生体関連セラミックス材料の合成と応用開発・カルシウム系材料の新規設計


人を含む動物の骨や歯はハイドロキシアパタイト、貝殻は炭酸カルシウムが主成分でできており、多くの生命の身体が無機セラミックス材料によって支えているということができます。

ハイドロキシアパタイトをはじめとするカルシウムリン酸塩は、生体との親和性が良く、生体組織に直接結合できる生体活性を持つなどの優れた特性を持つため、骨・歯代替材料として既に実用化されています。身近なところでも、歯磨剤やマスクなどでアパタイトを使用している製品を見かけます。炭酸カルシウムも卵の殻や貝殻、チョークや白線用ラインパウダーなどとして、非常に身近なものであり、産業用途としても紙やプラスチックのフィラー、食品添加物など様々なことに利用されています。

アパタイトや炭酸カルシウムは純粋なものは無色または白色ですが、天然には様々な色の美しい結晶として産出することがあります。これらは結晶内に取り込まれた微量の不純物元素の影響であり、同じ元素でも状態が異なることによって違った色となることもあります。このような結晶中に取り込まれた微量の不純物元素は色だけではなく様々な物性へ影響を及ぼします。

生体内のように様々なイオンや分子が含まれる環境さらされると、結晶内部や表面において不純物元素が影響を与えますが、その場合の挙動については未解明な点も多く残っており、電子・原子レベルからナノ・ミクロ構造、マクロ・バルク体として、様々なスケールの視点で分析される必要があります。

当研究グループでは、カルシウムリン酸塩や炭酸カルシウムに関して、水熱合成法を含む液相反応法や固相反応法などにより新たな機能を持つ物質の合成と応用開発を取り組んでいます。また、SPring-8などの大型放射光施設や透過型電子顕微鏡(TEM)などの最先端の研究設備も利用しながら、様々な環境における反応機構や物性発現メカニズムの分析も進めています。

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天然(鉱物)由来のアパタイト

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様々な炭酸カルシウム