採択プロジェクト

2024年10月15日

  • 設立支援

都市農業の社会実装による産官学民協創による人材(農業担い手)獲得戦略

プロジェクト名

都市農業の社会実装による産官学民協創による人材(農業担い手)獲得戦略

代表者

横井 修司(農学研究科)

共創メンバー

学内

氏名 所属
小泉 望 農学研究科
坂田 賢 農学研究科
大江 真道 農学研究科
和田 光夫 農学研究科
山口 夕 農学研究科
手塚 孝弘 農学研究科
阿多 信吾 情報学研究科
内海 ゆづ子 情報学研究科
蔡 凱 情報学研究科
小林 哲 経営学研究科
二宮 麻里 経営学研究科
竹中 重雄 生活科学研究科
早見 直美 生活科学研究科
片岡 正教 リハビリテーション学研究科

学外

氏名 所属
原田 行司 大阪府環境農林水産部
溝淵 直樹 大阪府環境農林水産部
奥野 裕貴 大阪府環境農林水産部
石井 実 大阪府立環境農林水産総合研究所
豊原 憲子 大阪府立環境農林水産総合研究所
小笠原 渉 国立大学法人長岡技術科学大学
中山 忠親 国立大学法人長岡技術科学大学
鈴木 剛 国立大学法人大阪教育大学
小西 充洋 ヤンマーホールディングス株式会社
中村 公洋 株式会社日建設計
橋本 太郎 幸南食糧株式会社
中澤 直紀 株式会社読売新聞
中村 亮仁 ケイ・マック株式会社

事業内容

この取り組みは長期的視野からの事業のため、達成には時間を要するが、達成された場合は農業の新しい様式が都会から地方までシームレスにつながれ、農業に携わる人材(担い手)が持続的に生まれ続ける社会構造が生み出される。このシステムは日本のみならず世界に向けた都市農業システムが実現できる。

都市の中での農業の実践や啓蒙を促進するために以下の調査・取り組みを立案し、実施に向けた意見交換やセミナーなどの啓蒙活動を行った。

  • 都市農業(大阪市・堺市など)と地方(長岡市など)での大規模農業をつなぐ情報提供の方法や体験手法のニーズ調査と方法論の議論:
    自治体、本学、長岡技術科学大学、ヤンマーやネポンなどの農業系企業と意見交換をうと共に「お米」をテーマにしたシンポジウムを開催した(ハイブリッドで100名程度の参加者を得た)。
  • 自治体間をつなぎ、エリアマネジメントを行う農業システム(生産、流通、消費の全体)の共通化の模索と方法論の議論:
    自治体、本学、長岡技術科学大学、サプライチェーン企業と意見交換を行った。
  • 障害者や初等教育への農業や食育の啓蒙のための栽培体験や農業実践の場のニーズ調査と方法論の議論と実践:
    自治体、自治体研究所、本学、長岡技術科学大学と意見交換うとともに学内連携を活かした小学生を対象にした「栄養」をテーマにしたワークショップを開催した(本学学生、参加者の小学生と保護者を合わせて20名程度の参加を得た)。
  • 都市で特殊なニーズのある作物(疾病による任意の栄養素の摂取不可など)の品種育成のニーズ調査と品種選抜や育種とブランド化に向けた調査:
    自治体、本学、長岡技術科学大学などと意見交換を行った。
  • 移動栽培(コンテナ栽培など)試験でのニーズ調査や実施の評価:
    自治体、本学、長岡技術科学大学、ケイ・マックなどの既に共同研究を行っている企業と具体的な方法について意見交換を行った。
  • オフィスビルや大型商業施設などでの作物栽培のニーズ調査と方法論の議論と実施:
    自治体、本学、長岡技術科学大学、日建設計などのスマートビル関連企業と意見交換を行った。
  • 2024年度は、上記課題についてのステークホルダーの関係構築、方法論の調査、議論、ワークショップ開催などを行う。

事業の概念図

概念図

事業成果

2024年度は、学内学関係者(URA、産学官民共創推進室を含む)と共に自治体や企業との意見交換を活発化させた。啓蒙活動を中心にシンポジウムとワークショップを開催した。2025年2月27日に開催した「お米」をテーマにしたシンポジウムは、グランフロントの都市活力研究所を会場にして開催し、ハイブリッドで100名程度の参加者を得た。このシンポジウムは「日本の食 コメの話 ―生産・消費を魅せる―」と題したシンポジウムであり、農業法人トゥリーアンドノーフ株式会社の徳本 修一氏からは「世界から見た日本のコメ作りの可能性」、長岡技術科学大学の小笠原 渉氏からは「日本にとっての「田んぼ」とは何か? ―再考―」、京都府立大学/ミライ食研究開発センター株式会社の増村 威宏氏からは「矮性イネを用いた屋内稲作の試み」、大阪府農政室の溝淵 直樹氏からは「10年後の農業の担い手」と4名の講師からのプレゼンテーションを行った。非常に活発な意見交換がなされ、担い手を都市から生み出していくことの重要性を発信することが出来た。

2025年3月27日には中百舌鳥キャンパスにおいてワークショップ「野菜を知ろう!考えよう!」を開催した。生活科学研究科の早見准教授と農学研究科の山口教授を中心に野菜の栄養や品種について小学生5名とその保護者、本学の学生10名とワークショップ形式で学んだ。実施後の参加アンケートの結果では、非常に勉強になると共に農業や栄養について継続的に学んでいくことのモチベーションを得たとの回答が多かった。

この他にも第4回都市農業シンポジウム(2025年1月29日)を主催し、日建設計の小松氏、松本氏、千葉大学の岩崎教授、大阪府環境農林水産部の原田氏、本学情報学研究科の阿多教授と共に「都市と緑」をテーマに250名を超える聴衆に向けた情報発信と啓蒙活動を行っている。さらには読売新聞EXPO2025フォーラム(2025年2月14日/グラングリーン大阪)などでも代表者である横井がヤンマーホールディングスの小西氏、幸南食糧の橋本氏と共に都市農業の情報発信を行い、メディアに大きく取り上げられるなどの成果を上げた。さらに、在京企業やスタートアップ企業などの沢山の企業からも共同研究のオファーがあり、成果を上げている。

今後の事業計画

長期的視野からの事業のため目標を一定程度達成するには時間を要するが、達成された場合は農業の新しい様式が都会から地方までシームレスにつながれ、農業に携わる人材(担い手)が持続的に生まれ続ける社会構造が生み出される。これら都市農業の人材確保システムは、大阪において農業が新鮮で安全安心な農産物の提供、良好な都市環境の創造など多様な公益的機能を発揮するための基盤となるソーシャルインパクトを生み出す。また、国際的な展開も期待できる。

新たな人材の発掘と雇用機会の創出

教育現場や福祉の現場に移動できるハウスが導入され、農業に触れる機会が少なかった人々に機会を提供することができるようになる。このことにより、作物生産のノウハウや面白さが普及され、新たな農業人材が発掘されることが期待されるとともに障害者雇用が新たに農業分野で生まれることが記載される。また新たな農業従事者に指導する立場として農業大学校や農芸高校などの人材が雇用されることも期待でき、都市圏にある農業関連の教育機関が活性化されることも同時に期待できる。

都会から地方への農業人材の波及

都市圏で農業生産を行う場所や機会が増加する事により、新たな農業人口がさらなる規模拡大や新規事業として挑戦する企業などが増加することが期待できる。これらのことは都市で農業人口を増やし、それらの人や企業が地方へと移動しながら農業の規模を拡大していくことが期待される。都市と地方の人や物が行き来しながら規模を拡大していくことは都市への一極集中などの社会問題を解決する一助となることが期待される。

新たな農業の提案

小学生を中心にした初等教育現場に農業を持ち込み、その面白さや業種としての新しい展開を啓蒙していくことで新たな農業人材を生み出しながら新しい農業の形を社会実装していくこと、強い農業を生み出していく人材の確保が期待できる。日本国内のみならず、国際的な観点からも農業を捉え、日本が持つ技術力と資源を精密な農業という強みにつなげていくことが期待できる。

 

上記のように本学が中心となって展開する都市農業は、大阪をモデルとして農業を都市から地方、他国にまで広げながら人材を生み出し続けるようなシステムとなる。このシステムが大阪を皮切りに都市部を中心に形を変えながら国内に波及し、狭小な国土でも食糧生産が十分に行えるような大阪発の国際システムとして広がることが期待される。