Research

 平成30年7月に閣議決定された「第5次エネルギー基本計画」において, 再生可能エネルギー電源の「主力電源化」が明記されました[1]。以降, 2020年10月の菅首相による「2050年カーボンニュートラル宣言」[2]や, 2021年10月の「第6次エネルギー基本計画」[3]でも再エネ型の分散型電源の重要性が示されています。

 一方, これらの発電方法を発電量が天候に左右されるため, 発電予測が難しかったり, 雲や風況の影響で急激な出力変動が発生する可能性があります。よって, 今後継続的に再生可能エネルギーの導入拡大を図るためには, 系統側の対策(運用・インフラ・制度)に加え, 供給側および需要側のエネルギーリソースを集合化(アグリゲート)していくことが重要になっていきます。

 本グループでは,次世代電力・エネルギーシステムの構築に向けた運用や制御の研究に取り組んでいます。

[1] 資源エネルギー庁, これまでのエネルギー基本計画について, 最終アクセス:2023年7月27日

[2] 経済産業省, 2050年カーボンニュートラルに伴うグリーン成長戦略, 最終アクセス:2023年7月27日

[3] 資源エネルギー庁, エネルギー基本計画について, 最終アクセス:2023年7月27日

最適化理論を用いた電力・エネルギーシステムの解析・運用・制御

 電力システムは他のシステムに比べて非常に巨大なシステムであり, 運用上で発生するコスト(イニシャル・ランニングどちらも)も高額になります。また, 電力システムはインフラシステムであることから, 運用上の制約(電圧や周波数, 安定度など)が数多く存在するため, 時々刻々変化する系統状況に対して, 電力システムを運用・制御することは非常に難しい問題になります。特に, 近年は電力自由化や再エネ出力の不確実性などにより, 問題がより複雑化してきています。

 本グループでは, 従来から電力システム運用・制御に利用されている数理最適化(線形計画法(LP), 混合整数線形計画法(MILP), 凸二次計画法(CQP), 非線形計画法(NLP))に加え, 不確実性をモデル化できる確率計画法を用いて, 電力システムの設備計画最適化, 運用最適化に関する研究に取り組んでいます。具体的には現在、下記のテーマについて取り組んでいます。

  • 定置型蓄電池を用いた再エネ(太陽光, 風力発電)電源の運用計画と制御
  • 配電系統における電圧制御設備(LRT, SVRなど)や需要家リソース(PV-PCS, EVなど), 走行中ワイヤレス給電を活用した電圧適正化
  • ゼロカーボンキャンパス達成のためのエネルギーマネージメントシステム設計
  • Peer-to-Peer(P2P)電力市場取引の制度設計,経済性評価,ブロックチェーン応用(科研費)

機械学習を用いたデータ駆動型電力・エネルギーシステム設計・運用・制御

 近年,Internet of Things(IoT)技術の飛躍的向上により,電力・エネルギーシステムの状態が大量の時系列データ(ビッグデータ)として(ほぼ)リアルタイムに入手可能になってきています。このようなサイバー空間(インターネット空間)とフィジカル空間(電力システムなど)の融合は, これまでには出来なかった新たな価値が産業や社会にもたらされることになります。 これを達成するためには, ビッグデータを扱う方法論やツール開発が重要になっていきます。

 本グループでは, 機械学習に基づいたデータ駆動型の電力システム設計・運用・制御に関する研究に取り組んでいます。具体的には現在、下記のテーマについて取り組んでいます。

  • 深層強化学習を用いた発電機起動停止計画(UC)や最適潮流計算(OPF)の研究
  • 需要家PV-PCSの力率制御に対する強化学習の適用
  • 敵対的生成ネットワーク(GAN)を用いた再生可能エネルギー発電シナリオの作成
  • マルコフ連鎖モンテカルロ法(MCMC)を用いた再生可能エネルギー発電予測