モード解析を用いた強制着火及び燃焼メカニズムの解明

研究背景と目的

 スクラムジェットエンジン内の気流の滞留時間はミリ秒オーダーであり,エンジン内で燃料を確実に着火させるために,これまでプラズマジェットトーチ(PJトーチ),レーザー,マイクロロケットトーチなど様々な点火器が提案されてきた.本研究では,スクラムジェットエンジン用の点火器の中でマイクロロケットトーチに着目した.ここで,マイクロロケットトーチは,トーチ内で生成した燃焼ガスを主流中に供給し着火促進させる点火器である.また,このトーチは,従来研究されてきたPJトーチと同等の着火促進効果を有していることが明らかとなっている.しかし,これまでの研究では,スクラムジェットエンジン内でのマイクロロケットトーチによる強制着火メカニズムについては明らかにされていない.そこで,本研究では複雑な燃焼モードに対して特徴量を抽出する解析方法であるモード解析を用いて,キャビティ保炎器内のマイクロロケットトーチによる強制着火メカニズムの解明を目的に研究を行った.

研究内容

 本研究では,計測画像データなどを低次元基底に分解する方法である固有直交分解(Proper Orthogonal Decomposition, POD)と動的モード分解(Dynamic Mode Decomposition, DMD)を用いて,キャビティ保炎器内のOH自発光計測画像の解析を行い,マイクロロケットトーチによるキャビティ保炎器内での強制着火及び燃焼メカニズムを調べた.高速度カメラで撮影したキャビティ保炎器内の5,000~10,000枚のOH自発光計測画像を基にPODとDMDを用いてモード解析した.本解析には,MATLABを用いて構築した解析プログラムを使用した.図1にキャビティ保炎器内のモード解析結果を示す.解析結果より,マイクロロケットトーチによる強制着火及び燃焼時には,燃焼振動により特定の周波数帯が存在することが明らかとなった.この研究結果は,2023年3月と6月の国際学会(Asian Joint Conference on Propulsion and Power (AJCPP)とAIAA AVIATION)で発表した.

自発光画像解析結果

図1 キャビティ保炎器内のモード解析

本研究は,公益財団法人JKAの研究補助2022M-244(オートレースの補助)を受けて実施した.

JKA補助事業

本研究内容の問い合わせ先:

大阪公立大学 大学院工学研究科 助教 小川秦一郎

E-mail: shinichiro.ogawa[at]omu.ac.jp