新規固体電解質の開発

高い導電率を示す固体電解質

メカノケミカル法、液相法、気相法、固相法などの様々な手法を用いて、新規固体電解質の開発に取り組んでいる。
特に、ガラスの結晶化プロセスを利用することによって、通常の手法では合成が困難なイオン伝導性に優れる結晶をいくつか見出した。
例えばLi7P3S11結晶が析出したガラスセラミックス(結晶化ガラス)は室温で10−3〜10−2 S cm−1の固体としては極めて高いリチウムイオン伝導度を有する。
固相反応では導電率の低い結晶(Li4P2S6およびLi3PS4)が得られるため、ガラス性液体から準安定相であるLi7P3S11を析出させることが重要となる。
またナトリウムイオン伝導体では、立方晶Na3PS4やNa3SbS4が高い導電率を示すことがわかっている。
これをベースに元素置換を行ったNa2.88Sb2.88W0.12S4が世界最高のイオン伝導度を示すことを報告している。
また硫化物系だけでなく、酸化物系リチウムイオン伝導体の開発にも取り組んでいる。

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様々な機能性を有する固体電解質

全固体電池の実現には、高い導電率以外にも様々な機能性を有する固体電解質の開発が必要不可欠である。
高い導電率を有するLi2S-P2S5系など従来の硫化物電解質は水分と反応し硫化水素が発生することが知られている。
リンの代わりにスズやアンチモンを用いた電解質Li4SnS4やLi3SbS4では相対湿度70%の雰囲気に曝しても硫化水素がほとんど発生しないことを報告しており、中心元素の選択が機能性向上に重要であることを明らかにしている。
また、固体-固体界面をより容易かつ良好に形成するには電解質自体の柔らかさ(成形性)が重要である。
硫化物ガラスは押し固めるだけで緻密な成形体を得ることができる。
一方、酸化物においても低融性のLi3BO3、Li2SO4、Li2CO3などを組み合わせたガラスが硫化物に匹敵する成形性を示すことを明らかにしている。
これらのほかにもリチウム金属やナトリウム金属に安定な電解質の合成、高電位正極に耐えうる電解質の作製に取り組んでいる。

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