教授からのメッセージ
大阪市立大学大学院医学研究科 ・ 病態生理学教室は、もともと第1生理学教室でした。![]()
昭和33年(1958年)から昭和48年(1973年)11月末まで、古川太郎教授が初代教授として教室を主宰され、昭和49年(1974年)4月から平成11年(1999年)3月末まで、松裏修四教授が主宰されました。 平成11年(1999年)7月から平成28年(2016年)3月まで渡邊恭良教授が主宰され、この間に大学院重点化伴いシステム神経科学教室と命名されました。 平成29年(2017年)4月から大谷が第4代教授として着任し、教室名を「病態生理学」として現在に至っています。
私は京都府立医科大学・医学部医学科を卒業し、消化器内科を中心とした内科研修を終了後、大学院博士課程に進学し、以降、基礎医学研究に従事してきました。 私が医学生だったころは、分子生物学がまさに開花しようとしていた時代であり、様々な分子の変化が、がんという異常な細胞の増殖を引き起こすことに大変興味を抱き、私は臨床医としてではなく基礎医学研究者としての道を歩み始めました。 大学院でがん抑制遺伝子の発現制御機構を学び学位を取得した後、イギリス・マンチェスター大学 Paterson Institute for Cancer Research(現:Cancer Research UK, Manchester Institute)という、がん専門病院に隣接する研究所に留学しました。その研究所で約5年間博士研究員として、細胞老化と呼ばれるがん抑制機構の作用機序の解明を目指した研究に従事しました。 そして、その研究成果を発表できたことで(Ohtani et al. Nature 2001, Ohtani et al., J. Cell Biol. 2003)、研究者としての喜びと、そしてもしかしたら研究者を続けられるかもという可能性を感じることができました。帰国後はそれまで行ってきた分子・細胞レベルの研究だけでなく遺伝子改変マウスを用いた個体レベルでの研究を行う必要性を感じ、マウス個体を用いた生体内分子のイメージングに挑戦し、この手法を用いて、がん微小環境における細胞老化の新たな役割について解明し、成果を発表することができました(Ohtani et al., PNAS 2007, Yamakoshi et al. J Cell Biol.2009)。
さらに最近では、腸内細菌代謝物の持続的な腸肝循環による暴露によって、肝がんの微小環境が変わることを見出し(Yoshimoto et al. Nature 2013, Loo et al. Cancer Discovery2017)、腸内細菌叢の役割について、精力的に研究を行っています。この間、病気・病態という動物個体の中で起こるマクロな現象をまず捉え、その原因については細胞レベル、そして分子レベルまで、その微細な変化を追求し、病態のメカニズムを証明していくという姿勢を学びました。そしてそれが現在の私の研究スタイルとなっています。
このたび、ご縁があって大阪市立大学大学院医学研究科の教員として着任させていただきました。基礎研究のデータだけでなく臨床研究における検証が重要視されるなか、着任後、さっそく臨床研究にも参加させていただいています。徐々にこのような研究内容に興味を持つ仲間が集まり、研究を推進しやすい環境が整ってきました。病態の解明に興味を持つ臨床医の先生方、基礎研究に従事される研究者のみなさん、そして研究を通して社会に貢献したいと希望される若い学生さんの基礎医学研究への参加を、心より期待しています。
2018.6.28(2020.6 追記) 大谷直子