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2025年12月24日

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給食経営管理実習レポート/実習に挑む学生たちにインタビュー

「給食経営管理実習」とは
給食運営について実践的に学ぶため、学生がグループで協力して食事提供を行う実習です。学生が作成した献立に基づき、食材の発注や生産・作業・衛生管理などを通じて、給食利用者の栄養管理を目的とした食事を提供します。 この実習は、生活科学部食栄養学科3年生が受講しています。今回の実習では、学生が献立作成から食材の発注、調理まで全て行い、職員や教員などの関係者に実際に販売・提供しました。事前に下処理担当、調理担当、指示(管理栄養士)担当に分かれ、それぞれの作業を行います。実習当日は、朝から準備を開始し、12時の受付開始を目指して、調理が行われました。受付開始後は、来場者に給食を提供し、来場者が退出後は、実際に履修学生たちも実食し、実習の振り返りを行いました。

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今回は、下処理、調理、管理栄養士役として指示を担当した学生6人に、実習の感想や取り組みについてお話を伺いました。

PROFILE

坂口 綾音(さかぐち あやね)
土田 真央(つちだ まお)
川﨑 涼子(かわさき すずこ)
角野 なづな(すみの なづな)
大谷 陸永(おおたに りくと)
瓶子 乃彩(へいし のあ)

  • ―生活科学部栄養学科3年生―

    ※所属・学年は取材当時

髙橋 孝子准教授 
川上 由紀子講師

  • ―生活科学部 教員―

Q 今回の下処理で一番難しかった作業や工夫した点は何ですか?

リハーサルでは40食分の調理でしたが、本番では101食分を作る必要があり、野菜の量などが大幅に増えたことが大変でした。さらに、衛生面の管理が非常に厳しく、生ものである肉や魚を扱う際は野菜と同じ場所で調理できないため、部屋の中でも作業場所を変える必要がありました。そのため、誰がどの作業をいつどこで行うか動線を明確にする必要があり、工程表や作業指示書を作成しました。
調理工程では、野菜の下処理が効率よく進むような工夫も行いました。例えば、野菜は不要な部分を落とす大まかな処理をしておき、細かい切り方は後の工程でまとめて作業するようにしました。

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Q 下処理を終えた後、次の工程にスムーズに進めるためにどんな準備をしましたか?

大量の野菜を一度に処理するため、工程表を確認しながら優先順位を整理しました。リハーサルで時間や人数を確認し、本番に向けて工程表を改善。さらに、グループで作業を進めるため、切り方の写真を貼るなど誰にでも分かりやすい指示を追加しました。
器具の受け渡しにも衛生ルールがあり、なるべくトレイを使って次の工程に渡すなど、細かな工夫を重ねながら作業を進めました。

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下処理作業を担当した坂口さん(左)、土田さん(右)

Q 加熱や冷却の温度管理はどのように確認しましたか?

加熱時の中心温度は必ず測定することが求められています。しかし、測り忘れが起きやすいため、管理栄養士担当が用意してくれた工程表には中心温度を記録する欄が設けられ、忘れないようにマークもされています。さらに、管理栄養士班の担当者が隣で声をかけてくれたことで、その都度温度測定を徹底することができました。こうした取り組みにより、決められた調理時間の中でも温度管理を確実に行うことができました。

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Q 調理工程を進めるうえで、時間配分や段取りで工夫したことはありますか?

時間配分は難しい場面もありましたが、基本的に管理栄養士の指示に従って作業を進めています。必要に応じて「一旦この作業を止めて、先にこちらをお願いします」といった指示があり、その都度対応する形です。調理担当は目の前の作業に集中し、指示に合わせて柔軟に動くことが求められます。
一方で、空き時間には洗い物や調味料の計量など、次の工程に備える作業を自分たちで考えて進めています。こうした工夫により、全体の流れをスムーズに保つよう努めました。

Q 仕上がりの味や見た目を良くするために意識したことは何ですか?

スープの場合は器の端にスープが付着しやすいため、提供前にしっかり拭き取り、見た目をきれいに整えました。さらに、彩りにも配慮し、赤い野菜などを適切に盛り付けることで、全体のバランスを保つようにしました。例えば、特定の皿にパプリカが偏らないよう、盛り付けの際に注意を払い、均等に配置することを心がけました。

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Q 衛生面で気を付けていることはありますか?

衛生管理については、非常に厳しく指導が行われており、手洗いのタイミングは私たちの意識だけでなく、管理栄養士が作成する工程表にも「ここで必ず手洗いを行う」と明記されています。また、手袋を交換するタイミングなども細かく決められています。他にも、食材をラップせずに放置する時間がないように注意し、衛生面を徹底しています。また、野菜などの洗浄は3回行う決まりがあり、専用のシンクや消毒水を使うなど、衛生管理を徹底しました。

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調理を担当した角野さん(左)、川﨑さん(右)

Q 献立や調理工程を計画する際に、どのような点を重視しましたか?

今回のメニューは中華料理で、油や塩分が多くなりがちなため、豚肉の部位や調理方法に工夫を凝らし、できるだけヘルシーに仕上げることを意識しました。また、献立を立てる際にカルシウムが不足していることが分かり、中華料理では珍しいミルクスープを採用し、さらに小松菜を加えることでカルシウムを補いました。栄養価計算には専用ソフトを活用し、食材や分量を工夫しながら、栄養素のバランスを整えました。また、予算が550円で設定されており、その範囲内で食材のバランスを考えながら発注をするよう工夫しました。

Q 衛生管理や食中毒予防のためにどのような指示や確認を行いましたか?

調理では、中心温度をしっかり確認しながら肉や野菜を加熱し、盛り付け時には手袋をこまめに交換するなど、衛生管理を徹底しました。特にインフルエンザが流行する時期だったため、メンバーの体調に合わせて担当作業を調整するなど、臨機応変に対応しました。作業要員が足りない部分は下処理担当のメンバーで作業を補うなど、グループ内で協力して進めました。
また、リハーサルでは管理栄養士班は指示を出す役割でしたが、本番では人手不足のため調理にも加わり、レシピの知識を活かして作業を進めました。

Q 安全面で特に注意したポイントは何ですか?

調理中は安全面を意識し、包丁や熱いものを運ぶ際には「包丁通ります」「熱いもの通ります」と声をかけ、手で直接運ばず台車を使うなどの工夫をしました。リハーサルの段階で先生から「危険な場面では声を出すように」と指導を受けていたため、本番でも全員が意識して取り組み、安全に作業を進めることができました。

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Q 他の担当者に指示を出す際に心がけたことは何ですか?
 チーム全体の作業を円滑に進めるためにどんな工夫をしましたか?

チーム全体ではリーダーやサブリーダー以外のメンバーも積極的に動いてくれたため、スムーズに作業が進みました。サブリーダーとしては、受付業務を率先して担当し、食券の管理について責任を持って行いました。指示役の中でも各々の役割を全うし、全体のバランスを見て作業を進めることを意識しました。こうした工夫と協力により、安全で効率的な運営が実現しました。

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Q 給食経営管理実習の経験で、今後の臨地実習に生かしていきたいことを教えてください。

今回の実習を通して、まず意識したのは安全面です。危険を回避するための声かけはどの場面でもできることだと考えました。包丁や熱いものを運ぶ際には、相手にしっかり伝わる声量で「通ります」と声をかけることを徹底し、今後もどの実習先でも継続して意識したいと思います。
また、調理過程では認識の違いが起こりやすいと感じました。そのため、作業中に都度確認を行い、ズレが生じないようにすることが重要だと学びました。こうした基本的な安全対策とコミュニケーションを意識することで、よりスムーズで安全な作業を目指したいと考えています。

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管理栄養士役として指示を担当した(左)瓶子さん、(右)大谷さん

実際に給食を食べた方からの感想

・彩りがとてもきれいで、味も美味しかった。
・お野菜もたくさん摂れて食材のバランスも良く、健康的だと感じました。

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<担当教員からのコメント>

学生たちは、限られた時間の中で協力しながら一つひとつの作業に真剣に取り組んでいました。 完成したものを食べてもらって他者から評価を受けるという初めての状況で、自分が作って「美味しい」と感じるだけでなく、給食の利用者に評価されることを目指して努力していたと思います。一方で、作業時間の見積もりや進行管理など、実際の給食運営に近い場面ではまだ難しさも多く、苦労があったようです。全員が時間内に仕上げることについては、非常に大変だったという声がありました。特に今回は、インフルエンザや体調不良による急な欠員も発生し、急遽担当を交代する必要がありました。工程が思い通りに進まない場面もありましたが、臨機応変に対応し、無事に時間内に提供までやり遂げたことは大きな経験になったと思います。

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川上 由紀子講師(左)、髙橋 孝子准教授(右)