主な研究内容

研究方針

当教室では、「疫学の利剣で人々の健康を守る」ことをキャッチフレーズとして、研究活動を行なっています。したがって、当教室の研究活動を支える疫学を十分に習得することが、研究の原点となります。疫学は臨床研究や基礎研究に広く応用可能であることから、現在、当教室で実施している研究内容は多岐にわたっています。先代の教授が築いてこられた研究基盤のみならず、日々、必要とされる新たな研究課題にも積極的に着手し、様々な疾患を対象とした疫学研究に取り組んでおります。

主な研究テーマ

予防接種・ワクチン

厚生労働科学研究費補助金「ワクチンの有効性・安全性評価とVPD 対策への適用に関する分析疫学研究」に参画し、「小児におけるインフルエンザワクチン有効性モニタリング調査」、「妊婦におけるインフルエンザ健康影響に関する調査」、「百日咳ワクチンの有効性を検討するための症例対照研究」、「高齢者肺炎に対するインフルエンザワクチン・肺炎球菌ワクチンの有効性を検討するための症例対照研究」を実施しています。

また、厚生労働科学研究費補助金「子宮頸がんワクチンの有効性と安全性の評価に関する疫学研究」に参画し、安全性研究の一環として全国規模の実態調査を実施することとなりました。子宮頸がんワクチンについては、ワクチン接種後に広範な疼痛や運動障害を伴う有害事象が報告されたことから、積極的な接種勧奨は差し控えられたままとなっており、重責を担う研究であると考えております。

難病

特発性大腿骨頭壊死症、難治性炎症性腸管障害、門脈血行異常症、新生児特発性腸穿孔など、個別疾病を対象とした厚生労働省研究班・AMED研究班に所属し、全国規模の調査を実施しています。また、難病研究に従事する疫学者で構成する「難治性疾患の継続的な疫学データの収集・解析に関する研究班(旧、特定疾患の疫学に関する研究班)」に参画し、特発性大腿骨頭壊死症、難治性炎症性腸管障害、門脈血行異常症に関する全国疫学調査や当該疾患の病因を検討するための症例対照研究を実施しております。

肝疾患

本学肝胆膵内科、肝胆膵外科の先生方と共同で、「C型肝炎に対する抗ウイルス治療後の予後に関する疫学研究」を実施中です。このほか、これまでに本学肝胆膵内科の先生方と共同で実施した「C型肝炎ウイルス感染者の予後に関するコホート研究」や「非アルコール性脂肪性肝炎の予後に関するコホート研究」についての解析を行い、患者の予後改善のために有用な生活習慣に関する情報を発信すべく邁進しております。

骨関節疾患

過去に、廣田名誉教授が参画していた厚生労働科学研究費補助金・長寿科学総合研究事業や日本整形外科学会プロジェクト研究のデータを基に、特に変形性関節症(膝関節、股関節、脊椎)に着目した研究を行なっています。変形性関節症の症状重篤度や病期に関連する要因を明らかにし、患者のQOL向上に資することができればと考えています。

地域に密着した健康格差研究

社会経済学的要因に基づく健康格差は、検診などの健康関連行動を変容させ、疾病の罹患や死亡に影響を与える可能性があると考えられています。そこで、文部科学研究費「肝炎ウイルス・がん検診の効果的な受検勧奨モデル:社会経済要因を踏まえた学際的研究」では、検診受検の関連因子としての健康格差に着目した検討を行なっています。また、地域住民を対象とした調査から、歯科疾患や心血管疾患の危険因子に対する健康格差の影響を検討しています。

臨床応用への取り組み

都市住民が直面する主要疾病を制御するために、疫学研究から得られた知見を、保健行政施策による予防や臨床現場での治療などに応用する過程が重要です。そこで、当教室では、疫学研究から得た結果を適切に解釈し、疾病の予防や治療を導く能力を習得できるような指導を行なっています。

また、各種の研究活動から得られた結果は、疾病の診療ガイドライン作成や国のワクチン施策にかかる資料として使用されています。