採択プロジェクト
2024年10月15日
- 設立支援
ひきこもりの実態把握に基づく孤立・孤独支援施策及び事業の提案
プロジェクト名
ひきこもりの実態把握に基づく孤立・孤独支援施策及び事業の提案
代表者
野村 恭代(都市科学・防災研究センター/現代システム科学研究科)
共創メンバー
学内
氏名 | 所属 |
---|---|
丸田 純平 | 医学研究科 |
堀本 真以 | 医学研究科 |
熊谷 美香 | 健康科学イノベーションセンター |
辻野 けんま | 文学研究科 |
坂東 希 | 国際基幹教育機構/現代システム科学研究科 |
矢野 淳士 | 都市科学・防災研究センター |
湯山 篤 | 都市科学・防災研究センター |
学外
- 大阪府地域福祉課(担当:吉田氏、一岐氏)
- スクールカウンセラー(井上氏)
- 津別町
事業内容
ひきこもりの状態への「人としての支援」の必要性に加え、労働人口減少下にある日本においては、経済的側面からも全国において早急な支援が求められているが、有効な支援策はいまだ提示されていない。大阪府においても、地域福祉課を中心に孤立・孤独、ひきこもり状態にある人への直接的支援及び専門機関等のネットワーク構築に着手しているが、ひきこもりの状態にある人の場合、積極的に機関につながる可能性は低く、また対面や電話には拒否的である場合も多い。そこで、本事業においては、大阪府の既存事業と連携しながら、ひきこもりの実態把握と要因分析、社会復帰支援事業を産学官民連携により展開することにより、将来的には全国の自治体及び国のひきこもり支援策への展開を目指す。
事業の概念図
事業成果
1.ひきこもりの実態把握
学外メンバーである津別町において、ひきこもり及び社会的孤立に関する実態調査を実施し、世帯の中に長期のひきこもりに相当する人のいる世帯の割合が2.6%に上ることを把捉した。加えて、長期にひきこもっている人は全員が男性で、半数以上が40歳以上の高年齢層であった。また、この中の15歳以上65歳未満の年齢層にある人を津別町全体の生産年齢人口に当てはめてみると2.0%であることも明らかになった。
2.ひきこもりに至るプロセス及び社会参加につながるターニングポイントの解析
学外メンバーである大阪府孤独・孤立対策プラットフォーム事業参画団体の協力のもと、ひきこもりの状態にあった人を対象にヒアリング調査を実施した。その結果、ひきこもりに至るプロセスは明確なものではなく、「友達はいたけどなんとなく学校に行かなくなった」「家族もいわゆる普通の家族で特に問題はなかったが、自室にひきこもるようになった」という理由によるケースが想像以上に多いことが明らかになった。また、社会参加に至るターニングポイントとしては、「何らかの方法で家族以外の人(社会)とつながるきっかけ」が重要であることが示された。これらのヒアリングからは、メタバース空間での他者との接点は、実社会とのつながりに向けて一定の有効性があることや、いわゆる元当事者の声を丁寧に拾い分析し、それをデジタルツインの構成に活かすことがメタバース空間を利用したひきこもりを含む社会的孤立状態の打開の可能性を高めることが示唆された。
3.メタバース空間の構築に向けた準備
2025年度からのスムーズな事業化に向けて、2024年度より、デジタルツインに豊富な実績を有するTOPPAN株式会社と複数回のミーティングを実施するとともに、学内メンバーでTOPPAN株式会社を訪問し、メタバースやデジタルツイン、バーチャル世界の構成などについて実際に体験したうえで、ひきこもりの人を対象とする場合の既存空間の改編等について協議を行った。
今後の事業計画
2025年度
2024年度から開始している定性的調査による社会的孤立、ひきこもりの状態に至る背景や心理的要因、社会的要因に関する分析を深化させ、社会参加に向けた具体のひきこもり施策と福祉の枠組みを超えた新たな仮想空間を用いた支援事業を提案する。デジタルツインについては、既存のメタバース空間をひきこもり当事者の視点から評価し、改善点を洗い出すとともに、評価分析を反映させながら新たな空間(デジタルツイン)を構築する。また、ネットワークビジネスを応用したリクルートシステムについては、大阪府及び実社会でのひきこもり支援団体の協力を得ながら、ひきこもり支援プログラム(基礎プログラム/支援者育成プログラム)を構築する。
2026年度
2027年からの事業化を見据えた支援事業を実施する。具体的には、直接的コミュニケーションを忌避する人のためのデジタルツインを活用したコミュニティの運営と評価、利用者の状態に応じた目的別・特性別等のオフ会の定期開催を行う。同時に、メタバースコミュニケーターによるなんでも相談会(月2回程度)を実施する。加えて、デジタルツインでの就労支援の一環として、バーチャルによる企業訪問及び職場体験を行う。また、支援を提供する側への事業としては、10名程度をモデル対象としてメタバースコミュニケーター養成講座を実施し評価を行い、2027年度からの本実施を目指すとともに、メタバースコミュニケーター養成講座への無料参加の機会の担保や大阪府地域福祉課との連携による支援機関ネットワークの構築等を推進し、最終的にはひきこもり支援策の提案へと展開させ、プラットフォーム参画団体をはじめとした企業への就職を目指す。