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2026年5月11日
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まだ見ぬ「未来」を、自分で描く学び 現代システム科学域 未来デザインコース(FDC) ―学類の枠を越えて学際的に学ぶ、大阪公立大学ならではの挑戦―
現代社会は、価値観の多様化が進むなかで、国際情勢や技術革新をはじめ、あらゆる側面において先を見通すことが難しい時代へと変わってきています。そうした多様性が尊重される社会で、変化に柔軟に対応し、課題の本質を見極め、主体的に道を切り拓く視点が不可欠です。
大阪市立大学と大阪府立大学の統合により誕生した本学は、両大学で長年培われた各学問分野の強みを継承しつつ、学際的な融合を促進し、新たな学術領域や知的価値の創造に挑戦しています。
また、高度な専門性を土台に、異なる文化や分野を超えて社会課題の解決に協働し、持続可能な社会の実現に貢献できる人材育成に力を入れています。
現代システム科学域 未来デザインコース(FDC : Future Design Course)は、2022年に現代システム科学域の特色あるコースとして開設されました。
FDCでは、学生自らの興味や関心、解決したい課題に応じ、学びを自分自身で選択し、デザインすることができます。学びをデザインするとはどういったものなのか、担当教員代表の牧岡 省吾教授にお話しを伺いました。
FDC1期生と担当教員PROFILE
牧岡 省吾(まきおか しょうご)

現代システム科学研究科 現代システム科学専攻 教授
専門分野は認知心理学・認知科学。共感覚の成立メカニズムなどについて研究。
2022年開設時より未来デザインコース(FDC)の指導に携わる。
※所属は取材当時
「未来デザインコース(FDC)」とは、どのようなコースなのか教えてください。
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「未来デザイン」という言葉には、「未来社会をデザインする」という意味に加えて、「学生自身が自らの学びをデザインする」という意味が込められています。未来社会のあり方を考え、そこからバックキャスト(逆算)して自分の学び方を選ぶ、それが未来デザインコース(FDC)です。
FDCを志望する学生には、まず、持続可能社会の構築に向けてどのような問題を解決したいのかを考えてもらいます。そこから将来のキャリア像が導かれます。学生は、問題の解決のためにどのような知識や技能が必要かを考え、教員と相談しながら、大学での自らの学びを組み立てていきます。
FDCは現代システム科学域の学域単位入学生だけが選択でき、複数の学問分野を融合的に学ぶことで学士(学術)の学位を取得できます。
学域単位入学生は、入学時に学類を決めず、1年次の終わりに、知識情報システム学類、環境社会システム学類、教育福祉学類、心理学類の4学類から選択します。学域単位入学生は、特定の学類に最初から固定されるのではなく、入学から1年をかけて複数の学問分野を横断的に学びながら自分の進みたい道を見つけることができます。これは現代システム科学域ならではの大きな特長です。
FDCの学びの流れを教えてください。
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まず入学後に、学域単位入学生に対して、未来デザインコースのオリエンテーションを行います。その後、FDCを志望する学生は、1年次に「未来デザインインターンシップ」を受講します。この授業に参加する学生には、それぞれメンターとなる教員が割り当てられます。1年次からメンター教員と個別に相談し、自らの研究について考え始めることができるのが、FDCの魅力の一つです。


「未来デザインインターンシップ」では、自治体、学校、NPO法人、企業などの事業に参加することで、現代社会における問題やその解決の糸口について、自らの体験を通して考えていきます。この経験をもとに、1年次末に未来デザイン計画を提出し、実現性が高いと判断された学生に、2年次からのFDCの履修が認められます。
FDCに選抜された学⽣は、メンター教員・サブメンター教員(※)と相談しながら、⾃らが解決したい課題・⽬的に応じた未来デザイン学修プログラムを作成し、そのプログラムに沿って学類の枠を超えて横断的に学びます。
3年次には、実際にフィールドでの問題解決に挑む「未来デザインPBL演習」に参加します。最終学年では、複数の教員の指導のもと、それまでの取り組みを発展させ、卒業研究を完成させます。
2026年2月には、FDC1期生5名が、フィールドでの実践的な活動を通して感じた気づきや学びから生まれた研究テーマについて、卒業研究の成果報告を行いました。 -
☞大学Webサイト_現代システム科学域「未来デザインコース(FDC)」1期生による卒業研究報告会を実施
学生は自治体や企業、教育・福祉の現場などで実際に活動し、社会の中にあるリアルな課題に触れます。そこで感じた疑問や問題意識が、その後の授業や演習、そして卒業研究へとつながっていきます。
「なぜこの問題が起きているのか」、「自分ならどう解決したいのか」を考える経験が、学びの軸になります。
(※)メンター教員・サブメンター教員:1年次では、各学生に「1年次メンター教員」が割り当てられ、「未来デザインインターンシップ」の指導を行う。2年次にFDCへの配属が決まると、メンター教員は学生と同じ学類から、サブメンター教員は異なる学類から選ばれる。学生は複数の学類の視点から研究を進めていく。
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FDCでは学類を超えて学べると聞きました。
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はい。FDCでは、1年次の終わりに選択した学類をベースにしながらも、他学類・他学部の授業を履修して学びを広げることができます。
たとえば、環境問題に関心を持つ学生が、心理学や教育福祉学の視点を取り入れることで、地域社会や人間の心理と環境問題との関わりを多角的な視点から捉え、より実効性のある解決策を考えることができます。
複雑化する現代の社会課題に向き合うには、「一つの専門」だけでは足りません。FDCは、学問分野の壁を超え、持続可能な社会の実現に貢献できる学びを身に付けることができるコースです。 -
授業の中で、特に力を入れている点はどこでしょうか。
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FDCでは、学生自身が問題を発見し、その解決に取り組んでいきます。そのためには、メンター教員やサブメンター教員のバックアップが欠かせません。FDCを運営する教員は定期的に情報を共有して、それぞれの学生に必要な学びが実現できるように調整しています。
学生の視点では、3年次に行われる「未来デザインPBL演習」が山場になると思います。この授業では、学生が自ら選択したフィールド(自治体、学校、NPOなど)で、調査・分析を重ねながら解決策を考えます。メンター教員やサブメンター教員だけでなく、必要に応じてその他の教員も学生の挑戦をサポートします。
正解のない問いに向き合い、何度も考え直す経験は、将来どのような進路に進んでも必ず役立ちます。 -
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FDC履修卒業生の声
知識情報システム学類:江渕 優樹さん(2025年度卒業)
卒業研究:『⾼校教科「情報Ⅰ」における視覚障害者にも対応したウェブアプリ型の教材開発』
FDCは、1年のときからメンター教員の指導を受けられるので、研究を早く始めることができます。インターンシップで、2022年新たに必須科目となった「情報Ⅰ」の授業に参加し、情報教育の現場を知ったことで、どのようなアプリが必要かを考えることができました。教育格差などの問題にも興味があり、教育福祉学類や⼼理学類の授業を受けることで、⾊覚多様性や⾊字障がいに関する知⾒を取り⼊れることができました。毎年発表があり⼤変でしたが、⼒が付いたと思います。

教育福祉学類:桂 ⼩梨彩さん(2025年度卒業)
卒業研究:『就学前施設における避難訓練と防災保育の⼯夫と課題−⾃ら健康で安全な⽣活を作り出す⼦どもを育むために−』
現場の方々や教員との良い出会いがあり、社会人として必要なマナー、文献の調べ方、新しい研究の発想法などを早くから学ぶことができました。自分の興味のあるテーマに1年次から取り組んだことで、卒業研究に自信を持てただけでなく、就職にも繋がりました。幼児の防災教育に興味があり、「幼児の視点や発想を知る」をテーマに幼稚園でのインターンシップに参加し、特別な⽀援が必要な⼦どもと関わり、⼦どもの発達の違いや、インクルーシブ保育について興味を持ち、研究を進めました。さまざまな就学前施設への訪問の経験から、教育福祉学類の学びに加え社会学やICTの観点からも考察を加えながら卒業研究を進めることができました。

その他2025年度卒業生研究テーマ
卒業生 テーマ 増田 春菜子さん
(環境社会システム学類)大阪にある沖縄-がじまるの会に着目して- 酒井 言羽さん
(教育福祉学類)公立学校における「わからない」の「放置」からの解放
-「メンター」制度の導入に向けて-手槌 美友さん
(教育福祉学類)コミュニケーションロボットを活用した障害理解教育が就学前の子どもたちに与える影響 最後に、進学を考えている受験生や高校生へメッセージをお願いします。
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現代システム科学域は、国連がSDGsを発表する3年前の2012年に、持続可能社会の実現を目標に掲げて大阪府立大学に開設されました。その10年後の2022年、大阪公立大学の発足を機に、持続可能社会の実現を牽引する先導者の育成を目指して未来デザインコース(FDC)がつくられました。
FDCでは、持続可能社会を実現するために何が必要なのかを自ら考え、現実のフィールドで問題解決に取り組みます。通常のカリキュラムより大変ですが、現代社会の問題を解決したいという意欲のある人、一つの学問の枠に収まりきらないことを考えている人、さまざまな人達と協働で問題解決に取り組んでみたい人にとっては、またとない学びの場になるはずです。関連情報
大阪公立大学 現代システム科学域 未来デザインコースWebサイト
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