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2025年7月30日

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第147回生物科学フロンティアセミナー :2025年8月6日(水)15:00~16:30、8月7日(木)13:15~16:30

生物科学フロンティアセミナー/創薬科学研究所セミナー(創薬科学副専攻「創薬科学特殊講義」)
日付:令和7年8月6日(水)
①午後3:00~4:30

新たな医薬品モダリティーとしての光機能性ナノ粒子の設計指針の構築

太田 誠一 先生 (東京大学 大学院工学系研究科 准教授)

場所:中百舌鳥キャンパス A13 3 323

 ナノ粒子の診断・治療への応用が、近年注目を集めている。中でも金属や半導体から人工的に合成したナノ粒子は、局在表面プラズモン共鳴や量子サイズ効果に代表される特異的な光物性を示すため、画像診断や光治療などへの応用が期待されている。ナノ粒子と従来の低分子薬剤の違いの一つは、明瞭な界面で規定された「かたち」を持つことである。低分子薬剤の場合は、化学構造が同一であれば基本的に生体中での振る舞いも等しくなる。これに対し、ナノ粒子はたとえ同一の元素で構成されていても、そのサイズや形状、表面状態などの物理化学的性質に無数の多様性があり、これが生体中の分子・細胞・組織との相互作用と、その結果として生じる診断・治療効果に大きな影響を与えることが、近年の研究で明らかになりつつある。本講義では、光機能性ナノ粒子の診断・治療効果を最大化するために必要なサイズや表面等の設計指針について、講演者のこれまでの研究結果に基づき議論する。

日付:令和7年8月7日(木)
②午後1:15~2:45

機能性高分子ナノ粒子の作製とナノメディシンへの展開

児島 千恵 先生 (東京科学大学 物質理工学院 材料系 教授)

場所:中百舌鳥キャンパス A13 3 323

 樹状高分子であるデンドリマーは粒径や構造を制御できるだけでなく、生理活性物質を内部や末端に導入することができるため、ナノカプセルとして利用することができる。我々は、デンドリマーの末端に様々な分子を結合することで機能化し、免疫細胞や腫瘍組織へのデリバリーに利用できることを示してきた。特に、末端にカルボキシ末端のフェニルアラニンを結合したデンドリマーでは、がん免疫療法に重要となるリンパ節内のT 細胞にデリバリーできることがわかった。近年、生医学分野で広く使われているポリエチレングリコール(PEG)の免疫応答が問題になっている。PEG デンドリマーでは、PEG の免疫応答が回避できることを明らかにした。本講演では、様々な機能性デンドリマーの設計とナノメディシンへの応用について講演する。

③午後3:00~4:30

光免疫療法のがん治療メカニズムとそれに基づく創薬研究

小川 美香子 先生 (北海道大学大学院 薬学研究院 教授)

場所:中百舌鳥キャンパス A13 3 323

 光免疫療法(Near-infrared photoimmuno therapy; PIT)は、米国国立衛生研究所の小林らにより開発された、光を用いたがん治療法である。PIT では、がん細胞膜抗原に結合する抗体と光反応性色素(IR700)を組み合わせたものを薬剤として用いる。抗体―IR700 複合体を静脈投与後690 nm の近赤外光を照射することで治療を行う。これまでに、治療メカニズムについて検討を行い、光照射によりIR700 の化学構造が変化することで細胞毒性を示すことを明らかにした。具体的には、IR700 の水溶性軸配位子が光により切断されることで、フタロシアニン環が露出し、不溶性の凝集体を形成する。この際、抗体分子や抗原分子も凝集体に巻き込まれ、細胞膜に不可逆的な機械的ストレスが加わることで、膜が破壊される。この軸配位子切断反応のメカニズムに基づき、より軸配位子の切断が起こりやすい化合物の開発にも成功した。さらに、生体深部での治療への応用を目指し、新たな化合物の開発も進めている。

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皆様のご参加をお待ちしております。

 (事前参加申し込みは不要です。会場まで直接お越しください。)

(世話人・連絡先:中瀬生彦)

パンフレットは↓