2000年度前期基研研究会提案書(一部)

世話人及び提案説明者

世話人:

  • 小玉英雄(京大基研) 
  • 中尾憲一(大阪市大)
  • 細谷暁夫(東工大理)
  • 前田健吾(早大理工)
  • 原田知宏(京大天体核)
  • 石橋明浩(京大基研)

連絡責任者氏名 小玉英雄
提案説明者氏名 小玉英雄

研究テーマの内容(研究趣旨案)

時空特異点発生の一般性がHawking、Penroseらにより証明されて以降、時空特異点の構造やその自然現象における役割を明らかにすることは、理論物理学における基本的問題として、相対論研究者のみならず多くの基礎物理学研究者が関心を持つテーマとなっている。特に,最近、コンパクト天体の引き起こす高エネルギー現象、重力崩壊に伴う重力波放出など、強い重力場を伴う現象の理論的および観測的研究が急速に進展しており、それに伴って、ペンローズにより提案された宇宙検閲仮説の正当性を確かめることが、現実的重要性をもつ問題として重要な研究テーマとなっている。また、スカラ場重力崩壊においてChoptuikにより発見された臨界現象は、その後の研究により物質組成によらない高い普遍性をもつ現象であることが判明し、時空特異点の研究に新たな視点をもたらすと共に、宇宙検閲仮説の定式化に大きな変更を迫りつつある。さらに時空特異点の研究は、ブラックホールの熱力学、量子重力理論など、基礎法則の定式化とも深く関わるものであり、数学的にも物理的にも豊かな発展性を秘めている。

このように重要で発展性のある分野であるにも関わらず、これまで日本でのこの領域における研究は必ずしも活発と言えなかったが、近年、ようやく日本でも時空特異点の研究が芽生えてきた。しかし、残念ながら現在のところ、時空特異点の研究者達が集まって徹底的に議論する場がなく、個々に研究活動を行っているのが現状である。これに対して、時空特異点の研究において長い伝統をもつ米国や西欧では、この分野の研究者達が一定期間一同に間集まり、徹底的に議論する場を設けるのが通常であり、このような地道な活動の積み重ねが現在の発展を産み出している。そこで、日本においても、時空特異点の活発な研究を促進し、新たな発展を産み出す若手研究者を育成するためには、同様の場をもうけることが是非とも必要であると考えられる。そのような場として、日本における理論物理学研究の中心である基礎物理学研究所における研究会が最もふさわしいと考え、今回の提案をした次第である。

この主旨に従い、研究会は、ある程度発表者を絞り、講演および議論に十分な時間をさく形態にしたいと考えている。具体的に取り上げる内容としては次のようなものを予定している。

  1. 因果律の破れた時空における特異点の発生
  2. 時空特異点の数学的構造
  3. 重力崩壊における宇宙検閲仮説
  4. Cauchy horizonの古典的および量子論的安定性
  5. 裸の特異点近傍での粒子生成
  6. 高次元統一理論における時空特異点