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2025年12月19日
- 卒業生
- 経済学
社会で活躍する先輩方へインタビュー「話すこと、伝えること」/林 マオさん(読売テレビ・アナウンサー)
大阪府立大学を2008年に卒業、同年、読売テレビ放送株式会社にアナウンサーとして入社し、『ミヤネ屋』のアシスタントなどとして多くの視聴者に愛されてきた林 マオさん。現在は『サタデーLIVEニュース ジグザグ』、『かんさい情報ネットten.』『草彅やすとものうさぎとかめ』などの番組でMCやサブキャスターリポーターとして活躍されています。そんな林さんに、アナウンサーとして「話すこと・伝えること」にどのように向き合ってきたのかを伺いました。

「伝える仕事」の魅力を教えてください。
とてもありきたりに聞こえるかもしれないのですが、人と人をつなぐ役割があるところが魅力だと思います。番組で自分の言葉を届けることで、視聴者と想いを結び、誰かの一日を少し明るくできる瞬間があります。実際に「元気をもらった」とか、「紹介されていた場所に行きたいと思えた」、「一日頑張ろうと思えた」そんな声をいただくと、言葉が人の心を動かし、笑顔や希望をつなぐ力になることを実感し、この仕事をしていて本当に良かったと思います。
アナウンサーのさまざまな仕事の中でも、特にナレーションの仕事にやりがいを感じています。VTRの内容に合わせてトーンやテンション、声色、言葉選びを工夫することで、爽やかさや空気感を演出し、視聴者により深く内容を届けることができると考えています。そのために自分なりに研究してVTRに合った表現を探り、映像の邪魔をしないように、でも控えめにしすぎない絶妙なバランスを目指しています。
その結果、視聴者の方から嬉しい感想をいただくと、「伝わった」と実感しますね。
印象に残っている現場や番組を教えてください。
どの番組も大事で楽しく思い出深いのですが、ターニングポイントになったのは、2025年春まで放送していた『今田耕司のネタバレMTG』というバラエティ番組ですね。この番組は、MCが今田 耕司さんと月亭 八光さん、そして私の3人で、ゲストの方々と最新ニュースなどについてトークするものでした。これまでアナウンサーというのは、原稿を的確に正しく伝えることが一番大切と思っており、自分の気持ちや感想を表に出す機会はあまりありませんでした。ですが、この番組では、私の感想を今田さんが聞いてくださる機会があり、私がポロっと発した言葉を拾って話を広げてくださったり、私の意見も参考にしてくださったり。それ以降、自分の意見を考えるようになり、発言する機会はなかったとしてもそこから派生する質問や疑問をゲストや司会者の方にぶつけることができるようになったと思います。

ワークライフバランスを保つために意識していることはありますか?
テレビマンですが、敢えて意識的にテレビを消すことですかね。テレビがついていると「どんな話をしているのだろう」「どうやって話を振るのだろう」と、つい仕事スイッチが入ってしまい、休まらないので休暇で自宅にいるときは、仕事のことを忘れてリラックスできるよう、テレビを消して静かな時間を過ごすようにしています。普段は無意識のうちに、ついテレビをつけてしまうので、オンとオフのメリハリを保ち、心身のバランスを整えています。
若手の頃と今で、仕事への向き合い方に変化はありますか?
若い頃は自分の振り返りばかりでしたけど、今は後輩の仕事もチェックしたり、番組を見て声をかけたりします。昔は「自分の仕事をちゃんとやらなきゃ」「どう評価されるのだろう」と、余裕がなかったこともあり、自分のことばかり考えていました。でも今は、周りの人がどうやったら仕事をしやすくなるかなど、周囲の働く環境も含めて気を配れるように少しはなったと思います。視野が広がった感じですかね。後輩を見ていると、自分も初心に戻ることができ、新たな気づきもあります。
新人当時のご自身に、今伝えたいことはありますか?
常に「感謝を忘れないでいてほしい」ですかね。昔も感謝していなかったわけではないですが、今思うと全然足りていなかったなと思います。アナウンサーは表に立つ仕事ですが、その裏でどれだけ多くの人が時間や力を注いでくれているのか。営業さんがスポンサーを探してくれたり、番組のために知恵を絞ってくれたり…その背景に思いが至っていなかったなって。今年6月に運営リーダーを務めた『ytv学生アナウンスコンテスト 』に携わった時に本当に実感しました。だから昔の自分に「浅い感謝じゃダメだよ、一人一人にちゃんと伝えて」と言いたい。これからもその気持ちは忘れずにいたいです。
読売テレビのアナウンサーだからこそできたお仕事には、どのようなものですか。
『ミヤネ屋』を担当した経験でしょうか。担当をはじめた当時、関西発で全国にニュースを発信する帯番組はほとんどなく、月曜から金曜まで生放送で情報を届ける番組は『ミヤネ屋』くらいでした。大阪から全国に向けて最新情報を一番に届けるという役割は、読売テレビならではの貴重な機会であり、他局ではなかなか得られない経験だったと思います。
番組作りの中で、アナウンサー発のアイデアが形になった経験はありますか。
アナウンサーの発想が番組作りに反映される場面として、中継現場での経験が挙げられると思います。ディレクターが事前にリサーチし、台本や流れを準備してくれますが、現場に入ると状況に応じて柔軟な対応が必要になります。「どうすれば視聴者に一番わかりやすく伝えられるか」を考え、順番の変更や見せ方の工夫を提案します。例えば、視聴者が最初に興味を持つポイントを優先するよう意見を出し、ディレクターやカメラマンと相談しながら構成を調整します。こうしたやり取りを通じて、アナウンサーのアイデアが反映され、より伝わりやすい内容に仕上がっていくと考えています。
アナウンサーも制作も、方法は違えど「伝える」ことが仕事だと思います。それぞれの強みはどのようなところにあると感じますか。
アナウンサーの強みは、テレビ画面に登場し、自分の言葉で視聴者に訴えかけられる点です。顔を見せることで信頼を得たうえで発する言葉は、説得力を持ち、視聴者に強く響かせることができると思います。
一方制作スタッフの強みは、チームでアイデアを出し合い練り上げることで、より面白く、伝わりやすい内容を作り上げられる点ではないでしょうか。ディレクターやプロデューサーなど多くの人の知恵が加わることで、一人では考えられなかったような企画や構成が生まれ、何倍も面白い番組を届けることができると思います。
テレビ局の中でも、最終的に読売テレビを選ばれた理由をお聞きしたいです。
読売テレビを選んだ理由といいますか、選んでもらったと感じているので・・・、読売テレビに入社できたのは「縁」によるものが一番大きいと感じています。キー局の就職試験を受け、最終面接まで進んだものの不合格となり、自信を失った時期もありました。しかし、その後関西での就職活動を進める中で、絶対無理だと思っていた読売テレビから内定をいただくことができました。タイミングやそのときの会社の採用方針など、本当にその時の偶然や運が重なった巡り合わせ「縁」だったと思います。
最後に、学生や高校生にメッセージをお願いします。
やりたいことや、なりたい姿がある人は本当に素晴らしいと思います。就職活動やタイミングに左右されることはありますが、その思いは、何よりも大切にしてほしいと思います。
一方で、まだ「やりたいことが見つからない」という人も焦る必要はないと思います。自分を知るために、昔の友達や先輩に会って話を聞いてみる、興味があることを言葉にして、周りに伝えてみる。それだけで、世界は少しずつ広がります。言葉には力があります。口に出したことが、いつの間にか現実になっていることもあるものです。
気になることや人がいれば、「やってみたい」「会ってみたい」と声に出してみてください。人と話し、行動し、イメージを膨らませることで、未来は形を取り始めます。自分探しは一人で悩むより、身近な人に話してみることが大切だと思いますよ。