採択プロジェクト

2025年3月31日

  • 設立支援

産官学連携による感染症に強い都市大阪

プロジェクト名

産官学連携による感染症に強い都市大阪

代表者

掛屋 弘(大阪国際感染症研究センター/医学研究科)

共創メンバー

学内

氏名 所属
金子 幸弘 大阪国際感染症研究センター/医学研究科
植松 智 大阪国際感染症研究センター/医学研究科
福島 若葉 大阪国際感染症研究センター/医学研究科
山﨑 伸二 大阪国際感染症研究センター/獣医学研究科
堀江 真行 大阪国際感染症研究センター/獣医学研究科
安木 真世 大阪国際感染症研究センター/獣医学研究科
日根野谷 淳 大阪国際感染症研究センター/獣医学研究科
畑中 律敏 大阪国際感染症研究センター/獣医学研究科
アワスティ・シャルダ 大阪国際感染症研究センター/獣医学研究科
椎木 弘 大阪国際感染症研究センター/工学研究科

学外

氏名 所属
佐藤 剛章 塩野義製薬株式会社
山本 博之 大阪ガス株式会社
朝野 和典 地方独立行政法人大阪健康安全基盤研究所

事業内容

本プロジェクトでは、産学官が連携し、大阪を感染症に強い都市とするための様々な取り組みを実施した。

1.医療人材育成プログラムの実施

大学院生(医学研究科、経済学研究科、看護学研究科)を対象に、タイの病院での感染症診療を見学するプログラムを立案・実施した。本プログラムにより、日本国内では経験できない感染症診療の現場を学ぶ機会を提供した。 また、大阪府からの委託を受け、感染管理認定看護師(CNIC)の人材育成を目的とした新規カリキュラムを策定し、次年度からの実施に向けた準備を進めた。

2.塩野義製薬との共同研究の推進

  1. 呼吸器感染症診断キットの開発に向け、検体収集体制を構築し、収集した検体を用いた評価を進めた。
  2. 薬剤耐性菌の遺伝子解析に関する共同研究を実施。欧米の臨床検体から分離された多剤耐性菌と、アジア・日本の家畜、食肉、環境由来の多剤耐性菌の全ゲノム解析を行い、比較検討を行った。主にコリスチンおよびカルバペネム耐性菌を対象とし、耐性機序の解明を進めた。 これらの取り組みを深化させるため、2025年3月3日に塩野義製薬と包括連携協定を締結し、さらなる研究の推進を予定している。

3.関西国際空港の下水サーベイランスの実施

新たに環境由来のカルバペネム耐性菌57株を分離し、その菌名の同定および特性解析を進めている。

本プロジェクトを通じて、医療人材の育成、感染症診断技術の向上、薬剤耐性菌の解析といった多方面にわたる施策を展開し、大阪の感染症対策の強化に寄与した。

事業の概念図

概念図

事業成果

1.タイ王国における感染対策支援

レムチャバン病院にて、本学看護学研究科と協力し、感染対策教育ビデオを作成し、医療スタッフ向けに手指衛生の講習・演習を実施した。また、ブラパー大学との訪問時に大学間の包括連携協定に関する協議を行い、現在事務手続き中であり、新たな感染症対策研究の開始を予定している。

2.呼吸器感染症診断キットの評価研究

大阪公立大学医学部附属病院および関連医療機関にて、2025年2月より呼吸器感染症の臨床検体収集(200検体目標)を開始。収集した検体を用いて開発された診断キットの評価研究が進められる予定である。

3.薬剤耐性菌のゲノム解析

2021年に国産鶏肉およびブラジル産輸入鶏肉から分離されたコリスチン耐性菌のゲノム解析を実施。その結果、国産鶏肉由来の菌は2016年に中国で報告されたコリスチン耐性プラスミドと極めて高い類似性を示した一方、ブラジル由来の菌は部分的な類似性はあるものの、全体として異なる特徴を持つことが明らかとなった。

本プロジェクトを通じて、医療人材の育成、感染症診断技術の向上、薬剤耐性菌の解析といった多方面にわたる施策を展開し、大阪の感染症対策の強化に寄与した。

今後の事業計画

  1. 感染症対策の国際連携強化
      • タイ・ブラパー大学との包括連携協定を正式に締結し、共同研究を開始する。
      • 東南アジア諸国との連携を拡大し、感染症対策に関する教育・研究ネットワークを構築する。
  2. 感染症診断技術の実用化と普及
      • 呼吸器感染症診断キットの評価を完了し、実用化に向けた改良・規制承認手続きを推進する。
      • 大阪公立大学医学部附属病院を中心に、大阪府下の医療機関との連携を強化し、臨床応用の検討、さらには臨床研究ネットワークへ発展させる。
  3. 薬剤耐性菌サーベイランスの拡充
      • 関西国際空港の下水サーベイランスを継続し、新たな耐性菌の分布状況を解析する
      • 薬剤耐性菌の発生・拡散リスク評価モデルを構築し、行政との連携を強化する。

事業化によるソーシャルインパクト

  1. 感染症に強い都市モデルの確立
      • 大阪を「感染症に強い都市」として世界的なモデルケースとし、他都市への展開を促進する。
      • 産学官連携による迅速な感染症対応体制を確立し、パンデミック時の危機管理能力を向上する。
  2. 医療人材の国際的な育成と流動化
      • 日本と東南アジア諸国の医療人材交流を活発化し、グローバルな感染症対策リーダーを育成する。
      • 感染管理認定看護師(CNIC)の養成プログラムを充実させ、大阪の感染症診療の向上に寄与する。
  3. 新技術の社会実装と産業創出
      • 呼吸器感染症診断キットの実用化により、迅速診断技術の普及と医療コストの削減を実現する。
      • 薬剤耐性菌サーベイランスデータを活用し、製薬企業・バイオベンチャーと連携した新規抗菌薬の開発を促進する。