研究内容

研究紹介キーワード科研費(代表者)その他の外部資金(代表者)

研究紹介

差分方程式とは

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𝒙𝒏+1=𝒂𝒙𝒏(1-𝒙𝒏)の𝒂に対する分岐図

 関数方程式の1つである差分方程式(漸化式)の解の極限や安定性について研究しています。例えば、𝒂を実数とするとき、𝒙𝒏+1=𝒂𝒙𝒏, 𝒏=0,1,2,⋯の解は𝒙𝒏=𝒂𝒏𝒙0と求められるので、𝒂の値によって解𝒙𝒏の収束・発散が分類できます。一方、𝒙𝒏+1=𝒂𝒙𝒏(1-𝒙𝒏)の解を求めることはできませんが、0<𝒂≤4と初期値𝒙0(0<𝒙0<1)に対して𝒂の値によって解𝒙𝒏は0や1-1/𝒂に収束することが示せます。𝒂の値によっては周期解やカオス的な挙動をする解も存在します(右図参照)。一般に、解を具体的に求められる差分方程式はほんの一部なので、解を求めずに解の性質を調べる差分方程式の理論が発展してきました。

時間遅れをもつ差分方程式

 上の例のように、𝒙𝒏+1の値が𝒙𝒏の値だけで決まる差分方程式𝒙𝒏+1=𝒇(𝒙𝒏)を1階差分方程式といいます。これに対して、𝒙𝒏+1=𝒇(𝒙𝒏, 𝒙𝒏-𝒌)の形の高階差分方程式を時間遅れをもつ差分方程式といいます。ここで𝒌は時間遅れを表すパラメータです。例えば、第𝒏+1世代が第𝒏世代だけでなく、第𝒏-𝒌世代にも依存する離散時間の生物モデルは、時間遅れをもつ差分方程式で定式化されます。これまで時間遅れをもつ差分方程式の安定性や振動性について研究してきました。現在の研究テーマは、時間遅れが差分方程式の解の性質に及ぼす影響の解明です。差分方程式とその応用に関する国際会議 (ICDEA) は毎年開催されており、2016年は大阪府立大学I-siteなんばでICDEA2016が開催されました。

時間遅れをもつ微分方程式

 離散時間モデルの差分方程式の理論は、連続時間モデルの微分方程式の理論と深く関連しています。したがって、時間遅れをもつ微分方程式も平行して研究しており、時間遅れが微分方程式の解の性質に及ぼす影響の解明も研究テーマの1つです。例えば、対角成分に時間遅れをもつ連立線形微分方程式𝒙'(𝒕)=-3𝒙(𝒕-𝒓)-𝒚(𝒕), 𝒚'(𝒕)=-𝒙(𝒕)-0.98𝒚(𝒕-𝒓)において、時間遅れ𝒓の値を0.7, 0.8, 0.87, 0.89とすると、零解はそれぞれ漸近安定、不安定、漸近安定、不安定になります(下図参照)。このような現象を安定スイッチといいます。詳細は、Hata, Matsunaga, DCDSB 28, 4910-4936 (2023)を参照してください。

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𝒓=0.7のとき
figure3
𝒓=0.8のとき
figure4
𝒓=0.87のとき
figure5
𝒓=0.89のとき

キーワード

  • 時間遅れをもつ微分方程式 (Delay differential equations)
  • 差分方程式 (Difference equations)
  • 漸近安定性 (Asymptotic stability)
  • 安定スイッチ (Stability switches)

科研費(代表者)

  • 令和6,7,8,9年度 科学研究費補助金 基盤研究 (C) 24K06801
    「時間遅れが微分方程式の漸近的性質に及ぼす影響」 KAKENデータベース
  • 令和元,2,3,4,5年度 科学研究費補助金 基盤研究 (C) 19K03524
    「時間遅れが差分方程式の解の漸近的性質に及ぼす影響」 KAKENデータベース
  • 平成26,27,28,29年度 科学研究費補助金 基盤研究 (C) 26400174
    「時間遅れをもつ積分方程式の定性理論の構築とその応用」 KAKENデータベース
  • 平成21,22,23年度 科学研究費補助金 若手研究 (B) 21740103
    「時間遅れをもつ方程式の解の漸近的性質とスペクトル解析」 KAKENデータベース
  • 平成19,20年度 科学研究費補助金 若手研究 (B) 19740071
    「時間遅れをもつ方程式の解の大域的性質とスペクトル解析」 KAKENデータベース
  • 平成15,16,17年度 科学研究費補助金 若手研究 (B) 15740109
    「時間遅れをもつ方程式の解の漸近的性質に関する研究」 KAKENデータベース
  • 平成12年度 科学研究費補助金 特別研究員奨励費
    「時間遅れをもつ微分方程式系の定性的研究と数理生態学および数理経済学への応用」

その他の外部資金(代表者)

  • 平成16年度 住友財団基礎科学研究助成 (財団法人住友財団)
    「関数差分方程式の解の漸近挙動における時間遅れの影響」
  • 平成14年度 海外発表促進助成 (財団法人日本科学協会)
    「Stability Regions for a Class of Delay Difference Systems (時間遅れをもつ差分方程式系の安定領域)」
  • 平成11年度 笹川科学研究助成 (財団法人日本科学協会)
    「時間遅れを含む微分方程式の数理生態学および数理経済学への応用」
  • 平成10年度 財団法人理工学振興会研究助成
    「コンピュータシミュレーションを併用した時間遅れをもつ微分方程式の定性的研究」