1.ストレスバイオテクノロジーと微生物コントロール

微生物制御研究センターでは、食品や医薬の製造、医療、工業材料、諸環境で問題となる有害微生物の制御を目的とした基礎的および応用的研究を行っています。その制御方法としては、熱や放射線、超音波等の物理的ストレス、 さらには抗菌剤、活性酸素など殺菌に使われている化学的ストレス、さらには細胞自身のもつ自己分解酵素の活性化による生物学的ストレスを用いています。

  基礎研究では、これらのストレスが微生物細胞にどのような損傷を与え、死滅したり発育が抑制されるのかを解明します。とはいっても、微生物は生き物です。それに対して適応したり、損傷を修復して生存を図ったり、それに耐性を獲得したり、いろんな戦略を用いて対抗しますから、それを超える対策を開発しなければなりません。

  応用研究では、それらの制御条件の最適化を図ったり、2種類以上の手段を組み合わせて適用したり、あるいは新しい制御技術や方法を開発する努力を進めています。 微生物は私たちの目に見えないほどごく小さな生物ですが、地球上の至る所に生育し、高温、高圧、高塩、高放射線などの極限環境においても生育できる微生物も存在します。

  このようにさまざまな環境ストレスにさらされている微生物の適応応答機構を詳細に調べることにより地球上における生物の生体防御機構の進化の道筋が明らかになることが期待されます。同時に私たちの身の回りにいる様々な微生物をより効果的に殺菌、制御するための技術開発の基礎ともなるのです。

  私たちはこれらの研究を通じて微生物細胞の活動を自在に制御し、有害な微生物に対しては殺滅菌を行い、有用な微生物は育種し、人類に役立つ物質生産を行うバイオテクノロジーを構築することが夢です。

  またこれら のストレスを積極的にタンパク質などの生体材料に応用し、ガン細胞などを殺す(制御)するための抗ガン剤を体内で効率よくガン病巣に到達させるためのナノサイズ薬物送達システムや生体内の感染部位やバイオフィルムに抗菌剤を効果的に送り込むハイドロゲルの研究開発も行っています。 

SC