに身構えなくても大丈夫だと思います。企業は、完成されたスキルや経験よりも、皆さんのポテンシャルや学習意欲にものすごく期待しています。だからこそ、就職活動にこうすれば絶対にうまくいくという唯一の正解はありません。これは、戦略やタイミングも人それぞれ、という意味です。早くからインターンに参加して自分に合う企業を探すのが向いている人もいれば、ギリギリまで研究や学業で圧倒的な成果を出し、それを武器にするのが向いている人もいます。また、人によって「良い会社」の定義は全く違います。大切なのは、周りに流されることなく、自分なりの戦略と価値観を持って就活を進めることだと思います。…とはいえ、「自分なりの戦略ってどう立てるの?」と不安になると思います。もし、少しでもそう感じたら、何もわからないままでいいので、迷わずキャリア支援室へ行ってください。キャリア支援室は、皆さんが自分だけの答えを見つけるための、最高のスタート地点になってくれます。