採択プロジェクト
2024年10月15日
- 設立支援
ブルー・オーシャン実現を目指した産官学民連携の推進
プロジェクト名
ブルー・オーシャン実現を目指した産官学民連携の推進
代表者
千葉 知世(現代システム科学研究科)
共創メンバー
学内
氏名 | 所属 |
---|---|
大塚 耕司 | 現代システム科学研究科 |
黒田 桂菜 | 現代システム科学研究科 |
学外
- 大阪府
- 大阪市
- 宇山 浩(国立大学法人大阪大学)
- 中谷 祐介(国立大学法人大阪大学)
- 国連環境計画 国際環境技術センター(UNEP-IETC)
事業内容
本事業は2024年11月からゼロベースで開始され、まずは大阪府の関連部局との連携体制を構築し、課題認識するところからスタートした。環境農林水産部脱炭素・エネルギー政策課に窓口となっていただき、大阪府庁内の関連部局や大阪市との協議を進めた。これにより、海洋プラスチック問題をはじめとする大阪湾の課題、および行政の方向性・ニーズと直近予定の事業等を把握し、具体的な連携事業の内容の特定と協力体制の構築を行った。その結果、大阪ブルー・オーシャン・ビジョン実行計画の中間評価が実施される2025年には、当該計画の実効性向上に向けて参加研究者からアドバイス・知見提供することとなった。また、大阪府の取り組んでいる各種の意識啓発・環境教育政策に対してアカデミアとして貢献し、より効果的に市民の行動変容を促す施策の可能性についても意見交換を行った。以上の活動を通じて、2024年度は計画作成に注力し、2025年度以降の事業実施の枠組みを明確にした。加えて、各参加メンバーにおいては以下のような具体的事業が行われた。
- 〈大塚〉現代システム科学域1年次配当科目「地域実践演習」の一環として、大阪湾の水環境に関わる環境学習イベントで企画運営に携わった。1回目は「阪南セブン海の森活動」(セブン-イレブン記念財団主催。本学学生8名参加・一般100名以上参加)で、地元漁業者と協働のもと海岸清掃とアマモの種付けが行われた。2回目は、2024年12月8日に西鳥取漁港内漁師鮮度(カキ小屋)で開催されたワカメ種付けイベント(学生18名がスタッフとして参加・一般40名参加)。
- 〈黒田〉環境社会システム学演習1の授業を兼ねて、大学生による大阪産(もん)魚介類の調理体験プログラムを実施。大阪産(もん)魚介類を自ら調理し味わうことを通して,多様な魚の食べ方を学び,地産の魚を身近に感じる機会を提供した。
- 〈宇山〉池田ロータリークラブの主催する「いながわ100人ゴミひろいDAY」に参画。再生プラスチック活用ワークショップ、最新技術を用いたリサイクル体験を通じて多世代で環境保護を考える
事業の概念図
事業成果
2024年度は、事業のコア部分としては連携体制構築・課題抽出・計画策定といった基盤形成を主な目的としたため、会議・打合せがほとんどであった。まず、連携先として大阪府の担当部局と継続的な対話を行い、環境施策の現状や課題を共有することで、政策形成に向けた大学としての貢献の方向性と具体的な事業内容を整理し、おおまかなスケジュールを定めた。また、COI-NEXT「大阪湾プラごみゼロ拠点」が本格型不採択となったことで、海洋プラスチックの回収を促す経済スキームの検討がとん挫していたところ、本スキームの社会実装化に向けた議論を再開できることとなり、今後の実証実験の実施に向けた合意を得た。これまで海洋環境保全の課題における本学の貢献は、個別教員の取り組みに留まってしまっていたが、2024年度は本事業が行政と研究機関の橋渡しを行い、持続可能な施策のための基盤を整える重要な準備期間となった。加えて、各参加メンバーにおいて行われた個々の事業では以下のような成果が得られた。
- 〈大塚〉1回目のイベントでは、海岸の漂着ゴミの実態(種類や量)について学ぶとともに、プラスチックや陶器のかけら、木の枝など124kgのゴミを回収した。また、海のゆりかごと呼ばれるアマモの海洋環境に対する役割を理解するとともに、箱作自然海岸におけるアマモ場再生に貢献した。2回目では、学生らが海藻や海草の生態やそれらの海洋環境に対する役割について理解するとともに、実際に漁場で行われているワカメの養殖方法について学んだ。また、これらの環境学習イベントを実際に体験し、次年度以降の実践に向けた基盤的な力を得た。
- 〈黒田〉実施後の学生の感想から,大阪産魚介類を手軽においしく調理できたことで,大阪産魚介類に対するイメージが向上したことがわかった。漁港見学を事前に行ったことが,より大阪湾を身近に感じることにつながったといえる。
- 〈中谷〉これまでの大阪湾への流入ごみ調査の実績を受けて、大阪府‐古野電気‐大阪大学の事業連携協定を締結し、大阪湾に流入する浮遊ごみの定量化に向けた研究推進を約束した。
今後の事業計画
本事業は2024年度~2026年度の3年間を見据えている。2024年度事業では、参加メンバーの募集・確定を行ったうえで、特に大阪府の参加部局と本学の間で複数回にわたり打ち合わせを行い、事業計画を策定した。2025年度には大阪ブルー・オーシャン・ビジョン実行計画の中間評価が行われるので、その過程において、大阪府環境農林水産部との意見交換を実施し、海洋プラスチック問題に関して研究者らが保有する専門的知見を提供する。また、大阪府の主要河川において市民参加型の散乱ごみ・漂着ごみ調査イベントを開催し、一般市民に対するアウトリーチを行う。さらに、豊かな海づくり大会の1年前プレイベントが秋に開催されるため、そこに大学としてブースを出展し、一般市民へ体験型の学びの機会を提供するとともに、関連する企業・行政機関との連携を深める契機とする。また、これらのイベントに先立って、海洋プラスチック回収を付加価値化するスキームを検討し、実証実験を行う。2026年度には「全国豊かな海づくり大会大阪大会」の本番が開催されるため、大阪府との連携を密接化しながらイベントに向けた一連の事業に参画する。これにより以下のようなソーシャルインパクトが得られると期待される。
1.政策形成への貢献
- 研究者が大阪府・大阪市に知見を提供し、政策決定の科学的根拠を強化(シンクタンク機能)
- 研究成果が政策策定に活用されることで、実効性のあるプラスチック削減政策が進展
2.学生・市民への環境意識の向上
- 学生がイベント運営に関与し、実践的な環境教育を受ける機会を提供
- 市民参加型の調査イベントを通じて、一般市民の意識向上
3.企業・行政・市民の連携強化
- 行政・企業・市民の協力関係を構築し、持続可能な社会実装に向けた土台を形成
4.新たなプラスチック削減スキームの開発
- 収集活動にインセンティブを付与し、持続的な回収活動を促進
- 企業と連携し、回収プラスチックの資源化や製品化の可能性を探る