3. 熱ストレスによる微生物の損傷、修復、応答機構の解析

 加熱殺菌では、食品品質の低下を極力抑制しつつ、目標のレベルの殺菌効果を得る努力がなされます。しかし、微生物の耐熱性が種々の因子の影響を受けて変動し、その要因が解明されていないために、現行の殺菌条件設定理論は信頼性が低く、実際には試行錯誤的あるいは経験的に決定されることが多いです。

 微生物制御研究センターでは、これまで細菌の栄養細胞の耐熱性が加熱前の予備保温温度と昇温速度の違いによって大きく影響を受けることを明らかにしています。この現象に基づき、実際の加熱工程では、非定温プロセスにおける耐熱性変動の影響を考慮した殺菌理論の構築を目指しています。

 一般に行われる殺菌条件では、損傷菌が発生しており(右下図参照)、殺菌の成否や程度は加熱後の損傷菌の回復条件に依存します。この回復過程ではいわゆる細胞の熱ショック応答が作動し、細胞膜の損傷回復も行われます。これらの機能解明は、殺菌条件の設定やプロセスの殺菌評価に基礎的な知見に貢献します。

 当研究室では、大腸菌をモデルに、加熱過程における細胞の耐熱性変化と応答、とくに細胞膜損傷、低分子熱ショックタンパク質の動態と機能を生理学的、分子生物学的に解析しています。

 またこれらの生理学的知見をもとにした細胞の耐熱性変動要因を明らかにし、より緻密な加熱殺菌理論の構築を目指しています。

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