ACTIVITY REPORT
2026年4月1日
あの「ビスムート」病院(パリ郊外)留学記(新川 寛二)
2002年に大阪市立大学を卒業した新川寛二です
2026年1月末から3月までフランス・パリ郊外南部にあるPaul-Brousse病院のCentre Hepato-Biliaire Henri Bismuth に留学しました。Paul-Brousse病院は肝門部胆管癌のBismuth分類を作成したBismuth教授が、パリの大富豪から資金を集めて設立した病院です。教授は90歳を超えてなおご健在で、病院内には教授室が設けられています。

Paul-Brousse病院はヨーロッパで初めて肝移植を行った施設でもあり、世界中から多くの医師が手術見学に訪れています。手術は肝移植に加えて肝切除も多数行われており、特に肝門部胆管癌の症例が多い印象でした。石沢教授にご紹介いただいたEric Vibert教授はBismuth教授に師事されており、進行肝門部胆管癌に対しても積極的に手術を行っています。右三区域切除や左三区域切除を見学する機会を得ることができ、大変貴重な経験となりました。
また、私が東京大学勤務時代に共同研究で論文を執筆したDaniel Azoulay教授が、偶然にもPaul-Brousse病院へ異動されていました。当時、彼の部下であったChetana医師と私が共同筆頭著者で論文を執筆したことを伝えると、初対面にもかかわらず大変喜んでくださいました。Azoulay教授の手術はダイナミックでIn situ hypothermic portal perfusionを用いた肝切除(Ann Surg 2025 Nov 13)を初めて拝見した時の驚きは今も忘れることが出来ません。右3区域切除の際には、人工血管を用いて門脈・下大静脈シャントを作成し、外側区域の門脈から臓器保存液を潅流するという、日本ではなかなか目にすることのない手術を見学でき、非常に有意義な経験となりました。

さらに、Chetana医師とも再会し、彼が勤務するPitie-Salpetriere病院でも手術見学の機会を得ました。Chetana医師の手術に加え、母親として子育てをされながら第一線で活躍されているGoumard医師による肝門部胆管癌手術、Scatton教授による肝門部の腫瘤形成型肝内胆管癌に対するロボット支援下の右肝切除+リンパ節郭清+胆管・胆管吻合も見学しました。2つのハイボリュームセンターにおいて、第一線で活躍する外科医の手術を見学できたことは、自身の手術手技を見つめ直す非常に良い機会となりました。

研究面では、Eric Vibert教授の直属の部下であるNicolas Golse医師と共同研究を開始しました。肝細胞癌のデータベースをフランス語から英語に翻訳し、さらにフランス語の電子カルテからも情報収集を行いました。Left lateral sectionectomy(外側域切除)がフランス語ではlobectomy gauche(左葉切除)と表現されるなど、フランスにおける肝解剖の伝統と歴史を改めて実感しました。
また、熊本大学から研究留学されている松本医師にも大変親切にしていただきました。彼が所属するChronotherapy, Cancers and Transplantation Research Unitで行われているクロノセラピー研究は非常に印象的で、腫瘍細胞にも時計遺伝子が存在し、正常細胞とは異なる時間を刻んでいるという点に大きな驚きを覚えるとともに、この概日リズムの違いを利用したクロノセラピーの研究が行われていることにも強い関心を抱きました。今後、大阪公立大学とクロノセラピー研究所との共同研究に向けた足がかりを築くことができたことは、大変幸運であったと感じております。

2026年4月から准教授として勤務しております。フランス留学の機会を与えてくださった石沢教授に改めて深く感謝申し上げるとともに、本留学で得た経験と人脈を大阪公立大学肝胆膵外科に還元できるよう、今後も臨床および研究に邁進してまいります。
