研究内容

1. 研究のコンセプト

 薬物の薬理活性を最大限発揮させ、その副作用を最低限のレベルに抑えるためには、体内に存在する標的病変部位に薬物を集積させることが必要です。体内の標的部位に薬物、生理活性物質を正確に送達するドラッグデリバリーシステム(DDS)は、これからの薬物医療の基盤になるものです。
 このようなDDSは様々な機能性を高い次元で実現することが求められます(図参照)。DDSが腫瘍などの標的部位に効率よく集積するためには、血中を循環しながら血管壁透過性の亢進に基づく、いわゆるEPR効果を利用したり、細胞特異性リガンドを利用したりすることが行われている。DDSは標的部位に到達するまでは薬物を保持し、標的部位で薬物を放出する必要があり、そのためにはDDSは温度やどの物理刺激やpH変化などの環境刺激に自律応答して薬物放出を制御する機能を持たなくてはなりません。また、薬物の作用部位が細胞内にある場合は、DDSは細胞内部まで薬物を送達することが求められます。それらの機能に加えて、生体内におけるDDSの可視化などの情報発信機能は、DDSのデリバリー機能を向上させるだけでなく、個人対応型DDSや治療診断統合システムとしてDDSの概念をさらに発展させることを可能にします。また、細胞に働きかけてその機能を望むように誘導することができれば、免疫治療ワクチンDDSなどの高性能化につながります。したがって、DDSにいかに必要な機能群を与え、それを高性能化することが有用なDDSを開発するために重要になります。
 私たちは、様々な高機能を備え、ナノオーダーのレベルで制御されたサイズをもつ、高性能DDSを創製し、新しい医療技術の開拓に繋げていくことを目指します。

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