実験装置

光物性の実験について

当研究室で行っている光物性の実験は,レーザーなどの光を当てて物質の光応答を調べることによって,物質中の電子や格子振動(フォノン)がどのような性質を持つか,どんな振る舞いや変化を起こすかを調べます. 対象となる物質や現象によって,測定に必要なレーザーや光学系が違います.実際の実験ではこれら装置を組み合わせて工夫することによって様々な物性にアプローチしており,研究対象に応じたオリジナルの光学測定装置を開発しています.

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超短パルスレーザー

固体中の電子や格子の応答は非常に速く,ピコ秒(10-12s)から更に速いフェムト秒(10-15s)の時間スケールで変化が生じます.このような超高速のダイナミクスを測定したり,制御を行うために超短パルスレーザーを用います.当研究室では30~100フェムト秒のパルス幅を持つチタンサファイアレーザー(3台)を駆使して,これらの研究を行っています.

図1 

UVレーザー

見た目に透明な物質は電子が光を吸収できるエネルギー幅(バンドギャップ)が大きな物質で,可視光のエネルギーでは電子を励起することができません.このような物質を分光測定する場合は紫外線(UV)レーザーを用いる必要があります.当研究室では,UVレーザーを用いてCuClなどワイドギャップ半導体の応答や,シンチレーター材料であるアルカリハライド結晶(NaCl, KBr等)中の不純物中心(金属イオン)を光励起し,その応答を調べています.また所有しているエキシマーレーザーとDPSSレーザーはQスイッチ型のパルスレーザーであり,ナノ秒(10^-9)の時間変化,電子状態のダイナミックスを見ることも可能です.

図2  

クライオスタット

物質中の電子状態は非常に繊細であるため,格子振動(フォノン)が大きいと容易に乱されてしまい,うまく測れません.そこで,サンプルを冷やすことによって格子振動を抑える必要があり,実験ではクライオスタットと呼ばれる冷却装置で極低温(液体ヘリウムの温度,約4K)まで冷却します.当研究室では大きく分けて2種類のクライオスタットを用います.一つは液体ヘリウムを真空ポンプで流しながら直接冷却する,Heフロー型クライオスタットで,液体ヘリウムを使用するため大掛かりですが,サンプルを冷やすヘッド部分はほとんど振動しないため,精度の良い光学実験ができます.もう一つは,ヘリウムガスの断熱膨張を利用して冷却する閉サイクル型の冷凍機です.液体ヘリウムを使用せずに実験できるメリットがあります.

図3_ 

分光システム、検出系

固体から得られる光を最終的に調べるときに,分光器と検出装置を使用します.分光器は,光を波長ごとの強度に分けた分布(スペクトル)を得ることができます.当研究室では様々な分光器を用いますが,大きいものでは1mくらいの超焦点の分光器もあります.また,検出器も様々なものを用います.非常に微弱な光からスペクトル信号が得られる電子増倍CCD(EMCCD)や,光子一つずつを数える単一光子検出器,ナノ秒のスペクトル時間変化を追えるストリークカメラなどがあります.

図4

真空蒸着器

高真空(10-7Torr)中で物質を融解・昇華,蒸発させて基板に付着・堆積させる方法を真空蒸着法と言います.

真空蒸着器を用いると,半導体や誘電体の薄膜をナノメートルの精度で膜圧を制御して作製することができます.当研究室では,特に誘電体多層膜によって形成されるナノサイズの高反射率の鏡(分布ブラッグ反射鏡)で半導体をミクロなサイズに挟んだ半導体微小共振器を作成しています.

図5