研究
獣医免疫学教室では、寄生虫を研究対象として、時には、免疫学、分子生物学、公衆衛生学対象、微生物学にも関連する研究活動を行っています。寄生虫は、外界では様々な環境下、宿主体内でも免疫系をはじめとする過酷な環境下で、必死に生きているといえます。寄生虫は、非常に興味深く、謎多き生き物です。しかし、一方で、ヒトや動物に対し、下痢や血便等、致死性の消化器症状を引き起こします。そのため、ヒトや動物をまもるため、寄生虫の生物学、生態学にアプローチし、その防除方法の開発を目指しています。特に、当研究室では、消化管寄生原虫に特化して研究活動を行っており、国内でも希少なラボです。興味を持たれた方はぜひ、当ラボにお越し下さい。
研究対象とする消化管寄生原虫
Cryptosporidium spp. (クリプトスポリジウム)
Eimeria spp. (アイメリア)
Entamoeba spp. (エントアメーバ)
Acanthamoeba spp. (アカントアメーバ)
【当教室の現在進行中の研究テーマ】
〇クリプトスポリジウム原虫
1. クリプトスポリジウム原虫の細胞培養系の構築および薬剤評価系のハイスループット化への挑戦
2.クリプトスポリジウム原虫のマウス感染実験モデルの構築
3.クリプトスポリジウム原虫の不活化法の開発
4.クリプトスポリジウム原虫の全ゲノム比較解析による宿主特異性および病態関連遺伝子の特定
〇アイメリア原虫
1.アイメリア原虫の増殖期別の殺虫評価法の構築
2.アイメリア原虫の有用細菌による感染防除法の開発
3.鶏アイメリア原虫の国内の分布疫学調査および生産性評価
〇二ホンライチョウ保全活動
(共同研究機関;中部大学、東京理科大学、岡山大学、環境省、茶臼山動物園、那須どうぶつ王国、富山ファミリーパーク、農研機構他)
1.ライチョウが高率に感染しているアイメリア原虫の病態解析
2.ライチョウが摂取する高山植物由来の抗アイメリア化合物の創出
3.ライチョウが保有する乳酸菌の抗アイメリア作用の解明
4.人工繁殖ライチョウの野生型腸内環境の構築による生息域内復帰個体の創出
〇国内の野生動物、特に外来哺乳類の消化管寄生原虫の分子疫学
1.外来種ヌートリアの消化管寄生虫の分子疫学および繁殖分布と糞口接触のリスク評価
2.野生げっ歯類のアイメリア原虫の伝播戦略および病態解明
〇海外研究機関との共同研究 (インドネシア、バングラデシュ、ミャンマー、フィリピン、タイ)
1.家畜における消化管寄生虫の分子疫学調査および病態解析 (国立研究革新庁(BRIN)、アイルランガ大学: インドネシア)
2.天然植物由来の抗原虫作用を有する化合物の同定 (国立研究革新庁(BRIN)、セベラスマレット大学: インドネシア)
3.インドネシア島国における哺乳類を中心とした野生動物の寄生虫層の解明 (国立研究革新庁(BRIN)、ウダヤナ大学: インドネシア)
4.インドネシアの肉養鶏の生産性向上のための原虫対策および効果判定 (国立研究革新庁(BRIN)、Zoetis : インドネシア)
5.地域固有鶏のコクシジウム耐性評価および機序の解明 (バングラデシュ農科大学:バングラデシュ)
6.像に寄生する吸虫類の形態学的および分子系統解析 (ミャンマー獣医科大学:ミャンマー、帯広畜産大学)
7.フィリピンへのアイメリア原虫の簡易定性および定量評価法、そして分子同定法の導入および実用評価 (フィリピン大学)
8.国内におけるクリプトスポリジウムの分子疫学調査および候補化合物の評価試験 (カセサート大学 : タイ)
〇全国で発生する消化管寄生原虫感染症に対する診断および対策
1.国内の都道府県、特に家畜保健衛生所やNOSAIの先生方と共同診断および試験そして対策の提案
(家畜等を中心として、専門性の高い原虫の検査診断を無償で受け入れ、各種助言や現地での講演や実習等も行っております)