2. 放射線の医療器具滅菌への有用性と食品殺菌への実用化基礎研究-細菌芽胞とカビ胞子制御と損傷胞子の動態解析と併用処理効果
放射線殺菌は我が国では注射器やシャーレなど医療器具・実験器具類に汎用されていますが、食品にはまだ実用化されていません。しかし、50か国を超える諸外国では食品への適用が実施されており、我が国でも従来から香辛料の殺菌のほか、最近では生レバーでの大腸菌O157食中毒防止のための適用に強く期待がかけられています。
一方で食品や医薬品の包装容器の殺滅菌への放射線の利用は着実に進んでいます。私たちは、法律上放射線として扱われないほどの低エネルギーレベルの放射線(ガンマ線・電子線・粒子線・紫外線)を加熱や薬剤などとの併用によって相乗効果を生むことにより、実用化を図ることを考えています。この処理では、有効な殺菌効果の発現とともに対象の材質や食品の品質への影響も軽減できます。
放射線の殺菌作用には、放射線自体の直接的な作用と水分子の励起によって発生する間接作用があります。私たちは、その基礎研究として、芽胞やカビ胞子に対する放射線の作用メカニズムについて解析しており、発芽系・活性酸素防御系の酵素やタンパク質の遺伝子破壊株の利用により、その作用要因の追求を行っています。また、それら基礎的知見をもとに、他の処理との併用による最適な処理条件の導出を図ります。