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2026年5月22日

日根野谷 先生と田上さんの研究成果がAppl Environ Microbiol誌に掲載されました。

AEM挿絵

<研究の背景>

現在問題となっている多くの感染症は、ヒトと動物の間でうつる「人獣共通感染症」です。食中毒もその一つで、野生動物や家畜・家禽が保有する病原体に汚染された食品を食べることでヒトに感染します。これらの病気は、同じ地球環境の中で生きる生物同士の関わりの中で起こるため、その制御には、病原体が自然界でどのように暮らし、環境や生き物とどのような関係を持っているのか、つまり病原体の生態を理解することが重要です。

アルバーティ細菌(学名:Escherichia albertii)は、2003年に新種として登録された病原細菌です。まだ認知度は高くありませんが、世界各地で本菌による食中毒が報告されており、日本では少なくとも11件の集団食中毒が確認されています。一部の株は腸管出血性大腸菌O157の主要病原因子である志賀毒素を産生することから、高い病原性を有すると考えられています。こうした背景から、本菌は公衆衛生上の新たなリスクとして注目されています。

 自然界では、アライグマをはじめとする特定の野生動物が本菌のリザーバー(自然宿主)としての役割を担っています。これらの動物が排泄物を通じて家畜や家禽、農作物を本菌で汚染し、ヒトに感染する可能性が指摘されています。しかし、実際にどのような経路で汚染が生じるのか、具体的なことは分かっていません。

 本菌の自然宿主の一つであるアライグマが水辺を好んで行動する特性を持ち、また過去に発生した集団食中毒の中には、水や農作物が原因と推定された事例が複数含まれます。これらのことから、環境水が野生動物とヒトをつなぐ感染ルートになっているのではないかと我々は考えました。そこで本研究では、これらの仮説を検証するべく、同時期・同地域において野生アライグマと環境水(主に河川水)の汚染状況を調査し、分離した菌株について全ゲノム配列に基づく高解像度の比較解析を行いました。

 そして、アルバーティ細菌が環境水中に高率に存在すること、アライグマを含む野生動物によって環境水が本菌に汚染されている可能性があることを初めて明らかにしました。


<わかったこと>

■ アルバーティ細菌が環境水中に広く分布

 大阪府内8水系中6水系(75%)、64サンプル中49サンプル(77%)において本菌が検出されました。陰性となったサンプルが冬季にサンプリングされたもので、アライグマの保菌率も冬季から春季にかけて低下する傾向と一致していました。


相変わらずアライグマは高率に保菌

 大阪府内で捕獲された野生アライグマ122個体から直腸スワブを採取し検査しました。その結果、68個体(56%)において本菌が検出され、過去の調査と同様に、アライグマが本菌を高率に保菌することが再確認されました。

※野生アライグマは害獣駆除対策として捕獲されたものであり、サンプルの採材には大阪府家畜保健衛生所の皆さまにご協力いただきました。

アライグマ由来株および環境水由来株の間で系統的関連性を持つ菌株が多数

 環境水およびアライグマから分離したアルバーティ細菌株について全ゲノムシークエンシングを行い、病原性や系統的な関連性を詳細に解析しました。その結果、両由来株ともに大きなゲノム多様性を示し、多様なアルバーティ細菌が存在することが明らかになりました(図2)。一方で、両者には系統的なオーバーラップが認められ、SNP数が20未満となる組合せが多数存在しました。

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