採択プロジェクト
2025年3月31日
- 設立支援
学校保健における健康課題の解決に向けた協働連携のためのプラットホームの構築
プロジェクト名
学校保健における健康課題の解決に向けた協働連携のためのプラットホームの構築
代表者
中山 美由紀(看護学研究科)
共創メンバー
学内
| 氏名 | 所属 |
|---|---|
| 大野 志保 | 看護学研究科 |
| 松田 光信 | 看護学研究科 |
| 都筑 千景 | 看護学研究科 |
| 奥野 裕子 | 看護学研究科 |
学外
| 氏名 | 所属 |
|---|---|
| 仲谷 元伸 | 大阪府教育庁教育振興室 |
| 長谷川 史子 | 大阪府教育庁教育振興室保健体育課保健・給食グループ |
事業内容
学校保健の役割は、子どもたちが健康的な生活を送るために必要な資質能力の育成および家庭や地域と連携した健康づくり活動を推進させることである。現代の少子高齢化、情報化、価値観の多様化などによる社会環境や生活環境の変化は、子どもの心身の健康にも大きな影響を与えている。また、学校において、生徒指導や発達特性を含めた支援を要する児童生徒への対応、健康や生活習慣の改善等多くの健康課題がある。これらの課題に対して取り組む養護教諭の責務は大きい。養護教諭の配置は、児童・生徒数により決定するが1人配置であることも多く、学校保健の役割を果たすことが難しい状況にある。しかし、これらの課題は学校のみで解決するものではなく、学校、地域、家庭が取り組むこが必要であるが、協働連携が充分に図れていない状況にある。
小中学校、支援学校が抱える学校保健における健康課題に対応するために都市シンクタンク機能としての以下の4事業を実施し、保健医療の専門家である大学(看護学研究科)が中心となり大阪府教育庁と連携し、課題解決に向けた協働連携プラットホームを構築する。
そのために以下の事業を実施する。計画として、(1)学校保健における課題と保健医療職に対する支援ニーズの調査、(2)医療的ケア児に対する支援学校教員等のケア技術修得のための教育プログラムの開発、(3)健康課題解決に向けての必要な支援と専門家とのマッチングによるチーム形成、(4)健康課題解決に向けての事業を開発するためのチームによる共創的研究(実装化)であり、(1)~(4)により学校と地域をつなぐ協働連携プラットホームを形成する。
2024年度実施内容は、(1)学校保健における課題とニーズの調査の実施と(2)医療的ケア児に対する支援学校教員等のケア技術修得のための教育プログラムの開発のための研修について2025年度開催の研修会の打ち合わせを行った。
(1)学校保健における課題とニーズの調査の実施のため、学外共創メンバーである大阪府教育庁と調整をし、研究方法の確認を行った。本研究の対象は、学校において健康課題を把握し、その課題に直接取り組んでいる養護教諭と学校全体の健康課題を把握し、課題解決に向け組織として取り組んでいる校長とし、調査内容は、①小学校または中学校の子どもを取り巻く環境の中でどのような健康課題があるか、②その健康課題に対してどのような取り組みを行っているか、③健康課題に対しての取り組みの中で困っていることはどのようなことか、④健康課題の解決に向けて、保健医療専門職にどのような支援を求めたいか、これらからなる半構成的面接インタビューガイドを用いて調査を実施した。なお本研究は大阪公立大学大学院看護学研究科研究倫理審査委員会にて承認を受け実施した。
事業の概念図

事業成果
大阪府下の小学校2校および中学校2校へ伺い、校長4名・養護教諭4名にそれぞれ30分程度のインタビューを実施した。
はじめに、小中学校における健康課題として、【現代の子どもの特徴を現す課題】では、体力低下に伴うけがのしやすさや自主性の乏しさ、感情のコントロールの難しさなどが挙げられ、【生活習慣に関連した健康課題】として、タブレット教育やスマートフォンの普及による視力低下やゲームへの固執、睡眠不足等が挙げられた。【心理面に関連する健康課題】においては、発達面に課題のある子どもや、何らかの心の課題によって不定愁訴を示す子ども、不登校といった健康課題が挙げられ、これらの健康課題は複雑に影響しあっていることがうかがえる。その他にも、アレルギーなどの【身体面に関連する健康課題】、虐待やひとり親といった【保護者が抱える課題】も明らかとなった。
また、これらの健康課題に対して、校長および養護教諭は、子ども・保護者からの多様な課題・要望に対応することの難しさや、保護者との連携の難しさを示す【子ども・保護者が抱える多様な課題を支援することが難しい】や、専門知識を持たないことで【教員のみで複雑な健康課題に対応することが難しい】、教員の【人員や時間、制度上の課題によって子どもへの対応が難しい】といった困難さを挙げられた。一方で、学校として【子ども・保護者双方に向けて取り組みたいこと】として、子どもだけでなく保護者を含めた支援や、子どもの健やかな心の育みに向けた取り組みも示された。その上で、保健医療専門職に対して、【多職種と連携して子どもの健康課題に取り組みたい】、【子どもの健康課題への対応に向けた研修をしてほしい】といった支援ニーズを有していることが明らかとなった。同時に、国や都道府県・市町村に対しても、子どもの支援に向けた人員確保に向けた【新たなシステムの導入・構築への期待】も有している。
今後の展望として、今回協力いただいたのは4校であり、地域の特性によって子どもが抱える健康課題やその支援ニーズに違いがあると思われるため、今後協力機関を広げることで、より具体性のある子どもの健康課題と支援ニーズの把握に繋がると考えられる。
また、医療的ケア児に対する支援学校教員等のケア技術修得のための教育プログラムの開発として、「支援学校教員等によるたん吸引等の実施のための研修」について担当者と打ち合わせを行った。第1回目の研修を2025年5月24日(土)に実施する予定である。
今後の事業計画
現在の児童・生徒には、肥満・痩身、生活習慣の乱れ、メンタルヘルスの問題、アレルギー疾患の増加、性に関する問題など、多様な課題が生じている。また、全児童生徒数が減少傾向にある中で、特別支援教育の対象となる児童生徒は増加傾向にあり、加えて、「障害者の権利に関する条約」が提唱する「インクルーシブ教育システム」の構築することが求められている。これらの課題に対して取り組む養護教諭の責務は大きく、養護教諭を養成する看護学部のこれらに貢献していくことが求められる。さらに、より複雑となっている健康課題に対して、保健医療の専門職が「チームとしての学校」に貢献することが重要である。
今回の調査において、健康課題と保健医療の専門家への支援ニーズが明らかになった。いずれの健康課題も学校のみで解決できるものではなく、保健医療の専門家等と連携が必要である。
今後の計画として、以下の3点を実施する予定である。
-
- 健康課題として明らかになった【生活習慣に関連した健康課題】【心理面に関連する健康課題】【身体面に関連する健康課題】に対して、地域の小中学校の教諭対象に集合研修を実施し、参加者から意見を聞きながら洗練させていく研修プログラムを実装化する。それぞれの健康課題に対して、保健医療の専門家とのマッチングによるチームを形成しプログラムを実装化する。
- 医療的ケア児に対するケア研修を実施し、支援学校教員と地域の小中学校教員に対する教育プログラムを開発する。
- 健康課題解決に向けてのシステムの検討として、例えば、スクールライフノートなど児童・生徒が活用し、自身の健康に興味をもつことができ、教員も子どもの状態が把握や子どもの健康課題の対処等のサポート(応急処置等)できるシステムを開発する。
このように学校における健康課題に向け調査を実施し、解決に向けた方略を検討するという、エビデンスに基づいて実装化を行い事業の開発を行うこと、保健医療の専門家である大学(看護学研究科)が中心となり大阪府教育庁と連携し、課題解決に向けた協働連携プラットホームを構築することは初の試みである。また、WHOが推進しているヘルス・プロモーティング・スクール(健康的な学校づくり)を本学が研究拠点となりえると考える。