研究トピックス

先端科学技術を支える量子放射線の学際研究にチャレンジ

量子放射線工学は、ミクロな量子の世界や放射線といった高度な現代科学を様々な分野へ融合させた学際領域的な工学分野です。
当分野はレントゲン撮影、CT検査やがん治療などの医療分野、非破壊検査、厚み計測などの工業分野、放射線育種や殺菌、滅菌など農業分野、物質への照射効果や放射線化学を利用した材料研究分野、量子効果を基にした半導体や超電導などのデバイス開発、そして原子力などのエネルギー分野など多岐に応用、貢献しています。

ここでは各研究グループでの研究成果の一部を紹介します。

実験写真2朝田

環境計測科学

先進的な放射線検出器の開発や、環境科学の研究を行っています。
一例として最先端のがん治療法であるホウ素中性子捕捉療法(BNCT)のための新しい中性子検出器の開発や放射化分析法によるPM2.5などの大気エアロゾルの分析を行っています。
放射線の実験とシミュレーション計算を組み合わせた研究が特色で、図はBNCTのための減速体での中性子分布を計算したものです。

 

BNCT用放射線場の計算シミュレーション図

BNCT用放射線場の計算シミュレーション

量子線材料科学

表面科学

固体表面の研究のため、電子回路、計測ソフトなどを自作、絶縁体、電磁場中の固体表面第1~第3原子層を実空間で観察できる装置を創りました。その成果としてCr2O3(0001)表面の実験値とシミュレーションが良い一致を示した例です。

 

実測定したCr2O3(0001)表面と計算

実測定(左)したCr2O3(0001)表面と計算(右)

量子線エネルギー反応科学

エネルギー材料、改質、エネルギー反応科学(物理、化学)

ガンマ線、電子、イオン、陽電子などの量子ビームなどを固体や液体に照射し、原子レベルの反応を利用することで特殊な磁性、電気特性、強度、触媒、新しい機構の水素貯蔵など様々な新機能性材料開発を進めています。写真は透明ガラスにイオン照射で合成したAgナノ粒子の制御変形による色の変化と混合の難しいNiとの複合化。これらは新規の触媒や光学的機能性を発現します。

                                 エネルギー

                                                 上段:ガラスにAgイオン照射して合成したナノ粒子によるガラスの着色(青)と照射により変形した色の変化(緑)。                                                                 下段:Niイオンとの二重照射による複合粒子

量子ナノ材料科学

イオンビーム等の量子ビームを用いて超伝導体等の結晶を微細加工し、新しい物理現象の解明と新しいデバイスの開発を行っています。
また超伝導における量子現象を利用して、次世代の超高速コンピュータを実現する量子ビット等のデバイスを作製しています。
図は基板上にミクロン加工で作成した超伝導体単結晶です。

 

基板上で台状に加工された超伝導体単結晶

基板上で台状に加工された超伝導体単結晶

放射線安全管理学

放射線源加速器を対象とした安全システムの構築を行っています。
特にクルックス管からの低エネルギーX線の評価と学校教育現場に於ける安全管理体制の確立や核融合炉ダイバータ周辺プラズマと熱流束評価、大気圧放電プラズマを用いた照射効果環境影響を研究しています。グラフは非常に難しい低線量X線分布の測定例です。

 

測定が難しいクルックス管周囲の低エネルギーX線分布測定例

測定が難しいクルックス管周囲の低エネルギーX線分布測定例

発癌促進性を持つPMA溶液のプラズマ照射発癌促進性を持つPMA溶液のプラズマ照射