座談会 第1回(2021年度修了)

受講生

小瀧 安史さん 2021年度受講生/田中 誠さん  2021年度受講生

インタビュアー

受講アドバイザー(司会)松井 利之先生

自らの経験と学びを未来に繋げる「実務家教員」を目指して

「学び」や「教育」を意識した、それぞれのきっかけ

小瀧さん

私は、大学時代は勉強もそこそこに、自分で開業したアパレルショップの運営に精を出すような学生で…。でも卒業するときには、夢を追うことなく、必要最低限の単位だけ取得して凡庸にも一般企業に就職しました。その企業で定年まで全うして、もうすぐ退職という頃に、アントレプレナーシップ教育力育成コースの存在を知りました。

受講アドバイザー

退職後のことは、以前から考えていらしたんですか?

小瀧さん

そうですね、普通に再就職するつもりでいましたが、やはり、人生の大きな節目ということで、改めて自分の半生を振り返りまして「学問への向き合い方が足りなかった」と思い至りました。このコースを知って、起業経験のある自分だからこそ、これから起業を目指す学生達の役に立てればと思って応募しました。

小瀧さんの写真受講生の小瀧さん

受講アドバイザー

田中さんは、どのような経緯で応募されたのですか?

田中さん

私は最近までインドに駐在し、工業団地の開発・運営に携わっておりました。そこは、先祖代々、牛飼いや農業を生業にしてきた人々が暮らす農村地帯で。工業団地の中に日本式のものづくりを一から教える学校を設立したのですが、子どもたちは教えたことをどんどん吸収し、すぐに英語で堂々とプレゼンできるまでになったのです。短期間での彼らの変化には非常に驚きましたし、「教育の力」にも感動して、教育にもっと深く関わりたいと思ったのが応募したきっかけになります。

授業を通じて獲得した、達成感や新たな視点

受講アドバイザー

実際の授業には、どのような感想を持たれましたか? 

小瀧さん

とても充実していました。最初の1カ月は、よくわからないままeラーニングを続けましたが(笑)、見識の高い受講生の皆さんのチャットを見るのが楽しみであり、励みにもなりました。最初は勉強の仕方も論述の仕方もわからない状態でしたが、これこそがアクティブラーニングだと自分に言い聞かせて、初めてレポートを書き上げた時や、後段の授業に進むにつれて「あの時学んだことが、ここで結びつくんだ!」と理解できた時は、自分なりに達成感を感じました。

田中さん

私は仕事と併行しているので、夜間や休日に時間を作って勉強しました。大変だったのは、仕事の悩みや課題を抱えながら勉強の課題に挑む時の、気持ちの切り替え方でした。

受講アドバイザー

どうやって乗り越えられたんですか?

田中さん

あえて、ON OFFを切り替えないようにしました。「この仕事の課題は、教育的な観点からだとどう見えて、解決策はどうなりそうか」と、普段から仕事と学びを紐付けて考える習慣が身につきました。

アントレプレナーシップの本質とは

受講アドバイザー

皆さんには、カリキュラムの一環で、学生が学んでいるところを実際に見学いただきました。これは学生にとっても、いい刺激になったと思います。

小瀧さん

講義を見学させていただいた広瀬先生は、おそらく私と同年代どころか大々先輩だと拝察します。若い学生を相手に、とてもパワフルな授業を展開されている広瀬先生を目の当たりにして、定年を一つの区切りと捉えて残りの人生を安穏と過ごすなどという選択はあり得ないという想いが焼きつきました。

田中さん

広瀬先生が学生に向けて「教えることは何もない」と仰った時は不思議に思いましたが、学生たちが自らアイデアを出し、ディスカッションして、アウトプットまで結びつけている様子を拝見して、教員の仕事は「考える場」を作ることなのだと知りました。それに鐘ケ江先生の授業では、初めに、その授業の目的や何のための学びか、学生たちに方向を示されていたのが印象的で、自分が教員になった時も、この手法はぜひ取り入れたいと思いました。それに、松井先生の「失敗することも、アントレプレナーシップ」という言葉も忘れられません。

松井先生

行動を起こさなければ、失敗もしない代わりに成功もあり得ない。まずは自分や仲間の失敗を許容すること、そして失敗を次に繋げることが、アントレプレナーシップの重要なところです。

田中さん

私の中で『アントレプレナーシップ』と『リーダーシップ』の違いが漠然としていたのですが、何かを変えるために、失敗を恐れずアクションを起こすこと。それこそ「アントレプレナーシップの本質」だと、腑に落ちた瞬間でした。

松井先生

新しいことにチャレンジすることに慎重になりすぎて、初めの一歩が踏み出せない学生も非常に多くいます。失敗してもいいから、自分が何をやりたいのかを第一義に考えてもらう。その部分を、皆さんのような現場の経験者に示してもらうことが、彼らにとって最大の手本になります。ぜひ、教員として皆さんのお力をお借りしたいと思っています。

次代のアントレプレナーたちに繋ぐために

受講アドバイザー

では最後に、来期の受講を考えている方にメッセージをお願いします。

田中さん

事業戦略のフレームワークなどを学ぶビジネススクールに対して、「人に学んでもらう方法論を学ぶ」ことが、このコースならではの特色だと思いました。「実務家教員の育成」という名目ですが、人を巻き込みながら組織を変える、あるいは社会を変えるなど、何かを変えていくために、さまざまな分野で使えるメソッドが学べると思います。

小瀧さん

私自身もこのプログラムを通じて、自分がどう生きてきて、何を伝えることができるのかを改めて見つめ直すことができました。リベラルアーツ的な知識欲求を満たすことが、受講のきっかけでもあったのですが、自分の経験や学びを後進に伝えるという目標ができて、人生の集大成としての道筋を一つ見出すことができました。今まさに社会課題に向き合っている現役バリバリの社会人の方にこそ学生に接して頂きたいと思いますし、また社会人として一つのことを成し遂げた感のある私のような年齢層の方にも、自分を解放して新しくチャレンジをしていきたいと思わせるプログラムだと、自信を持ってお勧めできます。

受講アドバイザー

アメリカやヨーロッパの大学のように、私たちも、社会の人が学びたい時に学べる「開かれた大学」を目指している途上ですが、日本では働きながら学ぶ、あるいは、歳を重ねてから学び直すことはまだまだ難しい環境です。そんな状況でも、後進につなげるために、新たに学ばれる受講生の皆さんの姿は、多くの方の励みになると思います。今日はありがとうございました。

小瀧さんの写真

小瀧さんから受講をお考えの方へのメッセージ