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2026年9月7日

  • 卒業生
  • 農学

研究者と社会を繋ぐ架け橋へ―技術シーズを社会に届けるための「起業」という選択肢

2026723日(木)、中百舌鳥キャンパススマートエネルギー棟で開催された「第8回絵札(JQK)研究会※。
今回のテーマは「起業という選択肢」です。
講師として登壇したのは、本学前身校の卒業生であり、多数の起業に携わる中村 順さん。今回はKSAC GAPファンドに採択され、それをベースに起業した「株式会社食のミカタ」の代表取締役として、科学的根拠と透明性を基盤に、技術と社会をつなぐサイエンスコミュニケーションなどの取り組みや、起業のリアルについてお話いただきました。

※絵札(JQK)研究会
大阪公立大学農学研究科を中心に、産学官民の多様な関係者が集い、協働・共創を推進する研究交流の場として、2025年に発足。
J-PEAKS(地域中核・特色ある研究大学強化促進事業)、探Qみらいファーム(読売新聞とのタイアップによる農業探究プログラム)、KSAC(関西スタートアップアカデミア・コアリション)の関係者らの交流が契機となったことから、トランプの絵札(JackQueenKing)を想起して「絵札研究会」と名付けられた。

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PROFILE

中村 順(なかむら じゅん)

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  • 株式会社Monjude(モンジュード) 代表取締役
    2015年3月 大阪府立大学大学院生命環境科学研究科 卒業
    日本IBMサービス株式会社、株式会社キャンサースキャンにて、システムエンジニアやマーケティングコンサルタント業務などを経て株式会社Monjudeを設立。
    ほか、株式会社ヒトリメ、株式会社食のミカタを設立し、食に関する事業などに多数携わる。

    ※所属は取材当時

「憧れ」から「目標」、そして「現実」へ

昔からなんとなく「起業家」に憧れがありました。修士課程1年生のとき、大学で、株式会社リバネスの丸 幸弘代表取締役グループCEOの講演を聞いたことが、憧れが目標に変わる転機となりました。「音楽が好きだからレーベルを立ち上げた」「好きなことを追求して会社を興し、負債が数億円あります」と楽しそうに語る姿に感銘を受けました。自分の好きなことをして、会社を作っていくという生き方があるんだな、と。
起業が「憧れ」から「身近な目標」に自分自身のなかで変わりました。

起業を意識してからは、「英語が必要だ」と考え、修士課程2年生のときにワーキングホリデーの制度を利用し、海外に。帰国後就職し、システムエンジニアやマーケティングコンサルタントなどの業務を経験しました。ただ、起業したいと思っていたものの、具体的に何をすればいいのか分からずに日々を過ごしていました。

転機は起業のアイデアを競うビジネスコンテストでした。入賞後に参加した起業塾で、主催の株式会社アセンブルポイントの宮下 崇代表取締役社長から「それで、いつ会社辞めるの?」と聞かれ、思わず「今年の8月くらいです」と答えてしまったんです。何も考えていなかったのですが、口に出したことで「本当にやらなきゃいけない」と覚悟を決め、現実の一歩を踏み出すことになりました。私という人間を一言で表すと、「根拠のない自信だけはある」ということですね。でも、根拠のない自信がないと基本的に起業しようとならないんですよ。

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失敗と軌道修正、そして直面した壁

最初に作った会社(株式会社Monjude)では、信頼できる人のレビューを共有するSNSを作ろうとしました。しかし上手くいかず、半年で断念しました。そこで「今できること」に方向転換し、SEの経験とAI技術を活かしたアンケート分析ツール事業へ軸足を移しました。今、なんとか6年目を迎えています。

もともと私は巨大なIPOを目指すのではなく、「会社を育てて売却(M&A)し、その資金でまた新しい会社を作る」というスタイルを目指していました。そこで、「うちの会社を数千万円で買いませんか」と飛び込みのM&A営業をやっていたのですが、ここで大きな壁に直面しました。技術が優れていても、実績のない個人の会社を簡単に買ってくれるわけもなく、営業力の限界を感じました。

ニッチな分野で評価されても、それを事業拡大へ繋げる組織的な営業ルートや信用力が不足している。最強の武器はコネクションと信用だと痛感しました。
今、自分ができることややりたいことをいろいろな場所でいろいろな人に話すことが大切だなと思います。

食品技術の社会実装の乗り越えるべき壁
「株式会社食のミカタ」の挑戦

20263月に設立した「株式会社食のミカタ」は、まさに大学の力を活かした実践です。内閣府の戦略的イノベーション創造プログラム(SIP)第3期事業での「社会実装を担う主体」として名乗りを上げたのが始まりです。
その後、関西スタートアップアカデミア・コアリション(KSAC)のGAPファンドにも採択され、サイエンスコミュニケーションなどの取り組みを進めています。
起業を通じた技術シーズの社会実装に関して、研究者と一般の消費者・社会をつなぐ役割の重要性を感じています。

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いま考える「起業」とは

起業と聞くと「数十億円の売上を目指す」「大金持ちになる」といった高いハードルを想像するかもしれません。しかし、起業の本質はそれだけではありません。
「今までやってきた技術シーズ、研究成果やアイデアを、実際のビジネスや社会に当てはめて実証実験する手段」として捉えてみてください。そう考えるだけで、起業はずっと身近で魅力的な選択肢になるはずです。

根拠のない自信でも構いません。自分のやりたいことや研究を社会へ届けるための一歩を、ぜひ踏み出してみてください。

参考情報

イノベーションアカデミースマート農業ユニット(大学Webサイト)